文明ロード

開店までの生々しい道のり

Vol.24「史上最大の借金」

2007年06月23日 | Weblog
大学生のとき、ギターのマルチエフェクターというマシンを、
初めてローンを組んで買った。金額は3万9千8百円。39万じゃないよ。
これを4千円の10回払いだかで買った。
引き落としならよかったのかもしれないが、
毎月の振込みという作業をどうにも忘れがちになり、
頻繁に督促の電話がかかってきて、とても嫌な気持ちになり(俺が悪いんだけど)、
もう俺はローンでモノを買わない!と決めてから、今までというもの、
本当に無借金生活をしてきた。
まぁ車に乗らないし、住宅ローンが認められる経済力がなかっただけともいえるが(笑)。
だからクレジットカードも持ってなかったし、お金がないときは買わない、
という基本を守り通してきた。

 しかし、この度の開業だけはどうにも自己資金だけじゃ足りなかった。
飲食店を開業する人の平均が自己資金3割くらいで、
あとは借金しているという統計がある。
自己資金が半分以上ある場合は融資もおりやすいということを知った。
逆に言えば自己資金が半分、というのは、
国が認めた健全経営のひとつのバロメーターなのだろう、と思った俺は、
とにかくこの4年間、この自己資金の貯金に精を出した。

実際、融資面接の際には、貯金通帳もバッチリチェックされ、
一時的、瞬間的に用意したものや、援助されたものはマイナスイメージになるらしく、
その点では「4年間コツコツ系」のウチのパターンは結構優秀じゃん?って思った。

 自分が貯めたお金と同額の借金をする、ということは、
事実、紛れも無くそのお金を自らが稼ぎ出し(援助系や降って湧いた系だと違うけど)、
そのための労働の強度やら、時間やらを実体験してるわけだから、
最悪の場合、もう一度その時と同じ感覚で生活すれば、
返済は可能である、という意味なんだと俺なりに解釈する。

 そして、国民生活金融公庫(国金)の融資の中で、
「自己資金が半分あれば、担保も保証人も不要で、
その代わり、通常利息にプラス1.2%が上乗せになる」という、
「新創業融資制度」という存在を知った。
自分の店の経営理念というか、目標のようなものとして、

「自分自身や家族が、幸福で健康で、引け目・負い目のない、
堂々として、公明正大な運営をすることで、
そこに集うお客様にも幸福をもたらしたい」

という、かなり調子こいた我が信条(珈琲文明クレド)があって、
これくらいはつっぱらせてもらいたいということで、
保証人をたてない、ということの本当の意味としては、
この「引け目・負い目のない運営」を実践するためである。

 さて、自己資金が半分に到達したものの、
何の経験もない新規参入者に融資が認められるためには、
もう一つ、重要なものがある。
それが「事業計画書」というものである。

次回はその「事業計画書」及び融資の現場について。

Vol.23「設計士と心中!?」

2007年06月22日 | Weblog
ネット上で店舗デザインのコンペというものをやっていた。
参加費の2万円を払えば、複数のデザイナーが図面を書くというもの。
そのコンペ参加デザイナーの過去の作品店舗が載っていて、
俺はその中にとっても気に入った店があったので、
その店を手がけたというデザイン事務所に直接電話をした。
「ネットのデザインコンペで、おたくの手がけたお店を拝見し、
それが気に入りましたので、コンペなんてまわりくどいことせずに、
おたくのことだけを知りたいんで、直接話しをしたいんですけど」というと、
その事務所の人は「わかりました。じゃあチョット今忙しいんで、
夕方くらいにまたこちらから連絡しますので、連絡先お願いします」とのこと。
俺は「は?忙しい?すぐのちほどならわかるけど、夕方?え?」と思ったが、
言葉には出さず、そして何故か少し笑っちゃったが、電話を待った。
夕方再びかかってきた電話でわかったんだが、
そこは事務所とはいえ、完全に個人でやっているところで、
さっき電話に出たのは事務とか受付の一般スタッフなのかと思ったら、
デザイナー本人で、本当に何かの作業中・取り込み中だったんだということを知る。

とにかく一回会って、詳細を話し合いたい、という旨を伝えると、
その気に入った店で直接お会いしませんか?ということになった。

 会社組織というよりも個人のデザイナーで、内装工事は更に複数の工務店などへの入札方式をとる、というこの形は理想的であったし、
何より、個人でやってるほうが確実に融通がきくので、それもよかった。

 俺が気に入ったその店は月島の大もんじゃ焼きストリート沿いにある
「うどんに力を入れた飲み屋(!?)」だった。
 その人は、俺の言うことをまずはとにかく聴いてくれた。
前回の吉祥寺の事務所が常に否定から始まることと対照的に、
まずは全て肯定から入って、話が進んだ。
中二階の案も「おもしろいですね」となった。

 コブシャウのベーシスト、ラバンバが家を建てるにあたって、
とにかく不動産屋さんの選定が全てで、
その担当者と酒を飲みたいかどうか、で決めた、と言っていたが、

 今、現にこうして俺はこの初対面の設計士といきなり酒を飲んでいる。
更に後日、俺が理想とする中二階のモデルである、渋谷のベルギービールの店も
一緒に行ってみたいと言ってくれて、またまたそこでも一緒に酒を飲んでいた。

 かくして俺はよりどころとなる店舗デザイナーを見つけた。
この人を信じてとにかくあとは一気にいこう、と決めた。

 内装業者も決まり、かなりタイトなスケジュールと、
予算も含め、かなり無理があるこっちの要望もあり、
現場ではよく大工さんも交え、議論、討論、激論のヒートアップの毎日が、
今まさに現在進行形である。
 感情がぶつかりあい、意見を修正、調整したり、
逆にこっちが感情的になってるところをなだめられたり・・・。

 デザイナーも大工さんも絵描きさんも、もちろん俺も、
みんな個人がやってるものなので、個と個のぶつかりあいである。
厨房機器も俺は喫茶組合展示会というところに行って、
直接「厨房機器大手会社」とやりとりして、
チョット驚きの安さで新品をゲットしたり、
 もちろん前回述べたような会社、
つまりデザインから内装、設備、什器備品にいたるまで、
全てお任せのトータルコーディネーター的会社をつけていたら、
そりゃこんなに苦労はしなかった。
 でももしこういったトータルの会社に頼んでいたときの費用と、
今回のような個人とのやりとりの場合での費用の差(特に内装コスト)が、

