酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

1975、ブロッサムズ、リップス、そしてDP~錆びついた心身をロックで磨く

2017-03-20 23:09:26 | 音楽
 山城博治氏(沖縄平和運動センター議長)が釈放された。アムネスティ・インターナショナル(本部ロンドン)が展開したキャンペーンも功を奏したのではないか。安倍政権はオリンピックを控え、<弾圧国家>の本質を暴かれることを避けたいのだろう。重い病(悪性リンパ腫)とも闘う山城さんの健康を祈りたい。

 今月上旬、「柳家三三と春風亭一之輔の二人会」(渋谷・さくらホール)終演後、階段から落ちて全身を打ったことは別稿(3日)で記した通りだ。治りが遅く、今も接骨院で左手の治療を受けている。体以上に著しいのは脳の劣化だ。方向音痴に磨きがかかり、記憶力の低下は絶望的だ。30年前、両親は何度目かの「刑事コロンボ」を心から楽しんでいたが、血は争えない。今の俺も「相棒」や「名探偵コナン」の再放送を新鮮な気持ちで見ている。

 ボケ防止を意識しているわけではないが、映画、文学、落語に親しみ、将棋や麻雀の対局番組を見ている。まるでホバリングするハチドリのようだが、心、頭、体の錆びは削げない。ロックの効能に期待し、昨年から今年にかけてリリースされた4枚のアルバムを購入した。

 英米音楽誌で昨年度のベストアルバムと評価されているのがThe1975(英)の2ndアルバムである。「君が寝てる姿が好きなんだ。なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気がついていないから」の長いタイトルが、作品のムードを物語っている。初々しい恋人たちの心情、瑞々しい感性、好奇心が込められた75分に及ぶ大作で、俺にとって回春剤のようなアルバムだった。

 ロックを聴く者はピート・タウンゼント(ザ・フー)が言い当てたように、死ぬまで<10代の曠野>を彷徨している。俺もそのひとりで、還暦を過ぎても情けないほど蒼い。初期衝動、繊細さに満ちたアルバムとして感応したのはヴァインズの「ウィキット・ネイチャー」(14年)以来だ。The1975の音はクチクラ化した俺の血管に、純水のように染み渡っていく。

 煌めくポップという点でThe1975の2ndに引けを取らないのがブロッサムズ(英)のデビューアルバムだ。連想したのはプリファブ・スプラウト、ペイル・ファウンテンズ、アズテック・カメラといった80年代のネオアコバンドでノルタルジーに浸ったが、聴き込むうちに印象が変わってくる。上記のバンドには陰り、捻れがあったが、ブロッサムズは色調が異なる。キャッチーかつメロディアスを志向しつつ、ブルートーンズを彷彿させる骨格が窺えた。

 いきなり年齢が上がるが、56歳のウェイン・コインが率いるフレーミング・リップス(米)の新作「オクシィ・ムロディ」を聴いた。ウェインが「遠い未来に作られた宗教音楽」と評した前作「ザ・テラー」は全く売れなかったが、妖しい雰囲気のアシッドロックだった。かつてのリップスは様々な意趣と加工が施す<音の彫刻>を提示してきたが、新作は潜在意識を刺激するシンプルな作りといえる。

 リップスについて、当ブログでも何度も紹介してきた。<メロディーとノイズ、開放感と閉塞感、浮揚感と下降感覚、前衛とエンターテインメント……。数々のアンビバレンツを内包するのがリップスの魅力>と評したが、本作もそのまま当てはまる。

 リップスの魅力が最大限、発揮されるのは祝祭的でマジカルなライブだ。彼らの後を継ぎ、フェスのヘッドライナー級に成長するのではと期待していたのがダーティー・プロジェクターズ(米、以下DP)である。バンド名を冠した新作は本年度のベストアルバム候補に挙げられる出来栄えだが、俺の心にはレクイエムと響いた。

 DPはそもそもデイヴ・ロングストレスのソロユニットとしてスタートしたが、「ビッテ・オルカ」(09年)の頃には7人編成になっていた。育ちの良さそうな美男美女が全員でハモり、担当楽器を変えて演奏する。オルタナティブ、ボーダレスを体現する彼らにロックの未来を感じたが、前作「スウィング・ロー・マゼラン」(12年)以降、シーンから消え、原点(デイヴのソロユニット)として復帰した。

 1980年代、3枚の傑作を発表したスクリッティ・ポリッティも天才ソングライター、グリーン・ガートサイトのソロ名義だったが、DPも同じ道を歩むのだろうか。デイヴは新作のテーマを「別離」とか「失恋」とか語っている。バンド内の色恋沙汰が想像されるが、傷が癒えたらバンド活動を再開してほしい。秀才(エール大卒)の35歳のエリートもまた、<10代の曠野>の放浪者なのだろうか。

 シガー・ロスの来日公演(8月1日、東京国際フォーラム)のチケットをゲットした。還暦過ぎのジジイにとって、冥土の土産になりかねないが……。
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