犬の自殺


D90 + Ai AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8

大きな画像

犬も自殺するという話を読んだ。

様子がおかしいと病院に連れてこられた犬を、獣医師が検査したところ、末期の癌であることがわかった。
犬をかわいがっている飼い主に、そのことを告げたところ、飼い主は強い衝撃を受け悲しんだ。
最期が苦しむようなら安楽死も考えてやりたい・・などと話し合い、その日は犬を連れて帰った。
ところが翌日、犬は突然家のドアから走り出て、道路を走ってきた車の前に飛び出し、轢死してしまった。

長年飼ってきたのに、今まで家から飛び出すなどということは一度も無く、どう考えても自殺にしか見えなかったという。
犬というものは、獣医師が病状を飼い主に話している間、下を向いたりしながらじっと様子を窺っているのだそうだ。
以来その獣医師は、病気が重い時は、診断の結果を犬の前で話さないようにしているという。
言葉を理解しなくとも、恐らく犬は愛する飼い主の精神の動きを敏感に読み取っているのだろう。

犬は特殊な能力を持っており、飼い主の行動を離れた場所から察知する・・という話は有名だ。
しかしそれにしても、犬が自殺などするものであろうか?
絶望のあまり、生きていく辛さより、死ぬことを選んだというのだろうか?
病気が脳に達し、一時的に精神錯乱状態に陥り、道路に飛び出して行っただけにも思える。

そもそも自殺という行動をとるには、生に対しての死という状態を、犬が認識していなければならない。
仲間が車に轢かれて動かなくなったのを見て、そのような状況が起こり得る事を知っていたとしても、死ぬということがどういうことなのか、犬は理解しているのだろうか?

どのような動物も死を恐れるし、それが暗く悲しいことであると、彼らは本能的に知っている。
そのように恐れている死を、生に執着する本能を打ち負かし、あえて選択することなどあるのだろうか?
少なくとも僕の飼ってきた犬たちは、死を前にした時、仕方ないのだという表情を僕に残し、運命を受け入れて死んでいった。

もし犬が悩んだ挙句に自殺したのだとしたら、それは精神面で極めて高度な発達を遂げた生物の証であろう。
集団で川に飛び込むネズミなどは例外として、人間以外に自殺などする動物はいない。
自殺という風習を持つか否かは、精神的に高度な生物とそれ以外とを区別するラインにも見える。
犬は、人間に可愛がられ、家族のように愛情を注がれて育てられるうちに、そのラインを超えて高度な生物の仲間入りを果たしたのだろうか。
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )