薬膳


D3X + AF-S NIKKOR 24mm f/1.4G ED(上)

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LEICA X1(以下)

今回の旅行で、思わぬ収穫は食事であった。
明日香村の隣、高取町にある薬膳料理のお店に行った。
ガイドブックに小さく出ているのを見て、突然電話してみたのだが、快く迎えてくれた。



飛鳥の駅から車で10分ほどの場所にある。
国道から狭い道を山の方に入り、曲がるのに難儀するほどの細い道を上っていくと、崖の上の道沿いにモダンで凝った作りのお店が見えてくる。



中に入ってびっくりするのは、窓の外に大きな池が広がっていることだ。
急な坂道を上がってきたはずなのに、それまでまったく見ることのなかった水面が、突然目の前に広がるので、何がどうしてこうなるのかわからず混乱する。
周りを家に囲まれた、秘密の園のような池である。



思わず、一体この池は何なのですか?と質問すると、お店の方も答えられずに困っておられたが、昔は高取城主がここで水遊びをしたという。
コイ漁が行わた時期もあり、今でも時折大きな魚が水面を跳ねる。
足場のようなものが設置されているが、水鳥が飛んで来るので、そのために置いてあるということであった。



高取は歴史のある町で、何と飛鳥より100年古いという。
山ひとつ隔てた向こうには高取城跡があり、昔は強風の時にお城の瓦が飛んでくることもあったそうだ。
歴史のある町ゆえの興味深い話に、不思議な池の存在も妙に納得できた。



料理は非常に見事なものであった。
僕は薬膳が好きなのだが、ここの料理は満足度がかなり高かった。
薬膳料理を食べると、しばらく体の調子が良くなる。



この辺りはシルクロードの終着点でもあったために、大陸より伝来されたであろう薬の産業が盛んで、高取町には現在でも製薬会社が多い。
以前は一般の家でも薬を練って作っていたというが、薬事法の改正で小規模の製造者は姿を消したという。
もしかするとそのノウハウも、薬膳料理に生かされているのかもしれない。
美味しい食事は、歴史なくして生まれるものではない。



薬膳料理は、すべての食材に渡り極度に配慮がなされている。
ここの料理も、ひとつひとつが凝りに凝っており、すべての説明を聞くには長い時間を要し、覚えきれないほどであった(笑)
器の入る木製の引き出しまで、特別に有名な方がこのお店用に作られたもので、今はここにある数個しか存在していないという。



料理の素材も十分に吟味されたものが集められる。
皮肉なことに、薬膳という食文化の元祖であるはずの中国が、水質汚染などで環境が悪化しており、素材としてのランクが落ちているのだそうだ。
そのため特別に作らせた日本の素材が中心となる。



驚いたのは東京の某デパートが、超上客を対象とした特別ツアーのひとつに、ここでの食事が組み込まれているという話であった。
あのツアーは、一般に知られていない特別なお店を見つけるので有名だ。
実際そういう層の方たちも、十分に満足できるお店だと感じた。
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