そんなはかない夢であっても、人が生きていくための糧となっている。例えば、もっと大がかりで何年もかけて仕掛けられた結婚詐欺があったとしても、もはやそれは普通の結婚詐欺なのではないか。金目当ての結婚なんて社会にはいくらでもある。騙されたと気づいて離婚する。普通のことではないか。人の心は見ることが出来ない。本当に愛されているのかなんて、わからない。リトマス試験紙みたいに判定は出来ないのだ。だとしたら言葉や態度で感じ取るしかない。言葉も態度も、簡単に装うことが出来るのに、そんないい加減な証拠を信じて、みんな生きているのだ。
森博嗣「ダマシ×ダマシ」より。
この物語はその題名からわかるように、結婚詐欺がテーマではある。
しかし「騙す」という行為は褒められたものではないが、
「騙されてみたい」時も確かにあるんだよね。
森博嗣にしては珍しく男女間の心のもつれについてがテーマになっているのか。
それでいてしっかり真賀田四季の物語を紡いでいるところが凄いところでもある。
小川令子の前に現れたのが加部谷恵美であることがその証左。
このシリーズ、これで終わらない!?