「一年間の生活費以上」

だったとしたらどうだろう?
ただでさえ俺は物件がなかなか決まらなくてオープンが延び延びになって、
貯金を食いつぶしていた。
綺麗事は言ってられなかった。

 とはいえ、毎日、日々刻々と店が出来上がっていくさまはやはり感動的である。
その昔俺が勤めた塾の大月教室は新規オープンだったため、
自分の棲家っていう感じで、物すごい愛着を持っていたが、
今度はその比じゃないわけで、
今からその溺愛ぶりが怖い・・・。

 次回はとてもとても重要な「お金」の話をしよう。

Vol.22「設計・内装のドタバタ劇」

2007年06月18日 | Weblog
いろんなことが初体験なのだが、やはり内装工事はその最たるものだ。
とっかかりとしては、とにかくデザイナー(設計士)を決定して、
その人とバッチリ疎通をはかり、あとは任せる、という形しかなかった。
 さて、そのデザイナーであるが、
これはやはり実際に俺がこれまで見てきたCafeなどの
内装デザインで気に入った店を手がけたところを訪ねようと思った。
 駒込にある、とある珈琲店がとても落ち着いた作りで、重厚な感じであり、
そこを手がけたデザイン事務所のことなどを訊くために、その店に入った。
テキパキした女性店主がいろいろと丁寧に説明してくれた。
この店はちょうどオープンしてまだ一年くらいで、
しかも俺が短期で通ったCafé専門学校の卒業生でもあり、
話も弾んだ。感謝感謝である。
そして手がけたデザイン事務所もなかなか良心的なところらしかったので、
俺の中ではもうここに決めようと思っていた。
本当は絶対やったほうがいいとされる「業者間相見積もり」も、
見せかけだけやってみようかとも思ったが、
内心、よっぽどのことがないかぎり、もうここにしようと思った。
 
 後日吉祥寺にある、そのデザイン事務所を訪れ、そこの専務と話をした。
国金で融資を受ける予定だという旨を話し、
その中の「担保も保証人も不要」という「新創業融資制度」というものを
適用しようと思う、ということを言うと、
少し失笑しながら、その専務は、
「赤澤さん、保証人っていうのは、必ず必要なんですよ」と言ってきた。
これは俺もさんざん確認してきたことで、
国金にはこれまでに2回、相談だけの目的で既に行って、
「自己資金が半分以上あることが条件で、無担保・無保証人が可能。
その代わり利息が通常よりも1・2%上がる」ということで、
国金の人とも話が完全に通じていた。

 しかし、その専務はさらに続けた。
「逆にお金を貸すほうの立場にたってみてください、
相手が返せなくなったら困りますよね?」と、小さい子供に言い聞かせるように、
上から下への物言いに、少し困惑し、相手があまりにも自信満々の言い草なもんで、
実際俺が今まで考えていた融資は何かの間違いだったのかな?とも不安になっていった。
でもこの専務の話をすぐに信じるわけにもいかず、
「この件に関してましては、私ももう一回調べてみますが、
東京と神奈川では違うかもしれませんし、
そちらでも、ぜひもう一度調べてみていただけますか?」
といって、その日は終わり、
後日、専務は社長も連れて、我が物件の現地調査に来た。
いろんなところの寸法をはかり、
その後、三人でお茶をしながら、
俺はいろんなことを訊かれた。

俺は基本三大重要コンセプトを述べると、
その社長は常に切り返してきた。
「珈琲はサイフォンで淹れて、サイフォンごとお客様に提供する形です」というと、
社長は、「サイフォンがそれだけ数多く必要ってことになり、破損もするから、ランニングコストがかかりますね」

「注文が来てからアツアツのカレーを注ぐ、というカレーパンがあります」というと、
専務、「食べててルーが飛び出してきて火傷するかもしれませんね」

 そんなこと超初期段階で既に考えた上で、想定内として、考えた結果の重要コンセプトなのに、なんなんだこのああ言えばこう言うみたいな切り返し文句は、と思いながらも、

「天井には空の絵を描いてそこに調光可能の特殊照明を照らし・・・云々」を言うと、
社長は一言、「飽きますよ」「お客様はおいしいコーヒーを飲みに来てるんであって、
天井見上げたりしにくるわけじゃないんですから」

 プチン!と切れた。
俺は、「さっきから、何かと全て物事否定、否定で言ってきてますよね?」
「その否定の切り返し文句にも何の説得力も感じないんですけど」
というと、とりあえず、向こうは謝罪をしてきた。

そして、例の融資の話を、俺はその日もう一度国金に連絡して、
確認をとった上で、専務に、
「やはり無担保・無保証人制度はある、とのことでしたが?」というと、
今度は社長がまた俺を諭すように言って、間違いを認めない。
 別れ際に俺は、「とにかくもう一度調べてみてください」と言った。

 結局、後日電話が専務からかかってきて、
「申し訳ありませんでした。赤澤さんがおっしゃる通りで、
新創業融資制度なるものがございました。」との弁。
そして、平面図が出来たんで、ぜひいらしてご覧ください、とのことだった。

 出来上がった平面図を見に行った。
天井をぶち抜き、中二階を作り、という俺の案は、
最低1000万以上かかるとのことで、却下され、
何のオリジナリティーも感じない、平凡な平面図を見ながら、

「今回、○○さん(駒込の店)から紹介を受けて、
予算も少々上がろうが、他社をあたることなく、
私の中ではおたくにしようと、実は初めから決めていました。
しかし、あまりにもいろいろなことが合わなすぎると思うんです。
特に融資制度の話も、私が二度言って初めて調べて非を認めたかたちで、
特に御社のような開業のトータルアドバイザーなんて謳ってる会社のトップ二人が、
ご存じないなんて、あまりにも恥ずかしいことだと思いますし、
この件に関して私は許すことはないですし、
かといってお二人は人間的に悪い人ではないですし、
やはりここは取引関係をなくして忘れたいと思います。
断りの挨拶なんか電話で済ませてもよかったのかもしれませんが、
あまりに無下に断るというのは、紹介してくれた○○さんに失礼だと思うので、
その一点のためだけに、今日ここにこうして来て、直接言いに来ました。
そして、○○さんのためだけに、おたくの会社の今回の失態なども他言しません。
それでは失礼します。」

