夏空

　　　　　いつだって精一杯の人だった　青空、太陽、そして向日葵

川風

　　　　　一生自ら閉じたる君は夏の川面を風と征く

水辺にて

　　　　　水鳥は清閑なりし緩やかに思いのままに波紋描けり

やらかした

　　　　　用件は想定外の疲労感一つ忘れて迂闊の帰宅

兆し

　　　　　冬ざれの朝に色差す囀りはやがて明るい空をもたらす

添書き

　　　　　夕桜写真の裏の「I need you」

忘れていた存在

　　　　　春先に此処よと告げてコルチカム花開くまで毒と潜みぬ

拠り所

　　　改めてもう無いと知る拠り所ヒカンザクラの花の盛りに

やがて喪う

ゆっくりと落ちていくのはタマネギででも砕け散るのはこのこころ

セピア色に染まる

蝉時雨とよもす庭はセピア色異国の風のような夕暮れ

ムスカリ

満開の桜遠巻きムスカリのコロニー春の光遍く

扉

三月は冬と春とが入れ混ざり心の扉閉めては開ける

命日

咲き初めし枝垂桜よ七歳を眠れる君とまた仰ぎ見る

孤高

見渡せば裸木の群我ひとり

静寂

　　　　　早旦や白南風渡る山は黙