小島貞博調教師が亡くなった。厩舎経営に行き詰まった末の自殺という。冥福を心から祈りたい。格差が著しい競馬界で、小島師同様の苦悩を味わっている関係者は少なくないはずだ。小島貞師は騎手時代、師匠の故戸山師、兄弟子の鶴留師と強い絆で結ばれ、それぞれの管理馬(ミホノブルボン、タヤスツヨシ)でダービーを制した。世紀が変わるや義理人情は廃れ、市場原理が競馬界を闊歩している。
POGに興じる俺に、酷薄な現状を憂うる資格はない。栄華を極める社台軍団の血統馬(サンデーサイレンス系)をいかにチョイスするかが、POGの肝なのだ。<やせ蛙 負けるな一茶 ここにあり>なんて心持ちで臨んだら、自分がやせ蛙になってしまう。競馬は今やロマン、夢、奇跡、ときめきと無縁のマネーゲームなのだろう。ならば、ギャンブルとして接するしかない。
「哀しき獣」(ナ・ホンジン)、「ヒミズ」(園子温)を近いうちに映画館で見る予定で、先週末はそれぞれの監督の旧作を録画で観賞する。「チェイサー」(08年)と「愛のむきだし」(09年)の感想を以下に記したい。
韓国映画には時折、悪魔が現れる。「殺人の追憶」、「母なる証明」(ともにポン・ジュノ監督)が典型だが、現実の事件を基に製作された「チェイサー」の連続殺人犯ヨンミン(ハ・ジョンウ)も悪魔そのものだ。ヨンミンと対峙するのが、元刑事でデリヘル経営者のジュンホ(キム・ユンソク)だ。
管理する女性たちが次々に消え、ミジンまで失踪する。犯罪の匂いを嗅ぎつけたジュンホは早い段階でヨンミンに接近し、追跡を開始する。暗い過去を秘めたジュンホ、昏い欲望に衝き動かされたヨンミン……。二人は闇の中、心の闇を燐光のように発しながら、夜の街を駆け抜ける。
根源的な悪に迫り、残酷なシーンも多い。警察組織の硬直も描かれていたが、「アジョシ」を彷彿させるジュンホとミジンの娘の交流が救いだった。ラストのソウルの夜景に、微かな希望が灯っていた。
「愛のむきだし」にはノックアウトを食らった。4時間弱の長編は荒唐無稽で破綻だらけだが、パワフルでかつ壮大だ。公開時、映画館で見ていたらと悔やんでしまう。テクニカルな面でいうと、3作目にして園監督の<繰り返しの美学>に気付いた。
「冷たい熱帯魚」の村田(でんでん)、「恋の罪」の美津子(冨樫真)が園監督作に現れる悪魔の化身だが、「愛のむきだし」ではコイケ(安藤サクラ)がその役割を担っていた。主人公のユウ(西島隆弘)、義妹になるヨーコ(満島ひかり)、上記のコイケはそれぞれ屈曲し、殺伐とした青春を送っている。
神とは、愛とは、欲望とは、罪とは、罰とは……。奥深いテーマと向き合わざるを得ない3人が宿命的に同じ坩堝に放り込まれ、業火に身を焦がす。ヨーコが新約聖書の一節を諳んじるシーン、ラストでユウたちが背負う十字架、不良たちの乱闘、盗撮、AVといったチープな味付け……。神聖さと俗っぽさが混ざり合う作品のイメージを簡潔に表現すれば、ユウが流した<血のように純粋な涙>だ。
クライマックスでは、タイトル通り愛がむきだしになる。狂うほどのユウの思いは果たしてヨーコに通じるのか……。ふたりの安息の地は現世に存在するのか……。喉に手を突っ込まれ、心をわし掴みされた本作に、「ヒミズ」への期待が高まるばかりだ。ゆらゆら帝国の主題歌「空洞です」も映像にマッチしていた。既に解散したバンドらしいが、CDを買いたくなった。









POGに興じる俺に、酷薄な現状を憂うる資格はない。栄華を極める社台軍団の血統馬(サンデーサイレンス系)をいかにチョイスするかが、POGの肝なのだ。<やせ蛙 負けるな一茶 ここにあり>なんて心持ちで臨んだら、自分がやせ蛙になってしまう。競馬は今やロマン、夢、奇跡、ときめきと無縁のマネーゲームなのだろう。ならば、ギャンブルとして接するしかない。
「哀しき獣」(ナ・ホンジン)、「ヒミズ」(園子温)を近いうちに映画館で見る予定で、先週末はそれぞれの監督の旧作を録画で観賞する。「チェイサー」(08年)と「愛のむきだし」(09年)の感想を以下に記したい。
韓国映画には時折、悪魔が現れる。「殺人の追憶」、「母なる証明」(ともにポン・ジュノ監督)が典型だが、現実の事件を基に製作された「チェイサー」の連続殺人犯ヨンミン(ハ・ジョンウ)も悪魔そのものだ。ヨンミンと対峙するのが、元刑事でデリヘル経営者のジュンホ(キム・ユンソク)だ。
管理する女性たちが次々に消え、ミジンまで失踪する。犯罪の匂いを嗅ぎつけたジュンホは早い段階でヨンミンに接近し、追跡を開始する。暗い過去を秘めたジュンホ、昏い欲望に衝き動かされたヨンミン……。二人は闇の中、心の闇を燐光のように発しながら、夜の街を駆け抜ける。
根源的な悪に迫り、残酷なシーンも多い。警察組織の硬直も描かれていたが、「アジョシ」を彷彿させるジュンホとミジンの娘の交流が救いだった。ラストのソウルの夜景に、微かな希望が灯っていた。
「愛のむきだし」にはノックアウトを食らった。4時間弱の長編は荒唐無稽で破綻だらけだが、パワフルでかつ壮大だ。公開時、映画館で見ていたらと悔やんでしまう。テクニカルな面でいうと、3作目にして園監督の<繰り返しの美学>に気付いた。
「冷たい熱帯魚」の村田(でんでん)、「恋の罪」の美津子(冨樫真)が園監督作に現れる悪魔の化身だが、「愛のむきだし」ではコイケ(安藤サクラ)がその役割を担っていた。主人公のユウ(西島隆弘)、義妹になるヨーコ(満島ひかり)、上記のコイケはそれぞれ屈曲し、殺伐とした青春を送っている。
神とは、愛とは、欲望とは、罪とは、罰とは……。奥深いテーマと向き合わざるを得ない3人が宿命的に同じ坩堝に放り込まれ、業火に身を焦がす。ヨーコが新約聖書の一節を諳んじるシーン、ラストでユウたちが背負う十字架、不良たちの乱闘、盗撮、AVといったチープな味付け……。神聖さと俗っぽさが混ざり合う作品のイメージを簡潔に表現すれば、ユウが流した<血のように純粋な涙>だ。
クライマックスでは、タイトル通り愛がむきだしになる。狂うほどのユウの思いは果たしてヨーコに通じるのか……。ふたりの安息の地は現世に存在するのか……。喉に手を突っ込まれ、心をわし掴みされた本作に、「ヒミズ」への期待が高まるばかりだ。ゆらゆら帝国の主題歌「空洞です」も映像にマッチしていた。既に解散したバンドらしいが、CDを買いたくなった。


