と、その会社を後にし、後日専務からはあらためて謝罪文がかかれたハガキが届いた。

 さて、これからアテがなくなった今、どうしたものか、
とにかくデザイナー探しにまた奔走することになる。
(つづく)

Vol.21「あとは物件だけなんだよー!!焦燥から結果オーライへ」

2007年06月15日 | Weblog
前回まで述べた基本三大コンセプトは、もう何年も前から出来ていて、
その後、会社を辞めた。修業もした。食材ルートのアタリもついた。
目標貯金額も到達した。
全額自己資金ってわけにいかないから融資が必要だった。
融資は先にまず物件が決まらないと応じてくれない(なんでよ?!)。
内外装設計も物件が決まらないことには見積もりも出ない(そりゃそうか)。

 俺の中での予定は去年の11月に店はオープンするつもりだった。
ただどうにも物件が決まらないんだから先に進まない。
10月を過ぎ、不動産屋にもとうとう「商店街沿いじゃなくても、少し外れたところでも
考慮に入れたいと思いますので、どんどん教えてください。」と言った。
 空き物件は全て見に行った。自転車で。
ネットでの店舗専門サイトの人からも頻繁に情報は来たが、
その情報よりも俺の方が早く、「そこならもう行ってきました」とか、
「ああ、あそこは確かにいいとは思ったんですが、天井が低いんですよね」とか、
だんだん相手の業者も「赤澤さんはもうご存知かもしれませんが・・・」というマクラ言葉がつくようになってきた。

ああ、別に物件情報のエキスパートになんかなりたくないのに・・・
ヤバイ、自己資金としての貯金額を食いつぶしていく・・・

 そんな時、懇意にしてくれている不動産屋さんから、
「商店街をほんのチョットだけ曲がったところのお店が、
夏からずっと閉めてて、間もなく更新の時期だから、
あそこが空くんじゃないかな」という情報をゲットした。
 確かに場所もよかった。
ただそれなりに家賃が高い。20万以上する。保証金も200万以上。
予算面で厳しいが、もはや選択の余地はない、とも思った。

 よく家賃の値下げ交渉するとか、保証金や礼金をマケてもらうとか、
その方法とかが書いてある本とかもあるが、
現実はというと、そんな状況は稀である。
需要と供給の問題なわけだから、
好立地の物件は値切ってる場合じゃない。
一般的に一件につき5人の希望者がいると言われる。
「マケてくんない?」とか言った瞬間に秒殺KOされる。
他にいくらでも希望者はいるのである。
だから値切るどころか、5人の候補者の中で、
いかに最も大家さんや不動産屋さんに気に入られるかにかかっているのである。
 基本的に大家さんと接触することは稀だろうから、
こっちが出来ることといえば、
いかに不動産屋さんに最初に声をかけてもらえるかどうかである。

 ちなみによく「テナント募集」か「空き店舗」とかの張り紙があるところがあるが、
ああいう公開されているところは、逆に借り手側の天下であり、値切る余地も大いにある。
 ただ、好立地のところっていうのは、そんなことする間もなく一瞬で決まるから、
公開告知の必要すらないのである。

 さて、その「もうすぐ空くかもしれない」と言われた物件、
もし空いた場合は、他に声をかけず、必ずあなたに紹介する、と言ってもらえた矢先、
ナント、そこの物件、更新したとのこと。不動産屋もビックリしてた。
その後半年たった今でさえまだ閉まったまんまである。
更新してどうすんのよ!ナゾ多すぎ。

 でもとにかくその物件もなくなった。かなりの絶望だった。
そんな中、不動産屋さんが「来年の春ぐらいになったら、空くっていうところ出てきたけど、さすがにそんなに待てないでしょ?」と言ってきた。
 場所はナントひたすら恋焦がれてた第一希望の仲見世商店街沿い。
10坪強、間口も広い。天井が高い。まさに理想的である。
家賃や保証金もリーズナブル。

 聞けば、そこの物件は創業以来60年続く老舗の衣料店で、
大家さんもその人になる。店の不振撤退ではなく、引退・勇退である。
老舗ならではの莫大な顧客数の皆さんにしっかりと挨拶をし、
閉店のお知らせをし、最終セールをやるためにももうワンシーズン続けたいとのことだった。当然である。
 大家さんも大変素敵な人柄で、こんな歴史がある老舗の後を継ぐなんて、
すごく気持ちがいいことだし、
「綺麗な商売の魂(!?)」みたいなものが棲みついてるような気もした。
 でも何しろ衣料品店から飲食店への完全なる業種チェンジである。
トイレも作んなきゃいけないし、ガス・水道、あらゆるインフラもやり直しである。
ただ、俺は個人的に「居抜き物件」っていうのが好きじゃないということもあり、
スケルトンから始めることはむしろ歓迎だった。
 悩みに悩んだ挙句、妙に現実的でクールな考えが生まれた。
□ あの更新されてダメになった物件と、
今回の物件がもし同じ家賃・保証金であったとしても、今回の物件のほうがいい。
なんたって、ずっと思い続けた仲見世商店街沿いなのである。
□ 仮に前の物件が更新せず、そこに決めていたらかかっていた費用と、
今回の費用を比べると半年間の生活費以上の差はあり、既に得である。

つまり、これから半年、じ〜っと待つ価値は十分にあり、
その間、生活費がかかってしまうが、金額的にも損とはいえない。
ということに気づき、待たせていただくことにした。

 これは今までのような、出口の見えない不安ではなく、
物件のメドがたった上での半年間である。天と地との差がある。

・ 建設作業現場でのアルバイトをして日銭を稼いだ。
そこで、内装の内幕(!?)を垣間見ることが出来た。
・ 当初、メニューのケーキはチョコレートケーキだけが自家製で、
他は仕入れにしようと思っていたが、多くの試行錯誤を経て、
チーズケーキも身に付け、自家製にすることが出来た。
・ チョットした備品・消耗品、例えばストローや紙おしぼりなどにいたるまでの
業者間相見積もりも出来た(さすがに開店間際にここまで出来る店は少ないと思う)
・ 何より物件は決まっているわけだから、早い段階で設計士と細かい打ち合わせを
じっくり詰めることが出来る。これは相当デカイ!

