シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ランスアームストロング~ツールドフランス7冠の真実

2017-10-04 | シネマ ら行

このドキュメンタリー、2009年のランスアームストロングの自転車競技への復活、ツールドフランスでの活躍を映画にすべくアレックスギブニー監督が撮り始めたところ、ツールドフランスでは負け、彼のドーピング疑惑が取り沙汰され、彼自身が初めてドーピングについて洗いざらい告白するという事態となってしまい、ヒーローの復活劇を記録するはずだった作品は「The Armstrong Lie」というこのドキュメンタリーに化けた。

ワタクシは2016年に「疑惑のチャンピオン」という映画が公開され、2013年にすでに作られていたこのドキュメンタリーよりも先に見てしまっていたので、アームストロングが行ったドーピングに関してはだいたい知っていました。

映画で知っていたとは言え、アームストロングの発言などを実際の映像で見るのはかなりインパクトがありました。自転車競技界は長年ドーピングの疑惑を常にかけられてきていました。その中でアームストロングは何度でも平気な顔で堂々とドーピング疑惑を否定してみせました。「私はドーピング検査に一度も引っかかったはない。疑惑の目を向けるなら証拠を持ってこい」彼は何度でも平然とそう言ってのけました。微量の違反薬物が出たときも、チームメイトが検査に引っかかった時も。

彼は自分がドーピングをしただけではなく、それをチームメイトにもやらせ、それを告発した者たちには徹底的に権力を使って排除しました。親友だった夫婦も裁判で彼が医者にドーピングの経験を話しているのを聞いたと証言したことから、自転車業界で働けないようにまで追いやったのです。

彼を取り巻くスポンサーも自転車業界もみな彼の味方でした。お金が儲かるから。そして、彼はガンを克服した英雄としてガンサバイバーの希望の星でもあり、ガンと闘うチャリティのシンボル的存在でした。そのこともあってみな声をあげることはできなかった。

後半で彼は自らのドーピングを認め、話をしていますが、なんかふてぶてしいというかあんまり悪いことしたとは思ってない感じはしたかなぁ。みんなやってたし、それで能力を高めただけって感じなのかも。でも話し方とか堂々としていて、聞いていると取り込まれそうな雰囲気があるんですよね。変な魅力があるというか悪魔的な魅力なのかもしれません。「数十年後にはツールドフランスを7連覇したランスアームストロングと再び言われることになっているかもしれない」と本人も言っていたように、ドーピングに対する罪の意識はあまりないのかも。

やっぱりでもなぁドーピングそのものよりも、親友だった人への仕打ちが酷すぎて、自分を倒そうとする者にはどんな汚い手を使ってでもやり返すっていう人なんだろうなと感じました。

ドーピングの内容についてはこの作品では言葉で語られるだけなので、実際にどんなふうだったかを見たい方は「疑惑のチャンピオン」を見るといいと思います。ドキュメンタリーの中でチームメイトが「気持ち悪い」と言ったようなことをガンガンやってます。