シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

紙の月

2017-01-25 | シネマ か行

ケーブルテレビで見ました。

田辺誠一となんとなくうまくいっていない銀行の契約社員の梅澤梨花宮沢りえ。得意先の家で出会ったその家の孫・平林光太池松荘亮と不倫関係となり、銀行の金を横領して貢ぐようになる。

梨花と夫の微妙な距離感はうまく表現されていたと思う。契約社員になったお祝いに夫婦でお揃いの時計を買ってきたのに、(安っぽいから?)会社にはしていけないという夫、その直後の海外出張でもっと高い時計をプレゼントしてくる夫。なんとなくズレていて、梨花の気持ちを分かろうとしない人なんだなということが分かる。ただ、ちょっとそれだけでは得意先で出会った大学生といきなりホテルに行ってしまう梨花の気持ちについていけない。光太が梨花に興味を示していたことは一目瞭然だったけど、それでいきなりホテル?え?ってなってしまった。

一応設定は平凡なパート主婦的な感じだと思うんだけど、その不倫の始まりエピソードからして「平凡な主婦」枠を急に大きく外れてしまう。それに夫には安っぽいと思われたようだけど、夫婦ペアで買った腕時計だって、2本で銀行の契約社員でそこまで急に使う?っていうような金額だったし、外回りのついでに寄った百貨店で4万円以上の化粧品セットを買ってしまう感覚も「平凡な主婦」って感じじゃない。しかもその時、現金が足りずにお客さんから預かったお金を一時的にそこで支払って、あとからATMで自分の貯金を下ろして返した感覚もズレている。いくらお金には名前は書いていないと言っても、いくら一瞬借りるだけと言っても「平凡な主婦」はそんなことはしないと思う。のちのち明かされるけど、彼女が中学生の時に発展途上国に寄付するために父親の財布から5万円盗んで教師に叱られ、それのどこが悪いのか分からなかったというエピソードも、もうすでに中学生の時から倫理観のおかしな子だったというエピソードになってしまっている。

上に書いたようなエピソードがあるために彼女が横領をし始めても、なんだか驚きがない。あ~やっぱりそういう感覚の人よね。って感じなのだ。

観客が主人公に同情できるような状況だったら、とは思うのだけど、それではまぁよくあるお涙頂戴犯罪ものになってしまうし、これが吉田大八監督の意図だったのかな、とも思ったり。原作を読んでいないのでその辺りはどうか分かりません。

何と言っても素晴らしいのは梨花の不正を見抜く銀行の窓口の社員隅より子を演じた小林聡美だろう。彼女は、若い社員相川恵子大島優子(彼女も良かった)や梨花につらく当たっているように描写されていたけど、彼女の言ってることってしごく当たり前のことだし、業務上間違ったことは何ひとつ言っていない。ただ相川や梨花がきちんと業務上の手順を守ろうとしなかったり、上司の井上近藤芳正(この人のわざとらしい髪型はなんとかならなかったか?1人だけコントのようだった)が不適切に相川や梨花を贔屓していただけだ。そんな彼女が梨花の不正を暴いていく過程が圧巻だ。梨花の不正を発見したときも彼女はやみくもに騒いだりせず、きちんと上司に相談し、梨花自身にも直接いま横領した分をきちんと返せば何とかなると諭したりして、厳しいけど悪い人では決してないところを見せている。

いよいよ梨花の横領が支店長まで明るみに出ようとしていたその時、会議室で隅より子と梨花が2人きりで対峙します。どこまでも枠から外れず堅実な道を行く隅とすべての枠を無視して偽りの自由でさえも満喫できてしまう梨花。この2人の相容れない世界がぶつかりあう瞬間。まるで2人のオーラがぶつかりあうのが見えるかのような素晴らしいシーンでした。

そして、突然イスを放り投げ窓を割り、窓から飛び降りようとする梨花。腕を掴む隅。素早く梨花が振り返り



「一緒に行きますか?」



うわーーーーーっ。すげぇ!!!鳥肌立ったーーーーー。この瞬間の梨花にこのセリフを言わせるってすごい。あなたも私の世界をのぞいてみる?その勇気がある?と挑戦的に投げかける梨花の視線。思わず腕を離してしまう隅。

いやいやいやいや、あんなところであんなこと言われたらそりゃ思わず離すわな。びっくりするもん。「離してよ」とか言われたら絶対離さないけど、あまりにも意表を突いた言葉に立ち尽くしてしまう。

あれはあれで名ゼリフだと思うし、名シーンだと思うんだけど、あの時点で隅が梨花の手元にいくら残っているかを知っていたとしたらもう少し面白い隅の心の内を推察することもできたような気がします。もし梨花が2人で逃げても一生困らない額を手元に持っていたら。そしてそれを隅が知っていたとしたら。それはそれで面白い展開だったかも。

その後梨花が昔寄付で助けた子どもと再会するシーンは結局何が言いたかったんだろう。手段は間違っていても、それでも確実にあの子は梨花のお陰で助かったってことかな?

色々と文句をつけたい部分もあるものの、見ている最中も面白かったし、見てからも一緒に見た人と色々話ができる作品だと思います。

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