今にして思えばまさにいいことずくめなのである。
半年前、「あとは物件だけなんだよなぁ〜」
と、努力や行動だけではどうにもならないタイミングというものを恨んだものだ。

今この、努力や行動だけではどうにもならないタイミングというものに、
大変な喜びと感謝を感じている。これぞ結果オーライ!!

 次回、設計・内装工事のドタバタ騒動をお届けします。

Vol.20「カレー?いや、カレーパンです」

2007年06月11日 | Weblog
三大重要コンセプトの最後を飾るのは、実は「カレーパン」です。
以前もここで述べたかと思うが、「古来より永きに渡り親しまれ、
これからもすたれることが考えにくいもの」で、
かつ「シンプルなオペレーションで成り立つもの」が、
「飲」では珈琲、「食」ではカレー、という考えがあり、
当初からずっと思いをめぐらせていた。

 メニューを役者に例えると、珈琲文明の主役は当然珈琲である。
しかし舞台には名脇役が必要である。
看板に掲げているのはあくまでも珈琲でありながら、
「ここはカレーパンも旨いんだよ」という風になってもらいたい(希望)。
いや、なるはずだ!なるに決まってる!(断定推量)。

 カレーと珈琲はもともと相性も抜群だし、喫茶店でありながらカレーが相当おいしいっていう店もいくつかある。
吉祥寺の「武蔵野文庫」や「くぐつ草」なんかは良い例だと思う。
この二つの店は特に店側は声を大にしてカレーをアピールしてないけど、
お客様の間ではカレーがおいしい店で通ってるみたいな、実にかっこいいスタンスである。
「チューブ」のギターリストは実はメチャクチャ上手い、みたいな。

 珈琲文明もこんな風にしたい。しかしカレーパンが主役になるのは、これまた困る。
ケーキの種類(チョコレートケーキとチーズケーキ)にせよ、主役(珈琲)の持ち味を最大限に生かす、という観点からキャスト(メニュー)に抜擢してるわけで、これらが主役にとってかわることは店のコンセプトが揺らぐことにもつながるので、主役は珈琲である、ということは声を大にして言っていく必要があるのだが、
それにしてもこの脇役(カレーパン)には相当な思い入れがある。構想10年以上だし(笑)。

 カレーライスではなく、カレーパンである。
食事ではなく、軽食・スナック類である。
カレーライスを食べる人は飲み物は水があればいいっていう人も多いが、
カレーパンになるとどうしたって珈琲やカフェオレなどが飲みたくなると思うし、
こうすることで主役(珈琲)の面目も保たれる。
 イメージというものは面白いもので、食事をとろうと思うお店には、
あくまで食事目的で利用するようになり
ランチやディナー以外の目的であれば他のところというように、
一人の人の中でもお店の利用方法を分けるようになっている。
俺自身がそうだからよくわかる。
学生にせよ社会人にせよ、忙しい昼どきは正直、動物的におなかを満たす、
みたいなところもあるだろうし、
弱小個人店はランチで勝負っていうことをやるべきではないと考えている。
全時間帯対応型の珈琲のお店というコンセプトを確立するためには、
あまり食事メニューを充実させてはマズイというのがあり、
極力メニューは絞っていきたいんだが、
そうはいってもこのカレーパンは、なるべく声を小さく(?)言っていくが、
かなりの自信作で、一人でも多くの人たちに賞味していただきたいものである。

 ではこのカレーパン、具体的にはどんなものか?
普通カレーパンというと、揚げパンの中にフィリングとして粘度の強い、というかカチカチ・パサパサのカレーが入ってるといったところだと思う。
 「焼きたてアツアツのカレーパン!」として売れてる店もあるけど、
このアツアツというのは表面の揚げパン部分がアツアツになっているだけで、
中身のカレーまでは熱くない、というのが一般的だろう。

 珈琲文明の「文明カレーパン」は中に入っているカレーがアツアツで、具だくさんで、
スパイシー(しっかり辛い)で、パンは揚げパンではなく生地のしっかりしたパン。
作り置きするんじゃなくて、注文が入ってからお鉢状のパンの中にアツアツトロトロのカレーを注ぐ、というもの。
 肉も野菜もふんだんに入れ込んで珈琲と一緒に注文すると¥380(単品の場合は¥480)。正直、これでは原価が高すぎて元があまりとれないんだが、
おいしさも安さもとことん追求したもので、一種の利益無視のサービス商品なんだが、
もはや俺の中では道楽に近いものかもしれない。

 この「文明カレーパン」の他に、もう一つ重要なキャストが、「天使のカレーパン」。
中身はタイ風グリーンカレーである。
鶏肉と竹の子とほうれん草がたっぷり入ってて、これらの食材は「文明カレーパン」には全く入っていない(※「文明カレーパン」は牛肉とじゃがいもにんじん玉ねぎに10種類以上のスパイスが入った、スタンダードとはいえ辛口で重厚なカレー)という、
メニュー制作の原則である、「同食材をなるべく使いまわす」ということも無視している。

 そして悪役『ヒール』もしっかりいる。そう、「地獄のカレーパン」(笑)。
これはさすがに洒落になんないくらい辛いので、積極的にはオススメしないが、
完食した人は「エンマ台帳」にその名を残すことにはなる。
 やっぱり道楽以外の何ものでもないか・・・。

 まぁ「地獄の〜」はともかく、「文明カレーパン」と「天使のカレーパン」は本当に一度は食べてみてほしい一品かつ逸品、名脇役である。

 以上で我が店の最重要三本柱は揃ったことになる。
これを読んでくれている方々にも、この店の3つの最大の武器はぜひ知っておいてほしいと思うので、繰り返しておきます。

☆ 古き良き時代にタイムスリップ、夕暮れ&朝焼けをメインに空の明るさが調光変化する。
☆ スペシャルティコーヒー(世界最高級豆)をサイフォンごと提供。
☆ カレーパン

