月の岩戸

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ムジカ・10

2017-04-02 04:15:48 | 詩集・瑠璃の籠

誰もいない帝国に
ひとりの帝王が住んでいる

機械仕掛けの小夜啼き鳥に
石炭で作った嘘の心臓をしこみ
歌え歌えと
ののしる

おれが美しいと歌え
おれが正しいと歌え
誰よりもおれが偉いと歌え
そうすれば
いいものにしてやろう

だが小夜啼き鳥は
一声あげようとする寸前に壊れる
嘘が喉に詰まって
仕掛けが全部だめになるからだ
帝王は知りはしない
小夜啼き鳥というものは
真実しか啼けないものだということを

誰もいない帝国で
機械仕掛けの小夜啼き鳥を
いくつも作りながら
帝王は未だに夢を見ている
要らぬ馬鹿が自分をもてはやし
偉い神にしてくれることを

世界中で一番高い
馬鹿みたいに痛い男にしてくれることを
阿呆がみんな
自分に従い
すべてをやってくれる
いやになるほどすごい
帝王にしてくれることを

誰もいない帝国に
帝王は永遠に
一人で住み続ける




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