アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

国歌を聴かされたチェンナイの映画館

2017-03-06 | インド映画

危惧していたことが現実になりました。インド全国の映画館での国歌演奏フィルム上映が始まったようです。これまでは、私が知る限りではマハーラーシュトラ州だけだったのが、昨年12月に最高裁が「国歌と国旗に対する敬意が、映画館でも払われなければならない」という通達を出したことにより、全国で適用されることになってしまいました。画面も国旗だけで味気ないのですが(マハーラーシュトラ州での上映時には、古典歌手が交代で歌うヴァージョンがあったり、障がい者で耳や口が不自由な子たちが歌うサイレント(歌詞なし)・ヴァージョンがあったりと、いろいろ工夫がこらされていました)、面白かったのは超アップテンポの国歌演奏だったこと。印象としては、マハーラシュトラ州で流されるヴァージョンの半分くらいの時間で終了したのでは、と思います。「とにかく聞いとけ!」という感じで、ジャカジャカジャカと国歌が流れて、みんな立っている、という感じです。

直前には、マハーラーシュトラ州と同じように起立をうながす画面が出るのですが、立たなかったからと言って罰則規定はないそうで、数回映画を見たうち、一度だけずっと座ったままの若者を見ました。そういう私も、映画が始まる前に疲れが出て眠ってしまい、あ、何だかジャカジャカいう音が、と思って目覚め、途中からあわてて立ち上がったことがありました。その時によって場内の雰囲気が微妙に違う感じで、やれやれ、という感じだったり、反対に、みんなビシッと背を伸ばして今にも敬礼せんばかりだったりと、何によって左右されるのかはわかりませんが、観察していると面白かったです。

さて、そんな国歌演奏フィルムと共に見た映画ですが、ヒンディー語映画はなぜか愛国映画と言えるような作品が多かったのでした。順番にご紹介して行きますが、まずは楽しみにしていた『Commando 2: The Black Money Trail(コマンド2:ブラックマネーの軌跡)』(以下、『コマンド2』)から。主演は、『Commando: One Man Army(コマンド:たった1人の軍隊)』(2013)(以下、『コマンド1』)に引き続き、ヴィドユト・ジャームワールです。

Commando-2 Poster.jpg

まずびっくりしたのは、冒頭に昨年11月8日に発表された、1000ルピーと500ルピー札の廃貨のニュースが出てくること。続けて、「この措置は海外に蓄えられたブラックマネーを取り締まるためのもので、海外での蓄財は様々な手段を使って行われている」というようなナレーションが入り、そこから本編に入って行きます。こういう時事問題をすぐに取り込んで映画にするのは、香港映画や韓国映画なら納得できるのですが、製作のスピードが遅いインド映画ではあったとしてもかなり遅れてのはずなのに、素早い取り上げ方に感心しました。

ストーリーは、ミッションを命じられたコマンドのカラン・シン(ヴィドユト・ジャームワール)が相棒と共に台湾に出向き、ヴィッキー・チャッダーというボスを追い詰めるところが導入部となります。ところがヴィッキーは正体不明で、台湾ではその手下をつかまえたものの、ブラックマネーの行き先はわからずじまい。手下を始末するためにカランはわざと相棒に自分を撃たせ、手下が撃ったことにして彼を始末する、という荒っぽいことをやります。銃創が癒えるまで入院している病院にやって来たのはコマンドの上司(アーディル・フセイン)で、ヴィッキー・チャッダーがマレーシアで捕まったというニュースをもたらし、警官4人がチームを組んで、マレーシアまで引き取りに行くことになった、と告げます。カランはその警官のうちの1人を脅し、直前に辞退させて自分が代わりにチームの1員となってマレーシアに飛びますが、そこに待ち受けていたのは驚くべきどんでん返しでした...。

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と書くだけでも、ちょっと荒っぽすぎる筋だと思われることでしょう。荒っぽい演出は筋だけではなくて、「TAIWAN」と画面に出てくるのに、その川はどう見てもメコン川でしょうが! だったり、また「MALAYSIA」と出て来ても、モロ、タイじゃないの! だったりします。最後に話の舞台はタイになるので、やっと帳尻も合うわけですが、やれやれ、という感じです。こういう作品は、チームを組んだ4人の個性が際立っていると面白くなるのですが、際立っているというか、ズレているというか、凄腕の警官に、なまり丸出しのイケイケ姉ちゃん(死語かも)警官、そしてコンピューター専門家のずんぐりむっくりしたオタク青年という組み合わせで、どの人のキャラもいまいち立たずじまいでした。対して、悪の側の美女役は、『ロスタム』(2016)でロスタムに殺されるジゴロ青年の姉を演じたイーシャー・グプターで、時として性転換した美女に見えてしまう欠点はあるものの、なかなかがんばっていました。女性大臣(シェーファーリー・シャー)のどら息子が犯罪に噛んでいる、という設定もありがちながら、この女性大臣のキャラに存在感があってよかったのですが、最後までいろんなパーツがバラバラで、残念な作品になっていました。予告編を付けておきます。

Commando 2 | Official Trailer | Vidyut Jammwal | Adah Sharma | Esha Gupta | Freddy | 3rd March 2017

で、肝心のヴィドユト・ジャームワールのアクションは? 『コマンド1』よりは見せ方がうまくなりましたが、やはりタイ映画『マッハ!』のパクリが目立ち、プラマイゼロ、といったところ。出来がよかったら、日本のある会社に...と思っていたのですが、ちょっとムリかなあ...。


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Unknown (アールーゴービー)
2017-03-08 16:46:22
12月にデリーで”Dangal”を観たのですが、映画の中の国家が流れるシーンでも観客がみんな立ち始めたのでびっくりしました。
連れのインド人も立ち上がったので、私たちもそれに倣いましたが。
アールーゴービー様 (cinetama)
2017-03-08 20:30:12
コメントをありがとうございました。

『Dangal』で、アーミル・カーン演ずるレスリング・コーチの娘が優勝した時に国歌が流れるシーンですね。
映画上映の前には、国歌は流れなかったのでしょうか。
政府のお膝元なので流れるはずではと思うのですが、12月の最高裁の命令が出る前だったのかも知れませんね。

劇中にインド国歌が流れて、観客が立ち上がる、というシーンは、実は日本で見たことがあります。
国際交流基金が1998年に『1942年 ある愛の物語』を上映した時のこと。
最後に国旗(というか独立前なので、インド独立琪)が掲揚されて国歌が流れるのですが、そこにヒンディー語で「国歌に敬意を表して起立して下さい」とテロップが出たため、インド人観客は全員立ち上がっていました。
テロップの日本語字幕が出たかどうか、今となっては覚えていないのですが、日本人観客は戸惑っていましたっけ。

私は娯楽や芸術の場に国家崇拝を持ち込むのは反対なので(映画の中での表現は自由ですが)、映画館での国歌演奏にはげんなりしてしまいます。

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