この3つの志、初期衝動だけはブレることがないように、心していきたい。

Vol.19「スペシャルティコーヒー」

2007年06月07日 | Weblog
最高に美味い豆はどこから仕入れるのか、店の生命線ともいえることなので、
おいしい!と思える喫茶店やオンデマンドの豆屋や有名な焙煎屋を、
シラミ潰しに、ローラー作戦で探していこう、と考えていた。

 いくら原価が安くても、大手メーカー等の業務用豆にするつもりはなかった。

 しかし多くのコーヒー店巡りをしても、本当においしいコーヒーの店というのは、
10店中1店あるかないか、いや50店中1店あるかないかという厳しい状況だった。
 店のマスターが、コーヒーにかける情熱や知識、うん蓄を熱く語りながら淹れてくれるところもあり、しかし実際の味は、残念ながらあんまりおいしくなかったり・・・。

 今思えばこれらの状況は全てよーくわかる。非常にうなずける。
早い話が肝心要(かなめ)のコーヒーの生豆の時点での品質の問題。
どんなに絶妙な焙煎、ドリップ方法、そしてどんなに新鮮な豆であろうと、
生豆の時点で質が悪ければ、おいしいわけがない。

 ついつい忘れがちなことなのだが、大手コーヒーメーカーにとっての最上級のお客様は、
一般消費者というよりも、喫茶店(店主?)である。
そりゃそうである、10万店を超える空前のメガマーケットなんだから。

 パチンコ台の話がわかりやすいかもしれない。
よくCMでパチンコ台(機種のことね)の宣伝をやってるけど、
あれを流すメーカーは一般消費者へのアピールもそりゃある程度考えてると思うが、
実際は全国のパチンコ屋さん(のオーナー)に向けて発信しているっていうのが正解。

 別にやましいことでもなんでもない。製造から小売にいたるまでのあまりにあたりまえの社会の構図なんだが、ついつい忘れがちになる。

 コーヒーメーカーにとっての最上級のお客様である喫茶店のオーナーが、
仕入れ原価を下げる、ということを最優先順位にした場合、
「どうせ店に来るお客さんはコーヒーの味を求めてるわけじゃない、
商談やデートコースや読書や瞑想(?)や、そういう場を求めて来てるだけだから、
コーヒー豆は1円でも安いところから仕入れよう!」
という考えのオーナーが多かった場合、
当然のことながらメーカー側は値下げ合戦を始める。
何よりも「安い」ことが最優先順位なわけだから、
クズ豆や欠点豆の混入もなんのその、現地の農園に対しても、とにかく量を生産せよと号令がかかる。
すると価格と共に生豆の品質も落ちて行かざるを得ないことになる。
それでも卸値が安いということで喫茶オーナーは喜ぶ。

 しかし、こんな内情を知るまでもなく、一般の消費者は「コーヒーがおいしくない」っていう理由で、そういうお店には入らなくなる。
こと飲食店では一般消費者をナメてかかると大変なことになる。
 
 喫茶店が、30年以上前の「普及の時代」であれば話は別だが、
今は「成熟の時代」を通り越して、「選択の時代」にとっくになっている。
コーヒー屋でコーヒーがまずかったら、おしまいである。

 さて、そこでスペシャルティコーヒーの登場である。
「金儲けだけの豆作りは止めて、最高品質のグレードの豆をひろめていこう」
といった理想論じゃなくても、
俺は「利潤追求のことを考えたとしても、
最高品質の豆をお店側は導入するべきだろう」と思う。

 当然仕入れ原価は高くなる。何しろわが国の生豆総輸入量700万袋のうち、
スペシャルティコーヒーと呼ばれる豆はそのうちの約15%程度の20〜40万袋。
※定義はというと、カッピングフォーム(100点満点のうち)で、
0〜10点・・・トリアージ(クズ豆)
10〜40点・・・ロー・グレイド
40〜60点・・・コモディティ
60〜70点・・・プレミアム
80点以上・・・スペシャルティ

さらにオークション豆のレベルになると全体の1%、いや0.1%以下の超希少なものである。

 今、「オークション豆」という言葉を使ったが、これは特に「カップオブエクセレンス」という、言ってみればコーヒー豆の最高峰を決める品評会で入賞した豆のことをさす。
 レコード大賞やアカデミー賞、グラミー賞、芥川賞、沢村賞などなどいろんな賞が世の中にはあるが、コーヒーに関する最も栄誉ある賞がこのカップオブエクセレンスの受賞ということになる。

 そしてこの「カップオブエクセレンス」の国際審査員をやっているのが、
丸山健太郎師その人なのである。ふぅ、再登場だがやっと出てきた(笑)。

 修業中、俺は丸山さんにカップオブエクセレンスの審査表を見せてもらったことがある。
実際の得点が書いてあるものではなく、あくまでも審査用紙ではあるが。
そこには10個の基準があり、10段階評価していくとのこと。
□ aroma
□ defects
□ clean cup(コーヒーカップが綺麗ってことじゃないよ・笑)
□ sweetness
□ acidity
□ mouth feel
□ flavor
□ after taste
□ balance
□ over roll
そして丸山さんは俺に話してくれた。「カップオブエクセレンスの審査員っていうのは、
ジャッジの配点感覚が暗黙のうちにかなり一致する傾向があります。
ですから私がこの豆のこの箇所は6点と言ったら、それは世界でも6点だということなんです。」と、スゴイ自身とプライドである。
ちなみに以前述べたように、普段の丸山さんは物凄い腰の低い人である。

 我が珈琲文明のコーヒー豆は丸山珈琲からの仕入れとなる。
当然、スペシャルティコーヒー、さらにはカップオブエクセレンス受賞豆を使う。
「世界最高級の豆を使う店」っていうのは大袈裟じゃなく、ただの真実。
この豆を使い、一人分に対し全国平均値では10〜12グラム、
二人分は18gといわれる量を、
珈琲文明では、一人分で21グラムのスペシャルティコーヒー豆を使っていく。
その分、価格は600円前後と高単価ではあるが、これで我が店は勝負をする。
原価の安いものを使って、値段も安くして、普通の味のコーヒーを出しても、
「選択の時代」のお客様は喜ばない。

