酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

「真夏の方程式」~ガリレオが惑う心の迷路

2013-07-18 21:32:56 | 映画、ドラマ
 G紙(仕事先の夕刊紙)の書評欄に、「原発事故と甲状腺がん」(幻冬舎ルネッサンス新書)が紹介されていた。著者の菅谷昭氏はチェルノブイリ原発事故の医療支援活動に従事した後、松本市長を務める(3期目)。菅谷氏は医師の立場から、現在の日本人を<難治性悪性反復性健忘症>と診断していた。

 チェルノブイリの現状を日本の狭い国土に置き換えると、福島原発事故による体内被曝は将来、深刻な形で現れる可能性が高い。今回の参院選で自公に投票する人は、「あなたはあの選挙で、私たちに投票しましたね」と〝自己責任〟を突き付けられることになるだろう。子供や孫が甲状腺がんを発症しても、政官財に逆らえない司法機関は「原発事故と無関係」と門前払いを食らわすはずだ。一票の意味は極めて重い。

 原発のセールスマンと化した安倍首相と真逆の姿勢(脱原発)を貫くのが昭恵夫人だ。高坂勝氏(緑の党共同代表)の著書に感銘を受け2年前、同氏が経営する居酒屋で歓談している。〝獅子身中の虫〟を許せない保守派の意を受けたのか「週刊文春」は先々週、<鳩山元首相と首相夫人を操る中国人スパイ>の存在をスクープした。名指しされたのは音楽家の呉汝俊氏である。

 呉氏と親しい〝歌舞伎町案内人〟こと李小牧氏は、G紙の連載で文春の記事に疑義を呈していた。見出しになった2人がいかなる情報を流したのか具体的に書かれていないからだ。ちなみに、呉氏自身も一笑に付しているという。〝中国のスパイ〟は指弾され、〝アメリカのポチ〟が称揚されるこの国のナショナリズムは、明らかに歪んでいる。自民党や民主党にゴロゴロいる〝CIAの代理人〟たちは、安倍嫌いのオバマ大統領から安倍潰しを命じられたらどう対応するのだろう。

 ようやく本題……。新宿で先日、「真夏の方程式」(13年、西谷弘監督)を見た。原作(東野圭吾)は今もベストセラーで、映画も公開直後ゆえ、ストーリーの紹介は最低限にとどめ、大雑把な感想を記すことにする。

 湯川学(福山雅治)はシンポジウムに参加するため美しい海辺の町を訪れ、殺人事件と遭遇する。苦手なはずの子供(少年)との交流が、ストーリーの歯車になっていた。テレビの「ガリレオ」シリーズと比べると岸谷刑事(吉高由里子)の出番は少なかったが、その分、普段より濃い化粧で存在をアピールしていた。

 「ガリレオ」人気の理由を俺なりに分析してみる。といっても、結論は平凡だ。第一は主人公の孤独、第二はノンセクシュアルな男女関係といったところか。ミステリーの基本は〝孤独な探偵〟で、原像はもちろんシャーロック・ホームズだ。「相棒」の杉下右京(水谷豊)も、「CSI科学捜査班」(第9シーズン半ばまで出演)のグリッソム主任も、明晰であるが故に、孤独オーラが滲み出ている。

 「トリック最終章」(来春劇場公開)では何らかの進展があるかもしれないが、上田(阿部寛)と奈緒子(仲間由紀恵)は互いを「巨根」「貧乳」と貶しつつ、ノンセクシュアルな関係をキープしている。「ガリレオ」も同様で、岸谷も前任者の内海刑事(柴咲コウ)も仄かな思いを寄せているが、湯川の心を掴めない。美男美女が演じるちょっぴり痛い純愛に、新鮮さを覚える人が多いのだろう。

 <女より数式>がテレビドラマでの湯川で、「感情なんて関心がない」と言い切るが、映画になるとキャラが変わる。「容疑者Xの献身」に続き、「真夏の方程式」でも湯川は事件に関わった者たちの心に潜り込む。その語り口や気遣いに杉下が重なった。

 <善悪の彼我>と<罪と罰>を追求した点で、俺は「容疑者Xの献身」より「重力ピエロ」(森淳一監督)を評価していた。湯川は前作で<法を超えた真理>と葛藤したが、愛、自己犠牲、悔恨に満ちた「真夏の方程式」に、余韻が去らない解を提示する。杏、前田吟、風吹ジュン、白竜、塩見三省らの熱演も見事だった。

 人間には限られた時間しかないから、ミステリーは原作を読まず、映像で楽しむことに決めている。東野圭吾、横山秀夫、伊坂幸太郎、誉田哲也らの作品の映画化、ドラマ化を心待ちにしている。
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