ご紹介するのが遅くなりましたが、マラヤーラム語映画では日本初の公開作品となる『チャーリー』が、10月1日からキネカ大森にてロードショー上映されます。まずは基本データをどうぞ。
『チャーリー -Charlie-』 公式サイト
2015年/インド/マラヤーラム語/129分/原題:Charlie
監督:マーティン・プラーカット
出演:ドゥルカル・サルマーン、パールワティ、アパルナ・ゴーピーナート、カルパナ、ネードゥムディ・ヴェーヌ、チェンバン・ビノード、ソウビン・シャヒール、ナーサル(ゲスト出演)
配給・宣伝:CELLULOID JAPAN、DOZO Films
※10月1日(土)よりキネカ大森その他全国映画館にてロードショー
カルナータカ州のベンガルール(バンガロール)でグラフィック関係の仕事をしているテッサ(パールワティ)は、兄の結婚式でケーララ州の自宅に戻ってきます。ところが、母親から縁談を強要されたため、次の日にはもう家出してヒッチハイクしながらコーチ(コーチン)の町へ。バンガロールでの仕事にも嫌気がさしていたテッサは、友人に紹介された不動産業者ウスマンに部屋を見つけてもらい、そこに住むことにします。前の住人の荷物が残っている、と聞かされてはいたのですが、そこはゴミ屋敷のように、前の住人が造ったと思われるオブジェやら本やらが残る部屋でした。残されていた写真には、子供たちと一緒に写るこの部屋の前住人チャーリー(ドゥルカル・サルマーン)の姿がありました。
ある日、前の住人の荷物をみんな始末してしまおうとしたテッサは、その中に今インドで流行のグラフィック・ノベル(劇画のようなマンガ物語)があるのを見つけます。達者な筆運びで描かれたその物語は、チャーリーがたまたま部屋に忍び込んできた泥棒(ソウビン・シャヒール)と共に夜の町に繰り出し、ある家の屋根瓦をはいでそこから侵入しようとする、というストーリーでした。ところが、2人が屋根の上から覗いて驚くべきものを見つけた、というところで物語は突然終わっており、テッサはその後が気になって仕方ありません。探しても家の中には続きの絵は見つからず、テッサはチャーリーを知る人たち--ウスマンに始まり、チャーリーの父、パトローゼとでたらめな名前で呼ばれた漁師のマタイ(チェンバン・ビノード)らを次々と訪ねて行きます....。
正体不明の人間をヒロインが探していき、最後には...という物語なのですが、手がかりがあまりにも多く散りばめられており、それぞれが収斂しないままに次に移る、というわけで、かっちりしたストーリーを期待するとフラストレーションがたまります。むしろ、謎の人物を感性の赴くままに追って行く、その謎めき感と心の躍動感を楽しむ作品であるようです。彼に興味を持つきっかけとなるグラフィック・ノベルは、確かに水準が高い絵で、画面で見てみても惹きつけられました。この映画のために描かれたものだと思いますが、作者は誰なんでしょうね。
グラフィック・ノベルの元になったシーンのフラッシュバックや、父やテッサの所に電話を掛けてくるシーンで、チャーリーは観客の前に姿を現します。というわけで、観客はテッサが探すチャーリーの実像を十分に見られるのですが、これらの像が合わさってビシッと焦点を結ぶかと言えばそうでもなく、謎の人物は謎のままに、という描き方がしてあります。いろんな人の証言で構成されていくチャーリー像、という手法は、ずっと昔のマラヤーラム語映画で、アラヴィンダンが監督した『エスタッパン』(1980)を思い出させてくれました。私以外にもそう思った人がいるようで、ちょっとググってみたら、両者を比較しているインドのブログ記事がみつかったりしました。
寡黙だったエスタッパンに比べ、チャーリーは饒舌でハチャメチャに行動的。スケールの大きいおせっかい焼き、とでも言えるそんなチャーリーを、マラヤーラム語映画の人気者ドゥルカル・サルマーンが魅力たっぷりに演じています。純真さとワルっぽさが入り交じった表情ができるドゥルカル・サルマーンは、このタイトル・ロールにうってつけ。ぶっ飛んだ悪趣味すれすれの衣裳に、あごひげ&くちひげ姿がよく似合い、物語をぐいぐい引っ張っていってくれます。昨年の東京国際映画祭で上映されたマニラトナム監督作品『OK Darling』(2015)で彼のことが気になった人は、絶対にお見逃しなく。マラヤーラム語映画界の大物スター、マンムーティの息子であるドゥルカル・サルマーンですが、2012年にデビューしてすぐ『Ustad Hotel(ウスタード・ホテル)』(2012)でブレイクし、以後トップスターの1人として活躍中です。
