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イスラエルが一方的にやるべきこと

2009年01月21日 | パレスチナ/イスラエル
 いつもいつも一方的なイスラエルが、過去の大規模軍事行動時と同じく、一方的停戦を宣言し、撤退を始めたという。しかし、国連事務総長のようなややこしい立場にある御仁を除けば、こんな宣言をわざわざ歓迎する理由はない。
 なんとすれば、宣言などしなくても、勝手に攻撃をストップしてくれたらそれでよかったからだ。勝手にストップしてさえくれたら、ガザの人々は一息つける。ただ、それ以上ではない。人々を生殺しの目に会わせる封鎖の解除がなければ、スピードの緩い大量殺戮が進行していくことに変わりはない。それでも、スピードが緩い分、生きるチャンスは広がるのだから、勝手にストップしてくれることはひとまず朗報である。
 だが、宣言は余計だ。
 宣言の目的は何か。国の内外に向けて、この軍事行動の正当化を上塗りすることである。自分達はテロリスト討伐という正当な目的があって軍事行動を始めた。今その目標はある程度達成された。だからやめる。ボクたちは平和を愛する、お行儀のいい軍隊だから、ということである。

 だが封鎖は解除しない。占領もやめない。そんなもの、存在することすら忘れている。うそうそ、忘れたフリをしているだけ。

 だから案の定間を置かず、、そんな「停戦」話になんねえよ!とばかりに武装勢力がロケットを撃ちこんだ。お行儀のいいイスラエルは、ほらね、こういう連中なんですよ、私らが相手にしているのは──というわけで再度のお礼参り。予定通り、今回の軍事行動に至ったロジックの正当性を、もう一度実例を交えて世界に示すことができた、というわけ。
 このお礼参りの時、NHKの夜のニュースなんかでは早速、中立とかいう(らしい)立場から、「(せっかく)イスラエルが停戦を発表しましたが、ガザ地区からは(頭のいかれたイスラム原理主義勢力からの)ロケット攻撃があり、再び激しい攻撃の応酬が始まっています」と報じていたものだ。(カッコ内の語句は筆者による“一方的”補足)。大方の日本人はお茶の間でミカンの皮をむきながら、「またあ?ほんとどうしようもないね、過激派って」という感想を漏らしつつテレビを消し、ガスの元栓を確かめてから布団に入ったことだろう。

 だが知っている人は知っている。知らない人も知るべきだ。イスラエルがやるべきことは一方的な停戦なんかではなかったことを。一方的でない、ハマースとの対話交渉による停戦が必要だったというのはもちろんそうだが、それだけでも不十分であることを。今は段階的な撤退が進んでいるというが、それでもまったく不十分であることを。

 イスラエルが第一にやるべきことは、一方的な封鎖の解除である。
 2005年の一方的なガザからの入植地撤退は、一方的な(一方的にしかなりようがないけど)軍事封鎖への切り換えを前提に目論まれたことは、今や疑う余地もない。つまり、内側からガザを侵食する政策的リスクを放棄して、外からがんじがらめにする効率の良さ・外聞の良さ(見たくない人には見えないから!)を選択した。その切り換えは見事当たった。それこそが、つまり「封鎖」が現在まで維持・強化されていることが、イスラエル軍による個々の挑発・攻撃を別とすれば、最近の(そして2006年ガザ・レバノン侵攻の際の)ハマース側による反撃の、最も大きな背景になっている。
 ハマースは何だかんだ言っても停戦に安堵し、神のご加護によりイスラエルの攻撃を撃退した!と内向きな凱歌を上げながら、首の皮一枚つながったことを実感しているのかも知れない。しかし、ガザの住民150万人にとって一方的「停戦」は、せいぜいが生殺し地獄の振り出しに戻ったことを意味するに過ぎない。その現実が、くすぶっていたハマースに対する怒り・失望に今後拍車を欠けるだろう。かといって、ファタハへの支持が盛り返すとも思えない。かといって、その両者に代わる第三勢力は育っていない(イスラエルや欧米がそうさせないためでもある)。
 となると、たまりたまったガザの住民の怨念はどこに向えばいいのか。ハマースの指示に従わない、もはやハマースの制御し切れない武装勢力の、自暴自棄な攻撃が頻発する恐れがある。イスラエル当局としては願ってもない話だ。
 ガザの武装勢力の攻撃を即、「停戦」破りのイカれた反応だと考えることができないのは、こうした構造が「封鎖」の完成以来、厳然として在ることを知っている人だろう。イスラエルの中にすら、占領・封鎖をやめれば、ガザからロケットが飛んでくることはないと声を上げている人たちがいる*(注)。どれほど強力なイスラエルのプロパガンダ・マシーンをもってしても、こういう人達の存在を消せないのは、どこの世界にもひねくれ者はいるから、ではなく、事態の根源にさかのぼって冷静に考えれば、それこそが道理だからだ。

 もう一度言う。イスラエルが一方的にやるべきことは、第一に封鎖の解除である。
 本来なら、それに続けて一方的謝罪と一方的賠償が続かなければならない。そんな事態が近い将来にやってくるとは僕も信じていないが、それでもこれらは理想的な進展というものではなく、本来当然のことなのである。
 この当然のことをやって、それでもハマースやヒズボラが攻撃を仕掛けてくるというのなら、国連軍でも何でも出動させるというのは(賛成はできないが)まだしも理解できる。しかし、テロリズムを国家原理そのものに据えているといっても過言でもない「ならず者国家」の一方的「停戦」を、実質のない「撤退」を、何か殊更に価値あることであるように報じるメディアがあるなら、それは茶番を通り越して「テロに与する行為」と言うべきだ。


 今回の侵攻前から行なわれていた、ガザの封鎖を求める署名にご協力を。その際、「停戦になっても封鎖が終わらなければ解決には程遠い」旨をコメントで強調してくれる人が、多ければ多いほどいいと思う。
 http://www.shomei.tv/project-433.html


*(注) 以下を参照。
 TUP速報807号 テルアビブで大規模反戦デモ
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1 コメント

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TBありがとうございました (うろこ)
2009-01-23 08:45:48
TBありがとうございました。ガザとイスラエルの停戦の実状や本来のやるべき事を明確にして下さってありがとうございました。
「停戦」のニュースを聞いた時は「大統領選に向けて国内にアピールできたから止めたのかな?」
と思っていたのですが、国外への「過激派が悪い」イメージを植え付ける目的もあったのですね。それに易々とのっかるイメージですべてを決めつける人が多いのが辛いところです。
ガザの状態が結局何も良くなっていないのだという事も。

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