シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

八日目の蝉

2011-04-19 | シネマ や行

試写会が当たったので行ってきました。

不倫相手・秋山丈博田中哲司の子供を身ごもった野々宮希和子永作博美は、丈博に子供は堕ろすように言われ、きちんと妻・恵津子森口瑶子と離婚してからもう一度子供を作ろうと言われるが、実は妻のほうも妊娠していた。堕胎した希和子は秋山夫婦の間に生まれた子を4か月のときに誘拐してしまう。それから各地を転々とする逃亡生活が始まり、子供(薫)が4歳のときに身を寄せていた小豆島のお祭りでの写真が新聞に載ってしまい逮捕される。その後4歳で実の両親のところに返された薫(恵理菜)はずっと希和子を本当の母親だと思って生活していたので、知らないおじさんとおばさんのところに突然連れてこられた状態になり、本当の親子でありながらうまく関係を築けないまま大学生井上真央になっていた。

大学生になり、家を出て自活していた恵理菜の前に事件のことを取材したいという安藤千草小池栄子が現れるが、実は千草は希和子が逃亡中に身を寄せていた宗教団体エンジェルホームで当時の恵理菜(薫)とともに育った子だった。その頃恵理菜は岸田劇団ひとりという男と不倫をして身ごもるという自分を誘拐した女と同じ道を歩んでしまう。

悲しい悲しい女がたくさん登場する物語。
不倫相手の子供を身ごもり、その相手と結婚できると信じていた野々宮希和子。
夫の不倫相手を罵倒し、夫の子供を産むことで自分は勝ったと信じていた妻。
4歳まで母親だと信じていた人は実は誘拐犯で父親の愛人。そのせいで本当の両親ともうまくいかない恵理菜。
女性ばかりのエンジェルホームで育ったせいで男性恐怖症になった千草。

なんか結局ね、一番悪いのはこの夫なわけよ。それは誰でも分かっていることだけど、現実に起こる不倫なんかでも夫との生活を守りたいがために怒りの矛先を愛人に向ける妻の多い事。そんな最低な人間との家庭を守りたい妻ももうその時点で同罪って気がする。この物語はこの妻が愛人を罵倒しに行ったりする時点で愛人に同情票が行くようにできてるよね。もちろん、その後に子供を誘拐されたことに関しては母親としておかしくなっちゃってもしょうがないけどね。大学生になった恵理菜に「恵理菜ちゃんに好かれたいの。そのためにはどうすればいいの?」なんて聞く母親になっちゃうわけだ。子供に好かれるためにどうすればいいか?なんて考えている母親とは、まともな関係が築けるわけなんかないよね。父親も父親で「親らしいことしなくていいよ。がらでもない」と娘に言われて「そうだな」なんて弱々しく笑ってんだもんな。「何言ってんだ!親じゃないか!」って言えないんだもん。それもこれも誘拐犯野々宮希和子のせいってことにして生きてるけどさ、そもそもは夫が一番悪いわぁな。

野々宮希和子が薫(恵理菜)に寄せていた愛情というものには、まったくの偽りはなかったということは分かる。赤ん坊のときから育てているんだからね。あんないたいけな少女がママ、ママ、と言って慕っていたらどうしてもこの二人を引き裂かないであげてと思っちゃう。いや、それはいけないことだって頭では否定するんだけどね。薫(恵理菜)が小学校に通うなんてことになったら戸籍もないし、もうごまかし効かなくなるし。それでもやっぱり希和子が捕まるシーンでは泣けちゃったなぁ。引き離される前に「この子まだご飯を食べていません」って最後まで薫(恵理菜)のことを気にしていたし、1日1日をこの子と過ごせますようにと祈りながら生活していた希和子が痛々しかった。

父親の不倫のせいで振り回されることになった恵理菜の人生はこれまた辛いね。4歳で初めて会った本当の母親は、ちょっと精神的に不安定だし、父親は何の役にも立たないし、あの年ならすべて自分が悪いと思いながら生きることになってしまってもしょうがない。自分を大切にしないで生きてきたからこその不倫だったのかな。それも妊娠しちゃうって。しかも産むっていうのもね。なんか、自分の代わりに子育てを通してまともな子供時代を追体験したいのかなという感じがした。それは前向きな運命の受け入れ方のように描かれてはいたけど、ワタクシはなんか違和感があったな。もう少し恵理菜が自分自身で両親と向き合うなり、両親の抱える問題を消化するなりしてほしかった。新しい命ですべてが解決するというのはちょっと安直な気がしたな。

主要な登場人物が良い意味でも悪い意味でもいわゆる「女」って感じがしました。希和子、妻、恵理菜以外でもエンジェルホームしかり、千草しかり。なんかその自己完結感にもやもやを感じる展開でもありました。

