酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

共謀罪に至る道程~歳月をかけて摘まれた自由

2017-05-19 12:11:38 | 社会、政治
 昨日は「柳家小三治独演会」(調布グリーンホール)に足を運んだ。「長短」と「粗忽長屋」を演じたが、名人も77歳、以前と比べ声の艶がなくなった気がする。それでも芸術的な間は健在で、満員の会場から笑いの渦が起きていた。話芸だけでなく〝人間小三治〟をファンは愛しているのだろう。枕で安倍首相に触れようとしたが、「皆さんも私も腹が立つだけなので、やめておきます」と短く結んだ。
 
 老若男女が皇族の婚約を喜んでいるなんて虚構に過ぎない。インタビューに冷ややかに答えた人の映像はカットされているからだ。<みんなが……>という空気を蔓延させるメディアのレベルは、北朝鮮やタイと大差ない。<放射能はアンダーコントロール>という大嘘を前提に東京五輪開催が決まった時も、祝賀ムード一色だった。

 秘密保護法、戦争法との3点セットというべき共謀罪が衆院本会議を通過する。自身が深く関わる森友&加計問題で新事実が続々明らかになり、安倍首相が目指す憲法改悪が頓挫する可能性も出てきた。麻生副総理を軸にした派閥合流、旧経世会の動きなど〝1強〟を揺さぶる動きの陰に、財務省の意向を指摘する声もある。安倍首相の国家私物化、利益誘導は甚だしいが、<ポスト安倍=麻生副総理>という漫画チックな予想に愕然とする。

 共謀罪については、<オリンピックを無事に開催するため>という刷り込みが功を奏したのか、肯定的な国民も多い。安倍首相の「パレルモ条約批准のため共謀罪は必要」との答弁は、十八番の詭弁である。同条約の立法ガイドを書いたニコス・パッサス教授は「報道ステーション」(16日放映)のインタビューで、「パレルモ条約はテロ対策ではなく、利益を追求する組織犯罪を対象にしたもの。共謀罪は同条約と無関係」と断言していた。

 「こんな時、おまえは何をしている」というお叱りに返す言葉もない。仲間や知人は共謀罪への抗議に取り組んでいるが、俺は変わらぬ日常を享受している。<共謀罪成立で監視社会がスタートする>との声に、俺は自問自答している。「日本はこの間、本当に自由だったのか」と……。

 1970年代後半、学生だった俺の目に、クラスメートが〝見えない力〟に怯えていると映った。社会の矛盾に敏感だった俺は、といっても典型的スキゾゆえ、自由で縛られないことが前提だったが、政治に向き合い、硬軟取り混ぜ署名を集めることもあった。反応はといえば、「趣旨には賛同するけど、署名したことが警察に漏れたら、確実に企業に流れる。絶対に就職できない」という冷淡なものだった。大学、そして社会は40年前から自由ではなかったのである。

 引きこもり気味のフリ-ターを経て1984年、メディアの端くれに潜り込んだ。会社(平均年齢30歳前後)で研修が企画され、数十人が三々五々、徒歩数分の区民館に向かう。すると会社に翌日、警察から確認の電話が入った。反核か何かの集会を間近に控えていたことも理由だろうが、言論の自由を脅かす共謀罪は30年前に〝施行〟されていた。

 1998年、江沢民中国主席が早大・大隈講堂で講演した際、参加者の名簿が大学当局から警察に流れていたことが世間を賑わせた。たまたま発覚しただけで、同様のチェックは全国津々浦々で起きていたに違いない。高村薫の「マークスの山」(93年)では、主人公(合田刑事)の妻が反原発運動に加わったことで招いた事態が描かれている。

 監視社会の雛型を作ったのは〝日本のアンドロポフ〟こと後藤田正晴だ。田中角栄に引き立てられた後藤田は徳島で、日本の政治家で最も自由に理解が深かった三木武夫元首相と三角代理戦争を展開する。落選した参院選では史上最悪の選挙違反を引き起こした後藤田が晩年、〝護憲派のシンボル〟として崇められた点に納得がいかない。

 30代、40代を悔いても仕方ないが、俺は約20年、集団に埋没していた。俺だけでなく、所属する職場やコミュニティーで抑圧が進行していても、抗議の声を上げたり、改善策を提示したりする人は少数だった。看過し沈黙することで、自由は削られ、摘み取られてきた。その積み重ねが共謀罪といえる。

 憲法9条はどうか。この四半世紀、PKO法、周辺事態法、テロ特措法、有事3法&イラク特措法、そして小泉元首相によるイラク派兵と段階を経て、関連する法律も整備され、憲法9条は蝕まれてきた。安倍政権下による戦争法→憲法改悪は、流れに沿った必然の帰結に見えてくる。星野智幸は「戦争を必要とする私たち」(01年発表、「未来の記憶は繭のなかで作られる」収録で、<国旗国歌法が誕生し、通信傍受法が成立し、日米防衛のためのガイドラインが改訂された1999年を右傾化元年と捉えている>と記している。

 自分の殻にこもり、ペシミスティックに風雨を避けたい気分になるが、まだ希望を捨てていない。都議選では、自由の気風が社会に浸潤するための〝蟻の一穴〟に期待し、全選挙区で唯一の市民派候補を支援する。おいおいブログでも記していきたい。
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