前の記事「ミン ウォン:ライフ オブ イミテーション」展(1)では、オタク道まっしぐら状態だったために展覧会の基本的インフォメーションも書かず、失礼しました。あらためて、会期、入場料等を書いておきます。
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「ミン ウォン:ライフ オブ イミテーション」
主催:原美術館、シンガポール美術館
会期:2011年6月25日(土)~8月28日(日)
会場:原美術館(東京都品川区北品川4-7-25/TEL:03-3445-0651(代表))
開館時間:11:00 am - 5:00 pm (水曜日は11:00 am - 8:00 pm)
(入館は閉館時刻の30分前まで。電力事情により変更の可能性あり)
休館日:月曜日/ただし7月18日(月・休)は開館し、7月19日に休館
入館料:一般1,000円、大高生700円、小中生500円
(原美術館メンバーは無料。学期中の土曜日は小中高生は入館無料)
※内容等さらに詳しいインフォメーションは、原美術館のブログをどうぞ。
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で、今回(2)は、前回に引き続き、シンガポールの映画資料コレクター、ウォン ハン ミン氏のコレクションに刺激された「マレー半島の映画館」です。玄関を入ってすぐの部屋には、(1)で挙げた映画ポスターと共にロビーカード等が展示されているほか、シンガポールの映画館の写真が説明付きで、チケットの半券と一緒に展示されています。映画館の写真と説明、というのはありがちですが、そこにチケットの半券が加わってくると、映画文化の歴史と息吹をなまなましく感じさせてくれます。
この展示も、ミン ウォンとキュレーターのタン フー クエンが”シンガポールの豊富な映画遺産を振り返る”(プレスより)ために行ったものなのですが、それを見たとたん、「私にもできるかも」と思ってしまいました。私は1989年からシンガポールに行き始めたのですが、結構いろんな映画館に行っていて、そこで映画を見た時には半券も取ってあります。映画館を見つけたので写真だけ撮った場合もありますが、反対に映画を見に行って写真をきちんと撮らなかったことも多く、今思い返してみるとコレクター魂がまだまだ入魂されてなかったなあ、と深く反省。
以下、チケットの半券がないものや、写真の時期と映画を見た時期=半券の日付とが一致しないのもありますが、シンガポールの映画館をいくつかご紹介してみます。映画館の名前の次にある年号は、写真を撮影した年です。
リド(1989年):オーチャード・ロードに面してあった、ショウ・ブラザーズ系の映画館。今は壊されて、ショウ・ブラの新しいビルが建っています。
キャセイ(1990年):ドービー・ガートに戦前からあったキャセイビルの下の映画館。結構長くこの懐かしいスタイルを維持していたのですが、現在では新しい建物に生まれ変わっています。
シンガプラ/ニュー・シンガプラ(1993年):確か、カトンにあったと思います。インド映画やマレーシア映画をやっていました。この時見たのは、ウ=ウェイ・ビン・ハジサアリ監督のマレーシア映画で、アジアフォーカス・福岡国際映画祭でも上映された『女、妻、そして娼婦』 (1993)。ソフィア・ジェーンの大胆なカットアウト看板が目を引きます。
ゴールデン・スルタン(1995年):シンガポールの中心部近くにあるのですが、さびれた雑居ビルの4階にあり、知る人ぞ知るインド映画の上映館、という感じでした。この時はラジニカーントの『バーシャ! 踊る夕陽のビッグボス』 (1994)を見ていますが、その後もたびたび通いました。
タマン・ジュロン(1996年):当時インド映画をやっていたのは、ゴールデン・スルタンとその隣のビルにあった映画館を除くと、ジュロンイースト(多分)のこの映画館とか、北の端ウッドランドの映画館とか、周縁部に位置する映画館が多かったのです。この時上映していたのはタミル語映画『インドの仕置き人』 (1996)。チケットの半券がないところを見ると、写真だけ撮りに行ったのかも。