俺だって、自分の店のメイン商品は揺るぎない絶対的な自信を持っていたい。

 豆の仕入先をどうしよう、と悩み、長期戦を覚悟して、じっくり妥協なく探していこうと思ってた俺にとって、丸山珈琲との出会いは、走り高跳びのバーを越せずにいたところに、バーの高さはそのままなのに、突然棒高跳びしていいと言われ、楽々そのバーを飛び越えてしまったみたいなチョット反則的な結果でさえある。
 一生のうちにそうはない奇跡的な幸運だったといえる。

 それでは次回は我が店の三大重要柱のとうとう最後のひとつ、
それは何でしょう・・・。(つづく)

Vol.18「サイフォン式珈琲」

2007年06月03日 | Weblog
短期間ではあるが、カフェの専門学校に通ったことがある。
そこでの講義中、先生が「この中で、自分の店ではサイフォンを使おう、と考えてる方はいらっしゃいますか?」と訊いて、俺ともう一人、55歳の人の計二人が手をあげた。
その時の生徒は10人だった。
 先生は驚いていた。「私はこれまでに同じ質問を1000人以上の生徒さんたちにしてきましたが、サイフォンでドリップしようという方は、今までで二人だったと記憶してます。
しかし今日こうして一気に二人も手があがったというのは大変驚いてます」と。
 そう、10分の2ではなく、1000分の4、つまり99.6%の人はサイフォン式ではない、ということなのだ。
 俺は心の中でちっちゃいガッツポーズをした。
珈琲店をやろうという業種そのものは超スタンダードでありながら、
そこから先のことは差別化やオリジナリティーやインパクトが大事だからだ。
何度か繰り返しなるけど、「業種は奇をてらわず、業態は独自のものを」これが鉄則。
 だから珈琲のドリップ方法にインパクトは大事なんだが、俗っぽい感じや、時代の最先端みたいなもので、オリジナリティーを出すのはコンセプトにあわない。

 いやいや、やめよう。ウソ言うのは。こんなことじゃなくて、俺は店のコンセプトとサイフォンで淹れよう、っていうのは同時に、瞬間的に出てきた発想ですハイ。
どっちが先とか後じゃなく、サイフォンで珈琲を淹れるっていうのはもうずっと初期段階から決定事項だった。
 三大重要柱の全てが実は初期衝動というか、直感の発想。
そしてこの初期衝動を実現させることが俺の中の一つの志である。

 演出効果も抜群だし(理科の実験のようでもあるが)、カウンターのお客様も見ていておもしろいと思う。
 サイフォン式ドリップの時点で少数派ではあるのだが、とはいえサイフォンで淹れる喫茶店はもちろんいくつも存在(古くから続く老舗に多い)する。
なんせ喫茶業界は分母の数が半端じゃないから。

 俺はさらなる差別化のため、お客様ににサイフォン(フラスコ部分)の状態のまま提供することにした。
カップに注ぐ楽しみ、おかわりの喜び(うちの珈琲は一人前が1.5杯分ある)、
ある意味些細な「お客様参加型」である。
 他にも「ブラックとミルク砂糖入りの2パターンを味わえる」というメリットもある。
それなら最初からカップに入ってくるものでも出来るよ、という声もあるが、
この順番ならそれも可能。でもその逆なら?「初めがミルク砂糖入りで、シメにブラック」これはポット系でもない限り無理でしょう。
実際俺も特にチーズケーキを食べてる時などは、
砂糖もミルクも入った珈琲のほうがおいしいと思うし、
でも最後の一口はブラックで喉をスッキリさせたい(お寿司の後のお茶みたいなもの?)というのがある。
これもサイフォンごと提供という方法だと可能になる。

 詳しい人ならわかることだが、サイフォン式はハンドドリップよりもオペレーション面でも実はラクで、しかも均一な味になる。
 しかし、残念なことに俺がこれまでに入ってきたサイフォン式の珈琲店は、正直あまり美味しくないのだ。これは致命的である。でも俺は自分で家で飲む時もサイフォンだが、
これは美味しいと思う。いや、自慢とかじゃなくて、原因はハッキリしている。

 単純に豆が古くて安いものを使っているからまずくなる。
 豆が新鮮で高価なものを使えばウマくなる。

ペーパーやネルドリップの際によく「お湯は80℃で」というのがあるが、
これは沸騰したお湯だと雑味やエグ味が出やすいということだが、
サイフォンはお湯が沸騰したからこそフラスコのお湯がロートにのぼってくる。
つまりバリバリの100℃近い温度だということになる。
 だからだいたいの店はロートに上がってきた珈琲は攪拌して一分ですぐに落とす。
これがサイフォンの鉄則で、俺がいた専門学校でもやはり「一分」と習った。

 しかし、これは結局、雑味や欠点豆やクズ豆の成分が入らないために、
なるべく手早く抽出したいという発想である。
 裏を返せば、早い話が古くて安い豆を使っている場合の後ろ向きな対処法だと思う。
これを解消するために「粗挽きで豆はふんだんに使う」ということでおいしい店もあるが、
根本解決になっていないと思う。

 何より、新鮮で高品質な豆をしっかり出し切ったものが最もおいしい珈琲といえる。
これはサイフォン以外にもペーパーだろうがネルだろうが、絶対条件である。
 そしてこれら高品質の豆であればという条件つきで、中細挽きで、熱いお湯のほうが豆本来の持つおいしさを十分に発揮してくれるのである。
 だから「高品質豆」でさえあれば、
サイフォン式ドリップはとってもおいしい淹れ方なのだ。

 こうしてもともとサイフォンで提供するお店にしたい、という初期衝動と同時に、
とにかく美味しい、高品質な豆を使用する必要が出てきて、使用する豆の決定までは、こりゃ一苦労だなぁと思いながら、でもここは妥協しないぞ!という気合もあった。
長期戦の覚悟は出来ていた。しかし・・・

 最高の豆との出会いは、俺にとってはそれこそ神風のように訪れた。

(つづく)

Vol.17「絵描きさん&照明屋さん」

2007年05月29日 | Weblog
「ものすごい巡り合い」ってあるなぁって思う。

妻のアロマ関係の知り合いの方で、その人の旦那さんが、ラーメン博物館の総合建築プロデューサーだという、驚くべき人がいた。
ラーメン博物館、それはまさに俺が照明効果のアプローチとしては理想的だと思い憧れてた場所。

