ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

地域産科医療改善への取り組み

2008年02月12日 | 飯田下伊那地域の産科問題

地域の産科医療が危機的な状況に陥っていることは確かですが、これを一気に解決するような方法などどこにも見当たりません。地域のみんなで共通の問題意識を持ち、みんなでいろいろと工夫を重ね、力を合わせ、現場の状況を少しづつでも改善してゆく不断の努力が大切だと思います。例えば、女性医師が働きやすいフレキシブルな勤務体系を取り入れること、職場環境や待遇を大幅に改善して産科医の離職を減らし、1人でも多くの産婦人科の後期研修医を獲得するように努力すること、病院と診療所の連携を強化すること、助産師に従来よりももっと活躍してもらうことなど、少しずつでも、地域の産科医療が改善の方向に向かうよう不断の努力を積み重ねていくことこそが大切だと思います。

****** 信濃毎日新聞、2008年1月12日

態勢立て直しの動き 現実見据え試行錯誤を

(略)

 05年夏から1年足らずの間に、出産を扱う施設が6施設から3施設に半減した飯田下伊那地方。

 自治体や医療関係者でつくる懇談会の議論を経て、出産を主に飯田市立病院、妊婦健診を周辺の医療機関が担う「連携システム」を打ち出した。妊婦が持ち歩くカルテを作り、どの施設でも対応できるようにするなど先駆的な工夫も取り入れる。

 05年度に年間約500件だった市立病院の出産件数は、06年度は約1000件に倍増。山崎輝行・産婦人科部長(54)は「連携システムで外来の負担が減ったので、何とか乗り切れた」と話す。

 だが、そのシステムも順風ではない。

 地域では3施設が妊婦健診のみを受け持ってきたが、常勤医の退職などで、常時健診を受けられる所が今春以降、1施設になる見通し。5人いる市立病院の産科医も転科などで減少するため、4月からは里帰り出産の受け入れを休止する。

 「システムがあっても動かす人がいなければどうしようもない」と山崎医師。県内の「モデルケース」と期待される連携システムは、医師不足の「壁」に突き当たり、苦闘を続けている。

(中略)

【飯田下伊那地方の連携システム】 飯伊地方では05年以降出産を扱う施設の減少で約850件の受け入れ先がなくなった。このため緊急的に、出産は主に飯田市立病院、妊婦健診を他の医療機関が分担するシステムを構築。県内の産科医、小児科医でつくる県の検討会も07年3月、広域圏ごとの医師の重点配置を提言しており、飯伊のシステムを「周産期医療を崩壊させないためのモデル」と紹介している。

(信濃毎日新聞、2008年1月12日)