ニュー・ハッピー(1996年):ここは昔のアミューズメントパーク「繁華世界/Gay(Happy) World」の中の映画館です。アミューズメントパーク自体はもう閉鎖されているのに、「快樂冷気大戯院/New Happy Theatre (Air-conditioned)」と書かれたこの劇場だけが営業をしていました。ここへもタミル語映画を見に行ったのですが、オンボロ劇場で、床をネズミが走り回っていて怖かったです。
ブドック(1999年):すみません、以前「インド映画娯楽玉手箱」(キネマ旬報、2000)で紹介した時は、「ベドック」と書いてしまいました。正しい発音は「ブドック」です。マレー語では、"e"は”エ”と発音する場合と、”ウ”と発音する場合とがあるのです。ブドック駅に近いここは、90年代初めからインド映画を上映し始め、その後長らくインド映画のセンター的役割を果たしてくれました。ですので、相当回数通いました。最初はショボかったのですが、途中からこんな風に立派な外観になりました。
ブロードウェイ(1999年):確か、ウッドランド駅に近い所にある劇場でした。タミル語映画をやっていて、『州首相』 (1999/原題:Mudhalvan)を鑑賞。
マジェスティック(撮影年不明):かの有名な、チャイナタウンにある大華大戯院です。シンガポール映画『フォーエバー・フィーバー』 (1998)にも、主人公が帰宅するシーンなどで背景に写っていましたね。ここで見たのはフィリピン映画で、『あなた、洗濯がまだよ』というコメディでした。この映画、資料を探すも見つからず....。フィリピン人のアマさんたちが大笑いしていました。
なかなか写真もチケット半券もきちんと整理していないもので、あわてて探すとうまく見つかりません。いつかじっくり探して、ウォン ハン ミン氏のように整理してみたいものです。
ただ、1つだけこの展示で疑問点があるのですが、キャピトルという映画館の写真がどうもシンガポールのキャピトルではなく、別の街の映画館キャピトルのようなのです。展示の写真は左(キャセイの映画雑誌「國際電影」1965年7月号より)のものが使ってあり、私が撮ったシティ・ホール駅に近いシンガポールのキャピトルは右です。明らかに違うでしょ?
うーん、左はどこのキャピトルなんでしょうねー。キャセイという映画館もそうですが、キャピトル、オデオン、パビリオンなどという映画館はマレー半島各地にあって、「どこの」というのを付けないと区別がつきません。
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今回の展覧会は、原美術館の建物全体を上手に利用してあるのですが、1階の廊下にある長い壁にも展示がディスプレイされています。それが「Filem-Filem-Filem」という、ミン ウォンがシンガポールとマレーシアを旅しながら撮った映画館のインスタント写真なのです。すごい数が並んでいて、とても貴重な資料なのですが、美術展示としての存在なので撮影データは一切付いていません(残念ですぅ~~~)。でも次々と見ていくと、「映画館は”夢の宮殿”だった」というミン ウォンのささやきが聞こえてくるようです。
で、こちらはcinetama版「Filem-Filem-Filem」。マレーシアの映画館で構成してみました。上から順番に、クアラ・ルンプルのパビリオン(1992年)、キャセイ(1992年)、キャピトル(1993年)、フェデラル(1993年)、ペナンのキャセイ(1993年)、スタジオ・チョウラースター(四つ辻/1993年)、レックス(1993年)、そしてジョホールバルのレックス(1989年)です。
では、実際の展示の方をぜひお楽しみ下さいね。
シンガポールはここ20年で、本当に変貌してしまいましたね。映画館だけは割と写真を撮っていたのですが、その他の街並み、例えばオーチャード・ロードのドービーガートあたりにあった古本屋さん(複数)とか、街角にフツーにあったコーヒーショップ(香港の茶餐廳とは違うオープンな空間)とか、今にして思えば写真を撮っておけばよかった、と思う風景ばかり浮かんできます。
チャイナタウンも、チャイナタウン・ポイント(でしたっけ? 外見がブルーっぽいビル)ができた時はわざわざその新しいショッピングセンターを見に行ったぐらいでしたが、今や変貌につぐ変貌。ローカルの方たちは、自国政府をよくご存じだったわけですね。また8月に行きますので、あれこれ写真を撮ってきます。