 早速無理言って、その旦那様に会わせていただくことにした。
Vol.12「常軌を逸している」で述べたような、「一人vs国家」に近い感覚をここでもまた感じた。
甲子園を目指すべく、これから頑張っていこうとする田舎の高校球児を率いる監督が、
グランドやトレーニング設備の話を、ニューヨークヤンキースの監督に聴いてる感じ。
スケールが違い過ぎて、ギクシャクした会話になる。
「10坪程度の小さい店」という断りはもちろん入れたうえで、
「やっぱり100万円くらいかかっちゃうんですかね」と言った俺の気持ちとしては、
照明に100万円かける余裕なんて全くない中での発言。
メジャーに対して失礼のないように、思いきった値段を言ってみたつもりだったが、
「そうですね、坪100は見といたほうが・・・」とその人。
「坪100万!?照明だけで一千万!?坪100なんてのは、物件取得費、内外装費、さらに開店後の運転資金等全てを含めた金額、つまり開業にかかる全コミコミの総トータル費用の目安でんがな!」
という言葉はおくびにも出さず、
「ですよねぇ。」とにこやかに応じた。

 そんなわけで、「ものすごい巡り合い」は敢え無く撃沈。

 しかし俺の中では諦めるつもりはなく、空の絵があって、何色かの照明があって、フェイドイン&アウトであり、やれコンピューター制御だと言っても、
理屈としては「結局はタイマーじゃん?」みたいな素人考えは大切にしていきたい。
もっと何か画期的な方法はないものか、原始的な方法でもいい、
そうだ!いっそ手でやればいいじゃん!とまで考えていた。 そんな時だった。

 その日俺は、関内から馬車道あたりを一人フラフラほっつき歩いていた。
するとあるバーの看板に「壁に描いた絵にブラックライトで照らした癒しの空間」という文句を見つけた。
 ブラックライトというとなんだか卑猥で派手なイメージがあったが、
その看板にある絵は確かに心安らぐ感じがした。
「入っとくしかないでしょ」と自分に言い聞かせ、
2階にあるそのバーの階段を上った。
 時間帯も早かったということもあり、入るとまだ誰も客がおらず、
ガタイがよく、とっても愛想のよいマスターが笑顔で迎えてくれた。

 俺は自分のCafé内装の構想から何から全てぶっちゃけた。
マスターは他にお客様もいないということで、
明かりを消した時、普通の白熱灯だけの時、ブラックライトの時、など
いろんなヴァージョンをやってくれた。
壁画は南国の海岸だったが、空や雲はしっかりとグラデーションの雰囲気が出ていた。

 「いけるかもしれない、超ウルトラC級低コスト実現!」
聞けば、絵を描くのもブラックライトも、個人経営の人が鎌倉で自宅を事務所に構え、
営んでいるとのこと。
 俺はマスターにそこの連絡先を聴き、後日鎌倉へと向かった。

 場所は材木座というところで、なんと、サラリーマン時代の会社の保養所というか、社長の別荘というかがすぐ近くにあり、俺は毎年ここにバーベキューをしにきたなぁとか思いつつ、不思議な気分になった。

 さて、どんな絵になり、どんな照明効果になるか、
俺にとっても最大の関心事のひとつである。
これを読んでくれている方々もぜひぜひお楽しみに。

 「ものすごい巡り合い」ってあるなぁって思う。
それは俺の場合、馬車道を歩いて目に留まった、あの看板こそなのかもしれない。

 次回、超重要3本柱の2本目、「サイフォン式珈琲」についてです。

Vol.16「結局どんな店なの?」

2007年05月26日 | Weblog
これからは珈琲文明の生命線、三大重要柱を述べていく。
思い入れたっぷりなので、放っておくといつまでも熱く語る恐れがあるんで、
出来る限りクールにと自分に言い聞かせながら、
一本目の柱は、「どんな店なの?」つまり内外装の基本コンセプトである。

 キャッチコピーは「古きよき時代にタイムスリップ」、
いわゆる「レトロ」で、「クラシカル」な感じ。
 「レトロ&ノスタルジー系」も大好きなんだが、「ノスタルジー」よりも「クラシカル」に重きを置く。

 昭和30年代の雰囲気をかもし出すラーメン博物館や、
映画「ALWAYS〜三丁目の夕日〜」、あるいは単に「駄菓子屋」の雰囲気というのは
本当に好きで、キュンときまくりなのだが、
例えば俺の両親のような、昭和初期生まれあたりの年齢層の人たちの中には、
もちろん超リアルタイムだから、懐かしさにキュンとなる人も多いだろうけど、
しかし、ある意味あまりにリアルタイムゆえに当時の所帯じみた生活臭や、
貧しくて辛かった日を思い出したりして癒されない、
という声もヒアリング調査の中で実際にあった。
 
 確かに俺も、自分自身の超リアルタイムであるウルトラマン、仮面ライダー、タイガーマスク、太陽にほえろ!、ザ・ベストテン、フォーク&ニューミュージック、ベストヒットUSA、などに訴えた店がもしもあった場合、
それは俺にとってもちろん「懐かしい!」にはなるけど「非日常」ではない。
ニューミュージック(特にアリス)やベストヒットUSAなんてきっと俺のほうが詳しくて、その店に難癖つけそうである。

 ノスタルジーと非日常は相容れないものなのだろうか・・・

ラーメン博物館(以下「ラー博」)や映画「ALWAYS」を見て、
なつかしー!って思っても実は俺は生まれていない。
まさにこういうことこそが、ノスタルジー(その大部分がイマジネーション)&非日常なのだと思う。
 だから実際には体験していない時代で、懐古的要素をもち、非日常的な空間というのが、
人が魅力を感じる場所のような気がするのだ。例えばディズニーシーのような。
 生まれていない時代といっても、メソポタミア文明とかはダメ(笑)。

 そこで考えたのが、現在わが国、いや地球上の誰一人、実体験を持っていないが、
時代は近現代のため、多くの資料があり、また自分の親やおじいちゃん、おばあちゃんから間接的に伝え聞いたりして、情報量も豊富で、いろんな人がそれぞれに様々でありながらも、コンセプチュアルなイマジネーションを喚起するような時代・・・、
 舞台は横浜、更に俺の好みとして異国情緒とか舶来品というイメージ・・・、

