酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

希望と勇気~2つのトークイベントで感じたこと

2016-12-24 20:17:38 | 社会、政治
 今週、足を運んだ2つのトークイベントの感想を以下に記したい。まずは、高坂勝さんの「次の時代を、先に生きる。」(ワニブックス)の刊行記念イベント(19日、八重洲ブックセンター)から。

 佐々木典士さん(担当編集者、ミニマリスト)の後、髙野孟さんが登場する。高坂さんは匝瑳、髙野さんは鴨川で農業に従事し、NGOを立ち上げ、移住者を支援している。高坂さんは前共同代表、髙野さんは設立時(2012年)からの支持者と、緑の党と縁が深い。ともに脱GDP、反グローバリズム(ローカリゼーション)を実践しているから、噛み合ったトークが続いた。

 髙野さんは旧民主党結成時(1996年)、多極分散、自立と協働、オルタナティブな循環型社会を見据えた未来志向の綱領を書いたが、新民主党→民進党に移行する過程で、崇高な理念は霧消した。緑の党を自身の理念の継承者と捉えていることが言葉の端々に窺えたが、あの場にいた会員は高坂さん以外、俺だけだった(恐らく)。

 質疑応答に入り、<地方移住、ダウンシフト、ミニマリズム、脱成長はアメリカや日本でも浸透しているが、目に見えるうねりにする方法は?>と質問した。髙野さんは<政治への回路は塞がっているが、希望はある。サンダースが民主党候補だったら草の根の変化を吸収出来ただろう>(要旨)と答え、時代閉塞を打破するため、サンダース来日を企画していることを明かされた。

 高坂さんと話す機会は多いが、今回のイベントで、髙野さんの奥深さ、慧眼を知ることが出来た。髙野さんが3・11直後、レギュラー番組を降ろされた経緯も興味深かった。原発の危険性を主張した髙野さんは、広告代理店の指示でレッドカードを出された。メディアの偏向を正すなら、〝真の独裁者〟に刃を向けるしかない。

 翌20日に開催された「自主避難者によるお話会~原発避難、いじめ、住宅支援打ち切り問題などを巡って」(高円寺グレイン)は心に刺さるイベントだった。報告者のKさんは2人の子供と東京に移り、福島で仕事を続けていた夫も後に続く。実名を明かせないのは、反応が怖いからだ。ネット上で意見や経緯をアップすると、反応の9割以上は凄まじいバッシングになる。Kさんも仕事先で「税金泥棒」という罵声を浴びたことがあったという。

 Kさんの声は終始潤み、聞く者の心を濡らす。子供の体内被曝を最低限にとどめるため、Kさんは移住を決意した。だが、<体内被曝などなく、自主避難は不要>が広告代理店、メディア、東電らの意を酌んだ国の方針だ。ネットで形成される民意の底にあるのは、<強者に隷従し、弱者を打つ>という奴隷根性だ。そこまでいかなくても、お上(国や会社)の方針に逆らうのは無意味と信じる飼い犬が幅を利かせている。森達也氏が指摘する通り、日本の最大の課題は、アメリカ化でも保守化でもなく、集団化だと思う。

 集団化の最悪の形としてのいじめが、自主避難者の子供たちを全国で苦しめている。政治が弱者を打ち、いじめられた大人が異議を唱えない現状で、子供だけに<正義>を求めるのは間違いだ。教育委員会に自由な発言を封じられた中、解決を試みる教員がいることを知って少し安心した。

 来年3月末、政府は自主避難者への住宅無償貸与を打ち切るが、自治体によって対応が異なる。北海道や山形に続き、神奈川も期限延長を決めたが、東京都の対応は最悪だ。避難者宅を訪れた職員は開いたドアに足を挟み、ヤクザまがい、いや暴対法下ではヤクザの方がおとなしいと思えるような恫喝を繰り返す。職員の歪んだ表情は、小池知事の冷酷さの反映といっていい。

 Kさんの報告は、政治の無為を穿っていた。傘下に置こうと引き回す某党が、結果として避難者の分裂を招いているという。彼らの側で涙を流してくれる政治家は、福島瑞穂、山本太郎両議員ぐらいだ。Kさんを取材した朝日新聞記者は元東電社員で、彼女の意図を意識的に歪めた記事を掲載した。3・11後、<体内被曝は全く問題がない>と福島に招かれて主張した山下俊一氏に「日本がん大賞」を授与するなど、朝日新聞の罪深さに愕然とさせられる。ちなみに山下氏は七三一部隊に連なる人脈に属している。

 質疑応答の時間で、冒頭に記した高坂さんと髙野さんの試みを紹介し、<東京でも福島でもない第三の場所に移住し、新たなコミュニティーの一員になるという考えはありますか>と聞いたが、「早くから移った人はいるが、自分は厳しい」とKさんは答えた。

 自主避難者の問題は、環境と健康という生存権に繋がっており、格差と貧困にもリンクしている。オスプレイなどの武器購入や五輪予算をわずかでも削れば解決する点もあるが、Kさんたちの声を受け止める政治の回路は閉ざされている。

 老い先短い俺の目標は<人を繋ぐ>だが、自分の無為と無力を嘆くばかりだ。このブログの読者がもう少し多かったらとも思うが、力不足ゆえ仕方ない。希望と勇気に心震えたイベントに参加出来たことを、自分を変えるきっかけにしたい。


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