酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

ミューズ@横浜アリーナ~エンターテインメントと世界観の鮮やかな融合

2017-11-16 22:37:52 | 音楽
 一昨日(14日)、横浜アリーナでミューズを見た。新作発表を来年に控えたエクストラツアー(フェスを含む)の一環なのだろう。主力は20~40代だが、俺に近いアラカンの客もチラホラ見かけた。

 デビュー直後(1999年)に彼らを認めたのが「ロッキング・オン」誌で、<今回のステージは、スピード感と洗練度、そしてエンターテイメント度においてピカ一ではないか>との渋谷陽一社長の評は的を射ている。10代前半にバンドを結成してから四半世紀、SMAPは壊れたが、マシュー・ベラミー、ドミニク・ハワード、クリス・ウォルステンホルムの3人は今も強い絆で結ばれている。

 ショーケースライブ(2001年)はガラガラだったし、翌年のZEP東京も満杯ではなかった。それでもマシューは、好きな女の子に自分の全てを伝えようとする少年のように熱かった。過剰なまでのサービス精神こそ、成長の糧だと思う。

 ♯1「ディッグダウン」、♯2「サイコ」、♯4「ヒステリア」、♯5「プラグ・イン・ベイビー」、♯7「ストックホルム・シンドローム」、♯8「スーパーマッシブ・ブラックホール」までタイトで尖った流れに圧倒される。♯11「マッドネス」、♯15「タイム・イズ・ランニング・アウト」、♯16「マーシー」と人気チューンが続き、マシューは♯14「スターライト」で客席に降りてスキンシップした。

 不惑直前にはきついはずだが、外国人がコンサート評を書き込む際の締めの常套句“as usual”そのまま、超絶のパフォーマンスを普通にやってのける。酷な連戦を厭わぬボクサーの如く、不断の鍛錬に支えられているからだ。公式、非公式問わずアップされたライブ映像でファンを増やすミューズは。はYoutube時代の申し子といっていいだろう。 

 フジロック07に出演した際、ミューズはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンに受けた影響を強調し、その後の3枚のアルバムで<世界観>を提示した。レイジ20周年記念フェス「LAライジング」に招請されたことを「キャリア最高の出来事」とマシューは語っていた。ラディカルでコアなレイジのファンにも高い評価を受けた。
 
 ミューズは<世界観>を示してライブを締め括った。♯17は欲望に破壊尽くされた国家をテーマにした「ザ・グローバリスト」から、無人攻撃機への反撃を誓う「ドローンズ」へのメドレーだ。叛乱を呼び掛ける♯18「アップライジング」、「権利ために闘え」とアジる♯19「ナイツ・オブ・サイドニア」にバンドの意志を感じた。「レジスタンスツアー」でステージに巨大な三角形を逆さに吊るした意味を聞かれ、「三角形はヒエラルヒーの象徴。逆さにした意味はわかるよね」とマシューは語っていた。

 大統領選でバーニー・サンダースのキャンペーンに加わったフォスター・ザ・ピープルも新作は全く売れなかった。〝反資本主義的〟と見做されることはショービジネス界で御法度といえる。レイジの〝後継バンド〟ミューズは全米でアリーナツアーを敢行するため、あざとい戦略を用いているはずだ。大統領選でヒラリーと並んだ写真をSNSに載せたのも苦肉の策だったのか。

 当日のライブはバンドのフェイスブックでストリーミング配信された。復習として視聴し、<チーム・ミューズ>の底力に感嘆する。リアルタイムでこれほどの動画を制作するには、メンバーの立ち位置、表情、指の動き、照明、スクリーンの映像、ファンのリアクションを完璧に把握しておく必要がある。綿密に準備された奇跡の一発録りといっていい。

 1stアルバムが全英29位だから、鳴り物入りで来日する他のUK勢と比べて、未来が開けているとはいえなかった。それでも<チーム・ミューズ>は確信を持って雛を怪鳥に育て上げた。さらなるパフォーマンスの進化と世界観の深化を期待している。

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