★私のクラシック音楽館(MCM)★ クラシック音楽研究者  蔵 志津久            

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◇クラシック音楽CD◇ユジャ・ワンのショパン:ピアノソナタ第2番/スクリャービン:ピアノソナタ第2番「幻想ソナタ」/リスト:ピアノソナタロ短調ほか

2017-07-11 06:32:00 | 交響曲(モーツァルト)

 

ショパン:ピアノソナタ第2番
リゲティ:エチュード第4番「ファンファーレ」
スクリャービン:ピアノソナタ第2番「幻想ソナタ」
リゲティ:エチュード第10番「魔法使いの弟子」
リスト:ピアノソナタロ短調
モーツァルト(ヴィロドス編):トルコ行進曲

ピアノ:ユジャ・ワン

録音:2008年11月、ハンブルク=ハールブルク

CD:ユニバーサルミュージック(ドイツグラモフォン) UCCG‐51086

 ピアノのユジャ・ワン (1987年生れ) は、中国・北京出身。北京の中央音楽学院で学ぶ。14歳のときカナダのカルガリーのマウント・ロイヤル・カレッジで研鑽を積む。2001年第1回「仙台国際音楽コンクール」に最年少出場者として参加し第3位と審査委員特別賞を獲得した。2002年からはフィラデルフィアのカーティス音楽院で学ぶ。2003年、ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番でヨーロッパデビューを果たした後、2005年にはアメリカでもデビューを果たす。近年、ユジャ・ワンは毎年のように来日しているので日本でのファンも多い。伝統的なファッションを重んじるクラシック音楽のコンサートの中で、奇抜なファッションでも話題を集める。また、欧米の音楽界がアジア人の演奏家をどう受け止めているかを著した書籍「ピアニスト」(エティエンヌ・バリリエ著/アルファーベータ刊) のモデルとしてユジャ・ワンが取り上げられたことでも話題となった。現在ニューヨーク在住。

 最初の曲は、ショパン:ピアノソナタ第2番。この演奏内容は、曲に真正面から取り組んだあまりにも正統的なものであり、ちょっと驚かされる。詩情たっぷりに歌わせるところなどは、何かベテランの大家のピアニストが演奏しているかのような感じもするほど。この頃既に成熟の域にまで到達していたかのようだ。この演奏を聴いていると何故ユジャ・ワンが今人気ピアニストのであるかが理解できるような気がする。現代的な印象とは別に古風な一面も持ち合わせていることを窺わせる。そして、何よりもいいのが健康的なショパンを聴かせてくれるところだ。全体が実に生き生きと、はつらつとした演奏に徹しており小気味がいい。何のけれんみもなく堂々と弾き切る。また、このアルバムにはハンガリの作曲家リゲティ(1923年―2006年)の2曲のエチュードが挿入されている。これがこのアルバム全体を引き締めるのに、かなりの効果を挙げている。これがユジャ・ワンの発案だとすると企画力もなかなかのものだ。リゲティの曲の演奏は、リズム感の良く一挙に弾きる、魅力たっぷりの内容となっている。

 次の曲はスクリャービン:ピアノソナタ第2番「幻想ソナタ」。これは1897年に書かれた全2楽章からなる作品。「幻想ソナタ」と題されているようにロマンティックで内省的な雰囲気が印象的な曲だ。スクリャービンは旅行先で出会った海の風景から、この作品の着想を得たという。第1楽章は、光と打ち寄せる波が交錯するような印象を与え、第2楽章は激しく打ち寄せる波のようなダイナミックな音楽。ここでのユジャ・ワンの演奏は、ショパンの時とはがらりと一変し、茫漠としたスクリャービン特有の世界に没入して見事。ユジャ・ワンのピアノの音色は微妙なニュアンスが隠し味となっているようで聴いていて飽きがこない。そして、単なる表面的な情緒に陥らず、背筋がピーンと張ったような清々しがなかなかいい。何かユジャ・ワンというピアニストとスクリャービンとが、内面で深く結び付いていることを感じさせるような演奏内容だ。音色もなかなか綺麗に収録されている。この演奏でも成熟さが滲み出ている。

 最後は、リゲティのエチュードを挟んでリスト:ピアノソナタロ短調。この曲はリスト唯一のピアノソナタで、1848年から1861年にかけて書かれた作品。長大な単一楽章を取るが、内容は三部形式となっている。高度な技巧を要求されるためピアニストが一度は挑戦する、試金石のような存在の曲となっている。若きユジャ・ワンがどのようにこの曲を表現するのか興味津々。意外にもここでのユジャ・ワンは、あくまで謙虚であった。決して挑戦的な力みは見せず、優雅ともとれる滑らかさが印象的な演奏を披露する。それでも、所々で力強さも存分に発揮する辺りは、やはりユジャ・ワンは、ただのピアニストとは一味も二味も違っている。そして、聴き進めるに従って、ユジャ・ワンはその内面に歌心を潜めているピアニストであることに気が付かされる。結論を言うとリスト:ピアノソナタロ短調が、こんなにも色彩感あふれる曲だったのかという感を深く抱かせられる演奏であった。そして、ボーナス・トラックとしてモーツァルト(ヴィロドス編):トルコ行進曲が収録されている。ユジャ・ワンの若さが爆発したかのような爽快感極まりない演奏でこのアルバムを締めくくる。(蔵 志津久)

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