酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

「すべての政府はウソをつく」&「紛争の地から声を届けて」~<沈黙のクーデター>から世界を取り戻せるか

2017-12-08 13:16:36 | 社会、政治
 羽生善治棋聖が渡辺明竜王を破り、全7冠永世位を獲得した。右脳と左脳をフル稼働し、直感と論理で研ぎ澄まされた手を指す羽生は、トップクラスのAI研究家(著書2冊)でもある。夭折した村山聖9段の鮮烈な生き様を描いた映画「聖の青春」(大崎善生原作)で印象に残ったのは、二人が打ち上げを抜け出して酌み交わすシーンだ。

村山「羽生さんが見ている海は他の人と違う」
羽生「深く沈み過ぎて、戻れないと思うこともあります。でも、村山さんとなら一緒に行ける。行きましょう」
 人跡未踏の高みを見据える羽生の旅はまだ終わらない。

 カナダ映画「すべての政府はウソをつく」(BS1/オリバー・ストーン製作総指揮)と「紛争の地から声を届けて」(ETV)は、数回分のブログが必要なほど濃密な内容だった。「すべての――」は3度目のオンエアで、「紛争の地から――」はあす9日午後1時に再放送される。機会があればご覧になってほしい。

 〝すべての政府はウソをつく〟を端的に示すのは森友・加計問題だ。「報道の自由度」72位の日本はともかく、アメリカでは多くのフリージャーナリストが奮闘している。I・F・ストーン(1989年没)は赤狩りを主導したマッカーシー上院議員や歴代大統領に牙を剥いてきた。ジョンソン大統領がベトナム介入の目的でデッチ上げた「トンキン湾事件」の真実を暴いている。

 本作では、ストーンの衣鉢を継ぐマット・タイビ(「ローリングストーン」誌寄稿者)、エイミー・グッドマン(「デモクラシー・ナウ!」設立者)ら反骨のジャーナリストの活動を描き、ノーム・チョムスキー、マイケル・ムーア、ウィキリークス、エドワード・スノーデンも同志として登場する。

 ジョン・カルロス・フレイの報告は衝撃的だった。トランプが「メキシコとの国境に壁を」と訴える前から、悲惨な出来事が起きていたのだ。国境沿いのテキサス州の町で不法移民200人が集団埋葬されていた。経緯は不問とされ、検視報告はずさんだが、メディアは一切伝えない。行方不明の入国者は1万人を超えるという。

 「デモクラシー・ナウ!」のボランティアからキャリアをスタートしたジェレミー・スケイヒルのコメントが、アメリカの真実を抉っている。<誰が大統領になろうが帝国はビクともしない。国家中枢を動かす暴力的軍隊が取り澄ました自由市場を守っている。かつて沈黙のクーデターが起き、企業が政治をコントロールする仕組みが完成した>(論旨)……。トランプの陰に隠れているが、オバマやヒラリー・クリントンもまた、暴力装置の操り人形として描かれていた。

 「紛争の地から声を届けて」はイスラエルの「ハアレツ紙」女性記者、アミラ・ハスの来日に合わせて制作された。聞き手を務めた徐京植氏(東経大教授)に、40年前の記憶が甦る。徐氏の2人の兄については別稿の枕で記したい。

 オンエア(早朝5時)を知ったのは、武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)杉原浩司代表が緑の党のMLで告知してくれたからだ。講演会(東大)で杉原さんが大写しになっていたのは、ガザ無差別空爆への抗議集会で主要な役割を担っていたことから当然といえる。

 在日朝鮮人の徐氏は、自身を<ディアスポラ=離散者>と規定し、<パレスチナに存在する分離壁は20世紀以降、世界で進行した不正義の象徴>とハス記者に問い掛ける。<現在のイスラエルはアパルトヘイトと同じ構図>と主張するツツ大主教らと認識を共有しているのだ。

 ハス記者の原点は、ホロコーストを生き抜いた母、ゲットーで3年半暮らした父の体験にある。アイデンティティーを求めてイスラエルに移住した両親はディアスポラのままだった。ユダヤ人が国家として被害者意識を反転し、パレスチナを弾圧する矛盾に、ハス記者、そして両親は苛まれた。

 徐氏はハス記者の両親にフリーモ・レーヴィを重ねる。アウシュビッツを生き延び、ホロコーストの記憶を綴る作家だったレーヴィは1987年、自殺に追い込まれる。レバノンに侵攻したイスラエル軍が難民キャンプに暮らすパレスチナ人を虐殺した暴挙に、レーヴィはナチスの影を見て抗議した。ユダヤ人コミュニティーで孤立し、脅迫を受けた結果、自殺に至ったと徐氏は考えている。

 ガザ空爆の際、多くのイスラエル人は着弾する度に歓声を上げ、乾杯した。収容所で音楽を楽しんだナチス将校と変わらぬ精神的頽廃だが、その光景を報じたCNN記者は翌日、解雇された。スケイヒルが示した<沈黙のクーデター>には、もちろんメディアも加担している。

 ハス記者は来日した際、福島、広島、そして沖縄を訪れた。いずれもパレスチナと深く繋がっている場所である。<連帯>は死語かもしれないが、<沈黙のクーデター>から世界を取り戻す唯一の手段に思えてくる。

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