野の花

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都の日暮れ13

2017-03-07 13:11:40 | 日記
倉田洋平は日暮れが近くなると酒が恋しかった。それはわからないでもない。朝早くからかなり熱心に仕事をこなしていた。社長は他の企業の社長との打ち合わせと云いゴルフ場行きを決めていた。兄の洋八は美術関連の本を読んで過ごしていた。ある日母親の倉田道子にホテルのロビーに呼ばれた。母は和服を着て一人だった。洋平、久しぶりだねと笑っていた。六十代の母は元気そうだった。今日は洋平に二つばかり話しが有るのと言った。母と会うのもそう言えば久しぶりだった。珈琲を頼んだ。母は、洋平は何だか忙しそうねと云い顔をじっと見た。話しと云うのはね、洋八に縁談が有るの。お相手は京都の方でね、元、華族の方で野河原さんと云うの。お母さんは京都にお茶やお花や日本舞踊などでよく京都に行くでしょう。お花の先生からのお話しなのと云い洋平を見た。洋平は、それは二人が会ってみて決めることだよ母さん。兄貴に話して良ければ京都でお見合いさせてみる事だね、しかし元、華族の方とねと言って笑っていた。
つづく

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