アジア映画巡礼

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東京フィルメックス最終日

2013-12-01 | 映画祭

11月23日から始まった第14回東京フィルメックスも本日が最終日。例年ですと最終日にコンペ部門の結果発表があるのですが、今回は昨日に結果発表と授賞式がすでに終了しています。受賞結果は次の通りです。

最優秀作品賞: 『花咲くころ』 (グルジア、ドイツ、フランス)
            監督:ナナ・エクチミシビリとジーモン・グロス
審査員特別賞: 『ハーモニー・レッスン』 (カザフスタン、ドイツ、フランス)
            監督:エミール・バイガジン
スペシャル・メンション: 『カラオケ・ガール』 (タイ、アメリカ)
                監督:ウィッサラー・ウィチットワータカーン
                『トーキョービッチ,アイラブユー』 (日本)
                          監督:吉田光希
観客賞: 『ILO ILO』』 (シンガポール)
      監督:アンソニー・チェン
学生審査員賞:ハンナ・エスピア監督(フィリピン)

最終日の今日は、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督作品『ピクニック』を見に行って来ました。

『ピクニック』
 2013/台湾/原題:郊遊
 監督:蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)/主演:李康生(リー・カンション)、陸[亦+廾]静(ルー・イーチン)、楊貴媚(ヤン・クイメイ)、陳湘[王其](チェン・シャンチー)

 

ツァイ・ミンリャン監督のミューズ、総出演作品ですが、ピカ一のミューズはやはりリー・カンション(上写真左)。雨中にビニールかっぱを着て、マンションの看板を持って道端に立つ男と、どうやら彼の子供らしい少年と幼い少女のホームレスのような生活を描きつつ、どうやら過去の幸せな家庭の様子がそれにカットバックされる....。「どうやら」ばかりなのは、何も説明がないためです。これに、スーパーの冷凍食品売り場主任の女性(ルー・イーチン)がからむのですが、嵐の中子供を船に乗せて漕ぎ出ようとする父親から子供2人を救う、というシーンがあるものの、それがラストではなく...、という、かなり難解な作品でした。異常なくらい長い長回しが何カ所もあって、画面の登場人物が数分間動かないというカットもあったりします。なぜこんな作品を? という問いに対する答えは、本日の上映前にサプライズで登壇したツァイ・ミンリャン監督の挨拶に答えを見つけられるかも知れません。

監督「私の新作を見に来て下さってありがとうございます。この作品は、4年前の『ヴィザージュ』に続く作品ですが、実は『ヴィザージュ』を撮ったあと、もう映画を撮るのはやめようと思いました。ですので、『ピクニック』は計画外に出来上がった作品です。

ある台湾の大学教授が本を出版したのですが、彼はその本を書くに当たって私にインタビューに来ました。そのインタビュー方法は、これまでの私の作品のハイライトを私に見せながらインタビューする、というやり方でした。ハイライトは特に、私の作品のミュージカル部分を中心に構成されていました。そういうハイライトを見ることで、私は自分の作品をあらためて見直し、自分は何と素晴らしい作品を撮ってきたことか、と思ったのです(笑)。特に、ミュージカル部分は楽しく見ました。

『ピクニック』に関して言えば、歌と踊りはありませんが、これはいい作品です。なぜなら、リー・カンションが演技をしているからです(笑)。私はこの20年映画を撮ってきましたが、『ピクニック』は特別な作品だと言えます。これは、リー・カンションの顔を撮るための作品です。リー・カンションは私に、映画とは何かを考えさせてくれる存在なのです。20年間にわたる映画製作は、映画の持っているものを捨て去る、という形での製作でした。でも、時間だけは捨て去ることができません。リー・カンションの顔は、その時間の流れを刻んでいると思うのです。

フィルメックスには感謝しています。この作品を選び、上映して下さったからです。また、観客の皆さんにも感謝しています。リー・カンションと同じく、私と共に歩んできてくれたからです。私にとって映画を撮るということは、収穫と同じです。また、映画を見るということも、収穫と同じだと思います。今夜は、この収穫をお互いにシェアしましょう。

人間は年老いていくものです。でも、老いることを恐れる必要はありません。私は、この『ピクニック』が私の最後の作品であることを願っています。私はこの20年間、映画を撮り続けたことで十分楽しんできました。20年間に撮った10本の映画は、どれもいい作品だったと思います。

でも、私は疲れを覚えるようになりました。だからもう、映画は撮りたくないと思うのです。とは言っても、安心して下さい。天の神は、どんな裁定を下されるかはまだ不明です。何年か経って、私が新作を撮っても変に思わないで下さい。その時は、今日ここでこう言ったことは、もう思い出さないで下さいね(笑)」

何だか、聞きようによっては監督としての遺言とも聞こえる言葉ですね。それにしては『ピクニック』は、気力に溢れる、鬼気迫る作品でした。ただ、ツァイ・ミンリャン監督とリー・カンションの「二人世界」で作品が作られている感じがビンビンして、とても入り込むことができないという思いもしました。

            ☆  ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆ 

フィルメックスも終わり、いよいよ師走となります。有楽町マリオンの時計も、少し前からクリスマス仕様に衣替え。天使たちがサンタ姿になっています。

それでは忙しい師走の時期、皆様もお体に気をつけてお過ごし下さい。私は<中国インディペンデント映画祭>も<ペマ・ツェテン映画祭>もあるので、まだまだ映画漬けです~。

 


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