テッサ役のパールワティも、生粋のケーララっ子のようですが、2006年にマラヤーラム語映画『Out of Syllabus(シラバスから離れて)』でデビューして以降、カンナダ語、タミル語映画にもいろいろ出演しています。最大のヒット作は2014年のマラヤーラム語映画『Bangalore Days(バンガロールの日々)』で、この時も相手役がドゥルカル・サルマーンでした。というわけで、彼との息はピッタリです。今年公開されたタミル語版リメイクの『Bangalore Naatkal(バンガロールの日々)』にも出演していましたが、そう言えばこの「バンガロール」シリーズでもメガネ美人役でしたね。観客が、パールワティにはメガネ顔を期待するのでしょうか。
ほかには、『チャーリー』が日本で自主上映された時にこちらでもご紹介した、往年の名優ネードゥムディ・ヴェーヌ(上写真中)が姿を見せているのも嬉しい限りです。また、ラストシーンには、タミル語映画『ボンベイ』(1995)、『ジーンズ』(1998)、『チャンドラムキ』(2005)等々でお馴染みの名脇役ナーサルも、マジシャン役で顔を出しています。
こういった俳優たちの演技のほかに、ケーララ州の美しい自然や町並みがふんだんに登場するのも本作の魅力と言えます。上は、兄の結婚式に帰ってきて、伝統的な衣裳で女性たちの踊り(調べてみると、Margamkaliという踊りのようです)を踊るテッサですが、この衣裳のまま家出してしまうのがテッサの面目躍如というところ。その後、テッサがコーチで不動産業者の車に同乗した時には、完璧な舞台衣裳姿のカタカリの舞踊手と相乗りになりますし、そういったケーララ風味が随所に出てくるのも眼を楽しませてくれます。また、ラストシーンは、ケーララ州中部の町トリチュールで開催される「象祭り」として有名な「トリチュール・プーラム」が舞台になっており、化粧まわしならぬ化粧額あてを付けて勢揃いする象と、それに集まる群衆の熱気が、映画のクライマックスをさらに盛り上げてくれて圧巻です。
いろいろ見どころの多い作品ですが、日本公開にあたってはちょっと残念な面も。字幕の技術的な面で少々不備があり、普段字幕にも目配りして下さっている方には引っかかる箇所があるかも知れません。DVD化される時には修正されるとのことですが、公開時は少々ご辛抱下さいね。最後に予告編を付けておきます。
家出した女性が…!映画『チャーリー』予告編
10月にはインディアン.フィルム.フェスティバルがありますので、インド映画を観れますので楽しみです。
ぜひぜひ関西でも、『チャーリー』の上映を心待ちにしております。
関西のどこかの映画館の支配人様、どうぞよろしくお願い致します。
『チャーリー』はすでに塚口サンサン劇場での上映が決まっているようですよ。
『チャーリー』の公式サイトの「Theater」をご覧下さい。
10月29日からとなっています。
http://charlie-japan.com/theater.html
あと1ヶ月、お待ち下さいね~。
シネマートができるまで香港映画で何回通ったことか…懐かしかったです。
映画はcinetamaさん解説のおかげで楽しめました(^^)
あの部屋もなんか小物や壁の絵がとてもオッシャレ~で、
川沿いの眺めはいいし、夜になればご近所の屋上から生演奏が流れてくるし、環境もサイコー!
私なら片付けないでこのまま住みたいわ~、と思っちゃいました^^;
真っ黒いブルカ(インドではなんと呼ぶのかしら)をかぶった女性が船に同乗していて、
後でバンフをチラ見したら、ムスリムも多いんですね、ケーララ州。美しい風景や迫力のお祭りの様子も堪能しました。
インディアン航空のCMもあったし、ケーララに行ってみたいと思う女性は多いかもしれません。
今日は夕方から「PK」の試写会にも行きました。
これは…スゴイ映画ですね。
世界中の、特にお偉いさん方が全員見たら、
世の中の諍い事が少しはなくならないか、と思うような映画でした。
無料割引券もキネカ大森にあったし、公開劇場数すごく多いし、
相当な力の入れようだなーと思いました。
私も口コミ宣伝しまーす!
『チャーリー』と『PK』の2本連チャンとはすごいですね。
『チャーリー』、私はテッサの鼻ピアスがいまだに気になっており、あの形はなに?と悩んでいます。
ああいうのが流行ってるんでしょうかねー。
『PK』、本日『pk』ではなく『PK』であることに気づき、だってロゴは明らかに小文字じゃん、とブーたれています。
(インタビューを受けたところから指摘された)
でも、よく見れば公式サイトの文章では、みんな「PK」になっていました。
どっちでもいいから、ヒットしてほしい!
りからんさん、ご宣伝よろしくお願い致します~。