シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

モリー先生との火曜日

2006-01-19 | シネマ ま行

これはテレビムービーですね。ケーブルテレビでやってました。

日々締め切りに追われるスポーツライターのミッチハンクアザリア。忙しすぎて恋人にもゆっくり会えず、あきれられっぱなし。彼女は結婚を望んでいるが忙しさを言い訳に結婚に踏み込もうとしない彼。そんな彼がふとあるとき大学時代の恩師モリー先生ジャックレモンがテレビに出ているのを見る。大学時代、ミッチはモリー先生のお気に入りで毎週火曜日に生徒相談を行っている先生のもとへ通っていた。卒業後もずっと連絡を取り合うよと約束したまま、社会に出た彼はキャリアを追うあまり先生にはまったく連絡を取ることがなかった。その先生がテレビに出演している。それも筋萎縮性側索硬化症(ALS、通称ルーゲーリック病)にかかって死に直面しているというのだ。

そんなモリー先生のことが気にかかりながらも、締め切りは待ってはくれない。恋人はそろそろ本気で愛想を尽かし始めている。仕事に追われながらマスコミの仕事に空しさを感じた時、ミッチは飛行機に飛び乗った。モリー先生に会いに。

モリー先生は死を前にしながら、「生きる」とはどういうことなのかを人々に伝えて死にたいと思っていた。ミッチとの再会を喜びながら、仕事に追われ「生きる」ということに真正面から向き合うことを怖がっているミッチに毎週火曜日に来い、と言う。昔みたいに。

モリー先生が話す一言一言にすごく重みがあり、死を前にして、「死ぬ」とはどういうことかではなく、「生きる」とはどういうことかを説く先生の生命力に強い感銘を受けた。

先生は「愛」を説き、「許し」を説き、「日々を悔いなく過ごすこと」を説く。

中でも印象に残ったのは、仏教の教えの一つらしいが、「肩に一羽の鳥を飼え」というもの。なんじゃそりゃ?と思うんだけど、その鳥に毎朝、「今日は私の死ぬ日か?」と聞けというのだ。「私はその準備はできているか?」と。つまりは、自分がしたいこと、するべきことをして、悔いなく死ねるか?ということだ。もちろん、人間はいつ死ぬか分からないから、目指す道半ばで死んでいく者もたくさんいるだろう。それでも、今日という一日を悔いのないように過ごしたいものだ。肩の鳥に毎朝尋ねていれば、友人や家族や恋人とつまらない意地を張ってケンカをしたときも許しの気持ちや自分を許して欲しいという気持ちが芽生えるはずだ。ささいなことかもしれないけど、そのような気持ちで人と接すれば、不要ないさかいはなくなるだろう。それが毎日のこととなると簡単には実行できないが、それを日々確認するために肩に鳥を飼うのだろう。

そして、もう一つ印象に残ったのは、最後まで先生の死を受け入れられないミッチの姿だ。先生は墓に会いに来ればいいとか死が全ての終わりではないと言うけれど、やはり愛する人が死んでしまうのは悲しいし、受け入れたくないことだろう。ミッチは先生に「どうしても受け入れられない」と言う。それをミッチの未熟さと言う人もいるかもしれないけど、ワタクシは受け入れられないということを告白し、それを自分の中で素直に認めたミッチの姿というものが大切なんじゃないかと思えた。これまで、何事も人生のシリアスなことには恐れて向かい合おうとしなかった彼が自分の恩師の死に対する恐怖と真剣に向かい合ったのだ。恐怖を克服することは、まずそれを認めることから始まるのではないだろうか。

ミッチは先生の言葉を忘れないようにと録音していたが、ワタクシも映画を見てから時間が経つと先生が言った素晴らしい言葉のいくつかを忘れてしまった。この作品には原作があるらしいので、それを買って読みたいと思う。

オマケジャックレモンはワタクシの大好きな俳優さんで、若いときでは「お熱いのがお好き」や「アパートの鍵貸します」、おじさんになってからは「摩天楼を夢見て」「JFK」なんかが好きな作品です。コメディからシリアスまで幅広くこなした方で、見る者にもの凄く親近感を持たせるタイプのいかにも人が良さそうな方だった。シリアスなものもあるけど、やはりワタクシはちょっと軽いタッチの作品が彼にはとても良く似合っていたと思う。2001年に亡くなったときは高齢ではあったけど、かなりショックだった。



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4 コメント

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Unknown (ホーギー)
2008-07-05 20:21:41
はじめまして、ホーギーと言います。
この作品は劇場未公開だったためか、あまりこの映画をUPしているブログを見なかったので、つい嬉しくなってコメント&TBをさせて頂きました。
本作品は友達のカナダ人から勧められて始めて観ましたが、劇場公開されていない映画でもこんな感動作があることに驚きました。
自らの命を賭けて、教え子のミッチに「愛」「恐れ」「生きること」などを教える姿に感動しました。
もっと多くの人に観てほしい作品だと思います。
ホーギーさんへ (coky)
2008-07-07 14:33:44
コメントありがとうございます。
ワタクシはジャックレモンが好きで、この作品を見ました。モリー先生が彼のキャラクターにとっても合っていたと思います。
確かに、もっと多くの方に見てもらいたい作品ですよね。
ありがとうございます。 (まろぱん)
2009-06-12 23:13:20
友達が、。

最近ちょっとやばめの私に勧めてくれた本だったのでぐぐってみたら、、たどりつきました^^

とっても、読んでみたいと感じる文に。
感謝しています。
こちらこそ (まろぱんさんへ)
2009-06-17 09:05:08
ありがとうございます。
そう言っていただけて嬉しいです。

押し付けがましくなく、人生のヒントをくれるとっても良い本だと思いますので、ぜひ読んでみてください。

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