酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

ライブ納めは友川カズキ~ナイーブな荒ぶる魂に魅せられた

2016-12-20 22:50:08 | 音楽
 20~40代は月に5枚以上、ロックの新譜を購入していたが、還暦にもなるとアンテナは錆び、新規開拓は難しい。俺の中で最後のムーヴメントは、数年前の米インディーシーンの隆盛だった。ダーティー・プロジェクターズ(DP)の初発来日公演(10年3月)、4カ月後のフジロック(オレンジコート)での神々しいパフォーマンスに圧倒される。

 同年のフジ(ホワイトステージ)では、日本盤発売前のローカル・ネイティヴズ(LN)が鳴り物入りで登場した。両バンドはメンバーが担当楽器を次々に替え、全員でハーモニーを奏でる。オルタナティヴ、開放的、祝祭的な志向に共感し、未来のヘッドライナーと確信した。ところが2年後、バンドの中の力学が確立したのか、DPからフレキシブルで自由なムードが消えていた。同期生のグリズリー・ベアは、既に活動を停止している。

 インディー勢が停滞する中、今年はビッグネームが新譜を次々にリリースした。<レーベル=広告代理店=プロモーター>と〝利益共同体〟を形成するメディアは絶賛するが、聴いてみると「?」という作品も多々ある。サンプルが少ないので説得力はないが、今年のベストアルバム5枚を選んでみた。

 まずは、デヴィッド・ボウイの遺作「★」。キャリア半世紀を経ても、ベルリン3部作(1976~79年)に比べてもクオリティーは劣らない。ボウイの創造性に感嘆した。次に挙げるのはデビュー25年、いまだ進化と深化を続けるPJハーヴェイの「ザ・ホープ・シックス・デモリッション・プロジェクト」は、ロックの境界線を押し広げた意欲作だ。来年1月の日本公演(オーチャードホール)が楽しみだ。

 LNの3rd「サンリット・ユース」はメディアにスルーされたが、心に染みる純水のようなメロディーは健在だ。驚嘆させられたのは、ロックの初期衝動を甦らせたMitskiの「PUBERTY2」である。Mitskiは日本生まれで、アメリカ人とのハーフという。PVも刺激的だ。

 もう一枚は友川カズキの「光るクレヨン」で、発売記念ライブでもある「オルタナミーティングvol10」(18日、阿佐ヶ谷ロフト)に足を運んだ。テレヴィジョン&ルースターズ、ステレオフォニックス、モリッシー、PANTA、ブロンド・レッドヘッド、マニック・ストリート・プリーチャーズと続いたラインアップの掉尾を飾るに相応しい濃密な3時間だった。

 昨年より動員力はアップし、立ち見の出る盛況ぶりだった。20~30代が目立ち、平均年齢は一気に下がっていた。友川は66歳にして新しいファンを開拓している。オープニングアクトは等身大の目線で真情を吐露する五十嵐正史とソウルブラザーズだ。友川は彼らを「真人間」と評し、「私は今更、あんな風になれない」と語って笑いを取っていた。 

 道端に佇む男に言葉の礫を投げつけられ、血は出ないのに、痛みが心に広がっていく……。回りくどいが、友川の存在感を表現すればこんな感じか。怜悧で熱く、自虐と諦念に満ちた詩は、モノトーンでありながら、カラフルな文化の薫りが漂っている。接近戦で世界に挑んでいるから、言葉に嘘はない。

 友川の名作「ワルツ」を歌った火取ゆき挟み、アンコールを含めれば3部構成で友川のステージが続く。新作からタイトル曲、「愉楽」、「『楕円の柩』アラカルト」らを弾き語ったが、ハイライトは「三鬼の喉笛」で、ソウルブラザーズと山崎春美が登場し、迫力あるセッションを繰り広げた。

 詩、小説、映画、絵画に造詣が深い友川は、様々な表現者からインスパアされたことを明かして歌いだす。今回のライブでも、ビクトル・エリセ、谷川雁、吉村昭らの名を挙げていた。客席に愛読している平松洋子がいて、目を泳がせながらシャイに語り掛けていた。「どこに出しても恥ずかしい人」、「下には下がいることに安心して帰ってください」といった偽悪的、自虐的なMCに、言葉のままの俺は共感していた。

 ヘビースモーカー、飲んだくれ、ギャンブル中毒(特に競輪)の友川は、〝人間失格〟を自任し、底から社会に切り込む。今回のMCでは安倍首相、オスプレイ、マイナンバー、原発、民進党、禁煙ファシズム、米ソ首脳、日和り出した鹿児島県知事を一刀両断し、独裁国家日本を憂えていた。

 比類なき存在感は、ミュージシャンから俳優に転じた泉谷しげるやピエール瀧に劣らない。地のままでも演技者になれると思っていたが、ウィキペディアによると、大島渚は「戦場のメリークリスマス」のヨノイ大尉役にオファーを出したという。秋田訛りを理由に断ったことで坂本龍一が演じた。

 友川は競輪グランプリに向け、妄想の世界にこもるという。はるかに軽症のギャンブル中毒者の俺も、有馬記念を的中させていい年を迎えたい。サウンズオブアースを軸に買うつもりでいる。
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