酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

「ライオン~25年目のただいま」が提示する<過去-現在-未来>を繋ぐ環

2017-05-16 19:59:28 | 映画、ドラマ
 終活というとオーバーだが、CDの整理に取りかかった。回収用(恐らくブックオフに依頼)の段ボールを用意して、〝積聴〟状態のアルバムを聴いているうち、メランコリックでダウナーな気分が心に溶けてきた。〝俺の青春時代は長くて暗く、ギザギザしてたんだな〟と独りごちながら、それゆえのロックとの深い絆を再認識する。終活どころか、延々と続く回春の日々になりそうだ。

 藤井聡大四段がNHK杯将棋トーナメント(14日放映)で、俺一押しの千田翔太六段を破った。俺がこの間、怒りを禁じ得なかったのは、メディア(スポーツ紙)が将棋界の不文律<テレビ対局では放映時まで結果を伏せておく>を蔑ろにしたからである。俺だけでなく、NHK杯や銀河戦(囲碁・将棋チャンネル)を〝疑似リアルタイム〟で楽しみにしているファンは多い。

 将棋に関心の薄い知人の女性も14日は見たという。藤井関連でワイドショーに出演した香川愛生女流三段の美貌にノックアウトされた同世代のおっさんもいる。〝藤井効果〟はかくも絶大なのだ。肝心の対局は、千田の空回り→自爆→戦意喪失といった感じか。藤井は自然体で、感想戦でも遠慮気味に話していた。藤井の次の対戦相手は森内俊之九段(永世名人位保持者)だ。メディアのルール遵守に期待したい。  

 角川シネマ新宿で「ライオン~25年目のただいま」(16年、ガース・デイヴィス監督/オーストラリア)を見た。実話をベースに世界の映画祭で絶賛された作品だが、その割に上映規模は小さい。タイトル「ライオン」の意味はラストに明かされる。

 1987年、インドの貧しい村……。5歳のサルー(サニー・パワール)は兄グドゥとともに、重労働に従事する母を助けている。ある日、グドゥとはぐれたサルーは回送列車に閉じ込められてカルカッタ(現コルカタ)に着く。貧困と暴力が渦巻く大都会でストリートチルドレンになったサルーだが、善意の出会いに恵まれる。ジョン(デヴィッド・ウエンハム)とスー(ニコール・キッドマン)夫婦の養子になってオーストラリアに渡った。

 インドでのシーンに重なったのが「駆ける少年」(85年、アミール・ナデリ監督だ。同作の主人公アミルは孤児だが、本作のサルーのように瞳を輝かせて走っていた。絶望も孤独も希望を失わなければ克服出来ると言いたげに……。

 青年期のサルーを演じるのは「スラムドッグ$ミリオネア」で鮮烈なデビューを飾ったデヴ・パテルで、役柄にもインドの光景にもマッチしていた。同じくインドからの養子で弟のマントッシュは少年期、癒えることのない傷を負ったのだろう。成長してもトラウマから逃れられず、クスリに依存している。一方のサルーは過去の扉に吸い込まれ、時を溯る旅人になる。

 映画館に足を運ぶ方は多くないだろうが、レンタルDVDやテレビ(WOWOW)でご覧になる方もいると思うので、ストーリーの紹介は最小限にとどめ、肝と感じた点を以下に記したい。 
 
 サルーの二人の母親に心を打たれた。息子が生きていると信じて捜し続けた生母、慈善のレベルを超えた高邁な意志でサルーとマントッシュを育てたスー……。ラストでシンクロした思いに、ハナをすする音が前後左右から漏れていた。〝母〟への強い情は国境、年齢、性別を超えて普遍なのだ。
 
 拗ね者として、ケチをつけたい点もある。本作で重要な役割を果たしているGoogle Earthは、確かに使い勝手はいい。だが、CIAら諜報機関とグーグルの蜜月は多くの人が指摘している通りだ。小泉元首相のブレーンだった岸博幸慶大教授は、「皆殺しの発想を仮面で隠しながら自由を説き、アメリカによる一元化に寄与している」とグーグルの危険性に警鐘を鳴らしていた。

 エドワード・スノーデンやジュリアン・アサンジなら、秘密保護法や共謀罪とグーグルの関係を明快に展開するだろうが、俺が何を言っても屁理屈にしか聞こえないだろうから、この辺で止めておこう。実在するサルーが効果的にGoogle Earthを使ったことで感動的な結末に至ったことは、本作に描かれている通りである。

 順風満帆だったサルーにとって、過去が突然、意味を持ち始める。自分を愛してくれた母と兄に再会しなければ、生きている意味はなく、そして未来に進めないと直感するのだ。人は誰しも<過去-現在-未来>の環に繋がれている。「人」を「国」に置き換えてもいい。歴史修正主義が蔓延る現在は、残念ながら真理と程遠い。

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