酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

京都から憲法記念日に寄せて

2017-05-03 21:13:22 | 社会、政治
 ゴールデンウイークはいつも通り、従兄弟宅(寺)に泊まって母が暮らすケアハウスを訪ねる日々だ。普段は見る機会のないワイドショーでは、多くの時間を割いて藤井聡大四段を紹介している。明日の新人王戦(対局者は横山大樹アマ)の結果も大きく取り上げられるだろう。霞んだ感のある名人戦第3局は、稲葉陽八段が116手で制して2勝1敗とリードした。佐藤天彦名人にとって、後手で迎える次局が正念場になった。

 憲法記念日の今日、あちこちでそれぞれの立場からイベントが開催された。安倍首相は、2020年の改憲施行を目標に掲げた。ビデオメッセージでは奇麗事を並べていたが、国民の権利を制限する項目も俎上に載せられている。自民党が地位を押し上げたい皇室を、リベラルや左派が改正ストッパーに期待するという捻れが現出している。

 <現憲法はGHQのお仕着せ>という改憲派の金科玉条がまやかしであることは、「日本近現代史入門」(広瀬隆著)を紹介した別稿(4月21日付)で記した通りだ。公募によって採用されたのは「憲法研究会」(高野岩三郎、鈴木安蔵)が作成した草案だった。吉田茂、緒方竹虎らファシストが企てた自由化阻止はGHQによってことごとく否定され、同志だった白洲次郎は新憲法についての苛立ちを日記に綴っている。

 映画「日本国憲法」(05年、ジャン・ユンカーマン監督)は、憲法を論じるための格好のテキストだ。自由と人権を尊重した憲法研究会の草案がGHQにインパクトを与えたことが、複数の証言によって明かされている。ちなみに憲法研究会に影響を与えたのが、色川大吉(民衆史を提起した歴史学者)が発掘し、美智子皇后が言及した五日市憲法(1881年起草)である。

 俺もそのひとりだが、硬直した護憲派の現状に疑問を覚えている。三宅洋平について「彼は改憲派だろ」と斬り捨てた護憲派がいた。三宅は環境、生物多様性などを考慮して加憲の必要性を説いているが、現憲法の精神を高く評価している。自民党の改憲草案をボツにしたいのなら、公明党を引き寄せるしかないが、<自公=改憲派>と敵視している点にも納得がいかない。条文の全てがアンタッチャブルなのではなく、肝心なのは精神である。

 憲法を達成目標と捉える内田樹は、「憲法の『空語』を充たすために」で以下のように記していた。<護憲というのは、あるいは立憲主義というは、憲法は国の最高法規だから守らなくてはいけないという静止的な話ではない。最高法規に相応しい重み、厚み、深みをいかに加えていくかの力動的活動が求められる>……。柄谷行人は「憲法の無意識」で、<護憲派が憲法を守っているのではなく、9条によって護憲派が守られている>と述べていた。

 <9条と死刑は同じ文脈で捉えるべき>との持論を仕事先の夕刊紙記者に披瀝したところ、「初めて同じ意見の人に会いました。お互い少数派ですね」と返ってきた。「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」(15年)でも描かれていたように、〝死刑廃止こそ民主主義の第一歩〟が先進国の常識だが、日本では通用しない。世界の目を気にする自民党の一部には、「(欧米からメディアが押し寄せる)2020年に向け、死刑廃止の議論を起こすべき」という声があるという。アリバイ作り、ポーズの類いに相違ないが……。

 憲法の根幹である自由の価値が、この国では右肩下がりだ。普段はリベラル風に見せているが、組織に縛られ、身近の理不尽を看過している者も多い。集団化が下から進行し、安倍政権を下支えしている。アメリカの赤狩りは原子力産業と軌を一にしてスタートしたが、日本において原発が自由の最大の阻害要因であることは、3・11後の出来事が証明している。

 4月29日、除染作業が進んでいない浪江町の山林で火事が起きた。関東甲信越、東海地区まで放射性物質が飛来した可能性が高いが、なぜか速報のみで終わった。「放射能はアンダーコントロール」と宣言して誘致した東京五輪に合わせ、安倍首相は憲法改正を目指している。暗澹たる気分に沈んだ憲法記念日だった。
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