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クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽◇プラハ弦楽四重奏団のブラームス弦楽四重奏曲全曲集

2009-01-15 11:23:47 | 室内楽曲(弦楽四重奏曲)

ブラームス:弦楽四重奏曲第1、2、3番
ヴォルフ:イタリアン・セレナーデ

弦楽四重奏:プラハ弦楽四重奏団

CD:日本コロムビア 50CO-1715~6

 ブラームスの室内楽は数多くあり、我々の馴染みのある曲も多い。この中にあって弦楽四重奏曲はいささか地味な存在だ。ブラームスの弦楽四重奏曲と聞いて即座にその曲想を思い浮かべることのできる人は相当のクラシック音楽の通人であることは間違いない。ちょっと考えるとブラームスと弦楽四重奏曲は相性が良さそうに感じられるが、実際はそうでなく、ブラームスは弦楽四重奏曲の作曲には相当てこずったことは、20曲以上作曲した弦楽四重奏曲をすべて破棄し、この結果現在3曲しか残っていないことからもうかがえる。これは何故なのか。門馬直美氏のライナーノートによれば次のような理由が考えられるという。つまり、それまで室内楽というと貴族などの邸内で演奏されることが多かったが、それが徐々に演奏会場で演奏されるスタイルに置き換わっていき、このため弦楽四重奏曲より大きな編成の室内楽曲が好まれるようになって行った。ブラームスもこの流れに沿って作曲活動を行った結果である、というわけである。

 ブラームスは3曲の弦楽四重奏曲を1873年~75年の3年の間に作曲し、以後一切弦楽四重奏曲は作曲していない。第1番から第3番の弦楽四重奏曲を聴いてみると、ブラームス独特の晦渋さといおうか難解さが曲全体を覆い、晴れ晴れとしたところがほとんどない。この中で第3番は巨匠的作風とでもいおうか牧歌的で堂々としていて、3曲の中では一番成功した曲であり、現在弦楽四重奏曲の傑作の一つとして評価が高い。それでも、私にはブラームスともあろう人が、見せ場がなく、もう一つ吹っ切れていないという感じがしてならない。これは同時期に交響曲第1番に着手していたので、交響曲の作曲に神経が集中していたためではなかろうか。

 このCDの最大の売りは、演奏しているプラハ弦楽四重奏団の質の高さだ。チェコ出身の演奏者の弦のすばらしさはいまだに世界最高だと思うが、このCDで見せるプラハ弦楽四重奏団の演奏は、限りなく緻密な弦の響きを聴かせ、しかも躍動感溢れる音のつくりは、聴くもののすべてを引き付けてやまない。データによると日本コロムビアとスプラフォンの共同制作で、録音は1978年~79年にプラハのスプラフォン・スタジオで行われたとある。今回のCDのように昔、日本コロムビアはよく海外のレコード会社と提携し著名なクラシック音楽家の録音を海外で意欲的に行っていた。現在、日本のCD制作会社は外国の音源だけに頼らず、昔と同じように意欲的な試みを果たしてしているのであろうか。受身でなく、積極的に新しい才能を、自らの手で開拓して行ってほしいものである。(蔵 志津久)


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