映画としては丁寧に描かれていて好感は持てるんですが、エンジェルホームでのくだりとか香川に逃げてからの様子とかちょっと描写が細かすぎるなと思うシーンがいくつかあった。そういうディティールを描くことで誘拐犯の疑似親子がはぐくんできた愛情を描きたいのは分かるし、それを大学生になった恵理菜が辿る旅として、彼女の中に眠っていた思い出を描くというのも分かるんだけど、ちょっと見ているほうとしては退屈になってしまうシーンが数か所あった。上映時間2時間27分も使うならもう少し両親との葛藤とか、希和子の内面とかを描いてくれたほうが良かった気がするんだけどそれは原作にない部分なのであればしょうがないけどね。

演技の面はみんなうまくて良かったと思います。永作博美は定評がありますしね。小池栄子も普段の印象とは違う役でうまかったと思います。市川実和子は東京出身なのにどうして関西弁の役が多いんだろう?別に関西弁はうまくなくて昔のこってりな関西弁というか、なんかきついんですが。まぁ、それよりなによりとにかく劇団ひとりがキモかったーーー!!!井上真央ちゃん、仕事とは言えカワイソウ。二人のシーンはもうキモすぎて井上真央ちゃんがカワイソ過ぎて、物語に集中できんかった。誰かもっと普通の人いなかったのーー??恵理菜も希和子と父親同様、つまらん男に引っかかってるっていう設定なんかもしれんけど、劇団ひとりはナイ!

原作読んでないんで分からないんですけど、どうして秋山夫妻は4か月の赤ちゃんをほったらかして出かけたの?なんか家の中もごはん食べた直後のままほったらかしやったし。そこにも何かエピソードが隠されていた気がするんですが、原作読んだ方がいたら教えてください。

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6 コメント

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映画は見てません。 (原作読んだけど、)
2011-04-19 13:28:27
毎日朝ご飯の後、旦那さんを車で駅まで送って行くのが日課だったんです。
ほんの十分くらいのことだし、連れて行くと眠ってる赤ちゃんを起こしちゃうし。
この奥さんは、かなりだらしなくて精神的に壊れ気味で、すんごいイヤな女みたいな設定でした。
原作読んだけど、さん (coky)
2011-04-19 14:24:58
そうだったんですか。教えてくださってありがとうございます!
毎日の日課だったんですね。いくら10分くらいと言っても、4か月の赤ちゃんを置いて出かけるのはどうかと思いますが。なんか、家の中が荒れていたので事情があるのかと思いました。
あれは、奥さんがだらしないっていう描写だったんですね。
原作でも、奥さんはイヤな女な設定なんですね。それだとやっぱり犯人に同情してしまうかな?
ひとり (くみ)
2011-04-19 19:05:55
やっぱり劇団ひとりと真央ちゃんのシーンは
きもかったですかー(>_<)
他のレビューでもそんなことあったから
そこのキャスティングだけ違ってたらなー
でも、この映画は原作で心掴んだ人を裏切らないって試写行った人に聞きました
公式で光浦さんの感想がドキっとします
何でも許せる子供の薫じゃなかったら愛せるのか?ってこと・・
確かに屈折した恵理奈になった彼女を心から愛する人はいたのだろうか・・
希和子だって、薫だから愛したのかもしれない
男もだけど、母になった女も
自己愛を母性愛と勘違いする人多いよ
くみさん (coky)
2011-04-20 11:09:23
コメントありがとうございます。
劇団ひとりのファンの方には申し訳ないですが、めちゃキモかったです。
真央ちゃん、ほんとがんばったよ…
初めてコメします。 (通りすがりの者。)
2011-04-23 17:42:32
blog、、、頷きながら読んじゃいましたf^_^;
昨日、試写会に行ってきました。
男の欲求がね、招く…最低。
あと、劇団ひとりさんのね…他にいなかったのかなぁ、、、

原作は読んでいません。
ドラマではまりまくり、試写会応募して当たって行ってきました。
女優さんの演技はみんな、素晴らしかったと思いました。
永作博美さんの一本筋が通った感じ。
真央ちゃんの、今までにないクールな印象。
小池栄子さんのどこか挙動不審な感じ。
森口さんの異常な感じ。


ドラマで毎回、涙していた私にとっては、泣き足りない気持ちでした…。
ただ、ドラマより、納得できました…
薫ちゃんの明るい未来を、はっきりと感じることができたから。
原作を読んでみたいと思います。
通りすがりの者。さま (coky)
2011-04-25 16:44:55
コメントありがとうございます。

頷きながら読んでくださったということでとても嬉しく思います。

井上真央ちゃんの演技をあまり見たことがなかったのですが、しっかりした演技をする女優さんなんだなぁとアイドル的なイメージを持っていたので印象が変わりました。
小池栄子の挙動不審ぶりには最初びっくりしました。すごくうまかったですね。

ドラマのほうも見てみたいです。
DVD化されているようなのでどこかでレンタルされているといいのですが。

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