アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

『タレンタイム~優しい歌』アディバ・ヌールさんの舞台挨拶(下)

2017-03-28 | 東南アジア映画

前回の続きです。

Q4:私もイポーに行ったのですが、その時テレビを見ていたらアディバさんが司会で出演してらして、「フジャン」を歌っておられました。多彩な才能を持つアディバさんが、ヤスミンと出会ってどんな影響を受けたのか、教えて下さい。

アディバ:(咳でむせる)さっき、ピーナツを食べ過ぎてしまったみたい(笑)。以前の私は無名で、裏方的な仕事が多かったんです。バックで歌を歌っていたりとかね。ところが、CFや映画に出るようになってからは、マジョリティであるマレー系社会で広く知られるようになりました。さらに、この作品『タレンタイム』に出演して以降は、華人やインド系のコミュニティでも知られるようになったんです。その後は、華人監督の作品である『ナシレマ2.0』(2012年大阪アジアン映画祭で上映)にも出演したりしました。ヤスミン作品で知られる私を起用して、多様性をということだったと思います。ヤスミンの映画に出たお陰で、ダイバーシティ的な結果になっていますね。


Q5:「民族を超えた融和」がこの映画のテーマだと思いますが、今のマレーシアの学校では、民族や出身を超えていこうとするどんな努力がなされているのでしょうか。特に、若い人たちの間での関係についてうかがいたいです。

アディバ:そういったことには、公立学校が貢献していると言えますね。この映画の学校もそうで、どんな人でも、家庭の経済状態にかかわらず通うことができます。そのほかには中華系、インド系の学校もありますが、そういった学校でも変化が起きています。マレー系の家庭で、子供を中華系の学校に行かせる家が出て来たりしているんですね。

また、英語はマレーシア語(マレー語)に次ぐ、公用語としては第二の言語です。都会の学校では授業だけでなく、普段でも英語がやり取りに使われている、という現実が多くなっているようです。私の学校は女子修道会の経営する学校だったんですが、特に宗教とは関係していなかったものの、英語ができないと入れない学校でした。私たちの時代より、今の若い人たちはもっともっとお互いに融和していくことに長けていると思います。お互いの違いを受け入れて、付き合っていますね。まだ保守的なコミュニティに属する人もいますが、そういう世代の人たちは少なくなってきつつあります。


Q7:ヤスミン・アフマド監督作品を何本か見ましたが、同じ俳優さんが起用されていることが多いです。これについて、監督は何かおっしゃっていましたか?

アディバ:ヤスミンが直接言ったのではなくて私の考えですけれど、キャラクターのインパクトというのがあるのでは、と思います。例えば私が演じた『細い目』のカクヤム(ヤムお姉さん/オーキッドの家のお手伝いさん)がいますよね。『グブラ』のカクヤムはまた別のキャラクターなのですが、見ている人は「あ、あの人だ」と思ってしまいます。観客が何らかの繋がりを見とってくれるから、次の作品にもついてきてくれる。私は今でも、「カクヤム」と呼ばれることがあるんです。それと、私たちは監督が大好きだったし、監督の意図を生かして演じることができたから、たびたび起用されたのだと思います。


Q8:マレーシアと日本とは違うと思うのですが、日本を見てどう思われましたか?

アディバ:日本ともそれほど違っているとは思いませんね。文化面で言うと、お互いを尊重する、目上の人を敬う、靴を脱いで家にあがる、といった、共通している点がたくさんありますよ。かつての首相マハティールが、「ルック・イースト」という政策を打ち出したことがあるのですが、この「イースト」は中国でも韓国でもなくて、日本のことだったのです。特に、メンタリティの部分を見習おう、ということが言われました。日本人の意志の高さなど、メンタルな部分を強調したかったのですね。

ほかに「ブミプトラ(大地の子)」政策もあって、マレー系は優遇されているので、ぬるま湯の中にいる感じがすることもあります。『タレンタイム』の中でもハフィズは「君らは優遇されているよね」と言われるのですが、ハフィズは「いや、だからこそ、認めてもらえるよう努力するんだ」と言います。よきメンタリティに、ポジティブな態度。私は今日本で、自分の家にいるかのようにくつろいでいます。日本を違う国、知らない国とは、とても思えませんね。


あと、私の好きなシーンは、車の中でカーホウが父親と試験結果について話をするシーンです。カーホウの父を演じているのは、いつもギャング役をやっているデヴィッドさんです。この場面は、カーホウにとって初めて演技をするシーンで、彼は心情的にすっかり固くなっていました。加えてみんなが、「デヴィッドさんは以前は本物のヤクザだったんだよ」とカーホウに吹き込み、彼はますます緊張して、びびりながら車に乗り込んだのです。そういう恐怖心が、父親を恐がっているカーホウ、という演技に重なって、とてもよかったですね。ちなみにデヴィッドさんは、今はすっかり足を洗って、プロの写真家として活躍しています(笑)。


このあと、ムヴィオラからアディバさんへの御礼のプレゼントが渡されたのですが、中身は何と招き猫! というのも、アディバさんは自宅に猫を40匹も飼っているほどの猫好きだそうで、それと『タレンタイム』のヒットを祈願して、ということだそうです。早速アディバさん、招き猫のマネをして見せます。


「え、お金を招くのは右手ですって? それなら私は、もち、右手よ」


「ハッピー・カモーン」の招き猫ポーズです。この写真をどこかに貼っておいても、御利益がありそうですね。


その後は、またサイン会と記念撮影会。皆さん、シャイながらひと言ふた言アディバさんに感想等を話かけていて、とってもいい感じです。写真を撮っていたら、アディバさんが私を見つけて「おっ!」。


そうです、一昨日もいっぱい写真を撮らせていただいた者です。「プレゼント、下さったでしょ? そんなの、いいのに~」 はい、桜のシールや招き猫のシールなど、5種類ほど入れたのを差し上げました。猫好きとは知らなかったのですが、猫のフレークシールも入っていました~。シールだと、お荷物にならないし、帰国後親戚の子供たちにあげたりと、おみやげにもできるかと思い、よく差し上げるんですよ。


我々観客に、そのお名前の通り「ヌール(光)」をもたらして下さったアディバ・ヌールさん。アディバさんにまた来ていただけるよう、『タレンタイム~優しい歌』が全国で上映されることをめざしてがんばりますね。皆様も、ぜひご覧になって下さい。『タレンタイム』の公式サイトはこちらです。ご覧になってのご感想や疑問点など、コメントもお寄せいただければ幸いです。




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