風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

シネマ歌舞伎 『高野聖』

2015-09-29 01:23:23 | 歌舞伎



天守物語や海神別荘と同じく、まずは本編前に玉さまのコメンタリー映像。
玉さまが鏡花を語る姿がとっても好き。3時間くらい聞いていたい

(鏡花の作品は)暗闇の中に光があって、それが次第に七色に変わり、時々その中に透明じゃないものが混じる。

今の時代に鏡花作品を上演する意味は?
天守→人間の権力
海神→人間界と異界の対比
高野→人間の煩悩
などを描いている。人間というものについて考えるきっかけになると思う。

高野聖の主人公は女のように見えるけれど、この女は真空。親仁の口を通して語られはしても、女がどういうものであるかは結局読む者一人一人の解釈に委ねられている。
高野聖は鏡花の初期の短篇で、劇化するのがとても難しい。小説そのままに描けなくても、全く同じではなくても、小説を読み終わったときに残る印象と舞台の幕が下りたときにお客様の中に残る印象が同じにできたらいいと思う。

同じでございましたよ~~~玉さま

女(玉三郎
玉さまはこういう役をやるとほんとに無双、無敵
妖しくて艶っぽくて、でも過剰な色気はなくて、ドライなの(そこが異形の者っぽいの)!
“普通の人間の世界”から外れた異端者の悲しみ(でも過剰じゃないの)と、それゆえの孤高の美しさと、魔界の者のグロテスクさと(胡坐かいて鯉で飲む魔神の姿も想像できる~)、そしてふいに見せる少女のような可愛らしさと、聖母のような慈悲深さ。
宗朝から「白桃の花だと思います」と言われたときに一瞬見せる嬉しそうな表情、よかったなぁ。年齢不詳な感じも本当に玉さまに合ってる。
私的には鏡花物の玉さまの最強はやっぱり富姫さま@天守物語ですけど(本当にもう二度と観られないのかなぁ・・・)、この嬢さまもとっても好き。
夜中の「今夜はお客様があるよ」の言い方はもう少し生々しい方が好みだったけど、仕草も表情も間(ま)もオーラもこれ以上なく完璧でございました。

次郎(片岡當吉郎
んん~それっぽい演技はしていたけれど、白痴には見えなかったなあ。理性的に見えた。原作で感じるグロテスクさ?が感じられず、ちょっと残念であった。

修行僧宗朝(獅童
僧っぽいかどうかはわからないけど、普通の「人間」ぽさがとてもよかった。天守物語の図書之助よりこちらの方がより人間ぽさが必要な役だと思うので(図書之助は美しさが必要!)。誠実で優しそうで、でも若者の煩悩もちゃんと見えて、よかったわ。暑苦しくない演技も◎でした。

親仁(歌六
配役を知らないで観に行ったので、思いがけぬ歌六さんの登場に嬉しかったぁ。
上手いなぁ~歌六さん!下手な人がやると絶対にダレるであろう後半の長台詞も聞き惚れましたよ~~~。
門之助さん(@海神、天守)にしても、我當さん(@天守)にしても、玉さまの鏡花物はよい脇が多いのぅ

映像とのコンビネーションも効果的だったと思います。だからなのか、天守&海神ほどには生舞台で観たいとは感じませんでした(天守&海神は舞台セットを生で観たくなる)。鬱蒼とした森とか蛭とかシネマで観た方が雰囲気がありそうですし、舞台ではできない寄りのカメラ効果もよかったです。

大満足。
また次回やるとき(来年?再来年?)も観に行っちゃうかも。

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