 とくればもう「文明開化」の頃しかないでしょう!!ってことで・・・。
そして、これがコンセプトとなり、店名「珈琲文明」にもつながった。

 ああ、また理屈っぽく言ってるようだけど、これもまた例によって後付けである。
直感としてまず、「レトロで安っぽくない、重厚な感じ」ていうのがあっただけである。

 内装の特色は、アクセントとして「ガス灯」風の電柱は建てようと思うが、
基本的に他に小道具はナシ。
 こげ茶色の木材と漆喰の壁だけという、シンプルかつ時がたつにつれ味が出る素材に絞りたい。
(※「漆喰」とは・・・石灰を主成分にスサを加え、海藻糊と水を加えて練る。
防火性が高いため、財産を守るよう土蔵に使われていた。
また調湿機能により季節の変化に耐えうる上、遮音性にも優れる。
防音設備をしていない我が店にこれはかなりポイント高い。
さらにシックハウスやアレルギーの人にも優しいヘルシーな素材なのだ。)

 このように作りはいたってシンプルにするが、
一つだけ強烈にこだわっている部分があって、それは照明効果である。
 それこそ「ラー博」や、お台場の「ビーナスフォート」のように、
天井に空の絵を描き、照明効果により朝、昼、夜と一日の明るさが変わっていくというやり方。
 ビーナスフォートの場合、まさに一時間で一日、夜明け〜朝〜昼〜夕焼け〜夜、というようにそっくり二十四分の一のタイム感でなりたっているんだなぁというのが、
俺自身が計測した結果である。
単純に二十四分の一だと、当然ながら夜明けや夕方のグラデーション&トワイライトタイムなんていうのはもう一瞬で終わってしまう。

 俺はこの一瞬で終わる部分、つまり「夜明け」及び「日暮れ時」をメインにしたかった。
1サイクル(俺は35分としたい)の中の7割強から8割はこれらの時間帯の調光にしたかった。
規定で決まっている店舗内「最低10ルクス以上」は満たす必要があるが・・・。

 店の「中」にいながら、お客様は「外」にいるという設定で、
調光の具合で空の色が変わっていく。
そして主に夜明けや夕暮れ時を多く堪能でき、日常的ではありつつ、
それはやっぱり「非日常」という演出。
 ほんの10坪程度の狭い店で、天井を見上げないとイマイチわからないような、
結構さりげない演出かもしれない。
でも俺はどうしてもこれがやりたかった。
そしてここにはお金もしっかりかけるべきだと思った。

 かくして俺は天井に空の絵を描く、絵描き探し&照明屋探しに奔走することになる。

Vol.15「モリよさらば〜修業編エピソード2〜」

2007年05月24日 | Weblog
丸山珈琲での修業が終わり、9月2日(土)、丸山珈琲のスタッフ全員が、
わざわざ俺の送別会をしてくれた。
 最初、俺は「まぁ送別会という名目で、夏の反省会的な意味合いもある会合なのだろう」などとうがった見方をしていたが、行ってみたら本当に最後まで俺の送別会的な趣旨だったんでビックリした。

 予約してある焼き肉店に向かう前に、閉店したての丸山珈琲に集合だったわけだが、俺はここの店の豆で特に驚異的に旨いと思ったスマトラ・マンデリンと丸山ブレンドの二つ(ブラジル・サンヴェネディートは残念ながら売り切れだった)を250グラムづつ購入すべく注文すると、
丸山さん本人自らが袋詰して、真空パックもしてくれて、
「今日はもうレジをしめちゃったんで、これは持ってってください」という一言。
スマートでカッコイイ心遣いに感動。

 大好物の焼き肉に食らいつきながら、俺は丸山さんの隣をしっかり陣取り、
珈琲話をふりまくり吸収しまくり、丸山さんをはじめ他のスタッフのみなさんは逆に俺のことをいろいろと訊いてくるのだが、俺はすぐに珈琲話に戻し(笑)みたいな感じで、最後まで勉強になりまくりだった。
そして、こういういろんな話を訊いたりする時、丸山さんは本当にオープンで、
全て明け透けに話をしてくれた。

 スタッフのみなさんと別れを告げ、帰ろうとしたその時、丸山さんが近づいてきて、
「この夏は赤澤さんがいてくれて非常に助かりました。これは本当に少ないんですが、
給料ってわけでもなく、税金とか関係なく、僕の完全なポケットマネーからなんで遠慮なく受け取ってください。」と言い、「寸志」と書かれたものを俺にくれた。泣きそうになった。

 神がかり的な縁で行き着いた、森の中にある世界一流のコーヒー店。
今後の自分の方向性を大きく左右する出会いに感謝するとともに、
今日も明日も軽井沢の森の中にある素晴らしい店と素晴らしいスタッフの発展を祈ってやまない。

 それとこれは加筆になるが、
修業中にわざわざ軽井沢のこの店まで来てくれた人が知り合いで3組もいた。
大学時代の友人、バンドのお客さん、前職の同僚、全員が軽井沢が地元でもなんでもなく、
本当にわざわざ来てくれたことになる。
細胞レベルで嬉しかった。わかりやすいくらい元気になった。
この場を借りてお礼を言いたい。ありがとう!

 さて、この文明ロードは色々と書きたいことが山ほどありすぎて、
それこそネタに困る、なんてことだけはありえなく、
もしも俺が物書きなのであれば、それは好ましいことなのかもしれないが、
だんだんとオープンが迫ってくると、こういったブログの更新もままならないほどの、
殺人的な忙しさになるのもわかっているだけに、なるべく早めに「開業準備編」みたいなことや、「開業への思い編(!?)」みたいなものは書き終えておきたい。

 ところで、絶対に書いておくべきことで、それこそ1番か2番に書いておくべきテーマとして、「どんな店なの?」っていうことをまだ書いていない。
これは知りたい人も多いだろう。ていうかこれだけ知りたい人が多いだろう(笑)。
 こんな大事なことをわざと先送りにして、もったいぶってみたけど、
そろそろいってみよう。次号より、珈琲文明の3大オリジナルコンセプト、
我が店の命ともいえる超重要三本柱をいよいよ公開します。