アジア映画巡礼

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ヨン・サンホ監督に瞠目!<1>『我は神なり』

2017-08-04 | 韓国映画

 ヨン・サンホ監督の実写劇映画第1作『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)を見たのがちょうど1年前。タイのバンコクでした。その時の記事がこちらですが、その時あるサイトを調べて「ヨン・サンホ監督はこれがデビュー作とのことですが、どうやって撮ったのかと目を見張らされるアクション・シーンの数々など、とても監督第1作とは思えません」と書いたところ、日本人では韓国映画に一番詳しい人と言っても過言ではないソチョンさんから、「ヨン・サンホは元々インディーズ・アニメーション作家でして、今回劇映画に進出した変わり種です。日本で言えば庵野監督と同じ経歴になりますでしょうか。ヨン・サンホの作品は短編時代から始まり、長編の代表作も花コリで上映しておりまして、東京にゲストで招聘したこともございます」というメールをもらい、あわてて訂正を入れたのでした。

  

その時から、ずっと見たいと思っていたヨン・サンホ監督の長編アニメーション2作が、『新感染 ファイナル・エクスプレス』の日本公開に合わせて公開されます。ヨン・サンホ監督はこれまで長編アニメを3本完成させており、上にポスター画像を付けた『豚の王』(2011/花開くコリア・アニメーション2013で上映)と、『我は神なり』(2013)、『ソウル・ステーション/パンデミック』(2016)となりますが、今回公開されるのは『我は神なり』『ソウル・ステーション/パンデミック』です。というわけで、この2本と『新感染 ファイナル・エクスプレス』を一挙にご紹介しようというのが「ヨン・サンホ監督に瞠目!」です。日本での公開順とは逆になるのですが、製作順にご紹介しようと思います。まずは、『我は神なり』の作品データからどうぞ。 

 

『我は神なり』 公式サイト 

 2013年/韓国/101分/アニメーション/原題:사이비(サイビ/偽、いんちき)/英語題:THE FAKE
 監督:ヨン・サンホ
 声の出演:ヤン・イクチュン、オ・ジョンセ、クォン・ヘヒョ、パク・ヒボン

 配給:ブロードウェイ
 配給協力:コピアポア・フィルム

10月21日(土)よりユーロスペース他全国順次公開

©2013 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & Studio DADASHOW All Rights Reserved.

物語の舞台となるのは、ダム建設のために水没予定の村。すでに補償金を手にした村人たちはやる気も活気もなくし、昼間から酒を飲んだり賭け事に興じたり。そんな中で唯一活気があるのは、少し前に村に建てられた教会と、そこの信者たちの寄り集まる場だけでした。教会では、信者たちから慕われている牧師ソン・チョルウ(上スチール左側/声の出演:オ・ジョンセ)が祈りを捧げ、集まった信者たちが熱心に唱和します。一見、カリスマ牧師と心清き信者たちの祈りの場に見えますが、その裏では名うての詐欺師チェ・ギョンソク(同中央/声の出演:クォン・ヘヒョ)が教会長老として皆をリードし、信者たちの補償金を巻き上げようと画策していました。そんな村に帰ってきたのは、自己チュー男で乱暴者のキム・ミンチョル(同右側/声の出演:ヤン・イクチュン)。何かと言うとすぐ妻を殴り、娘が進学用に貯めていた貯金も勝手に下ろしてしまう、とんでもない暴力親父です。ミンチョルは警察署に行った時に指名手配写真の中にギョンソクの顔を見つけ、警官や村人に訴えますが、誰も相手にしてくれません。それどころか、ミンチョルは”悪魔に憑かれた男”として、村人から忌避される羽目になってしまいます...。

©2013 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & Studio DADASHOW All Rights Reserved.

映画の冒頭、白い犬がソン牧師になついて尻尾を振り、ソン牧師も頭をなでますが、その一瞬後には白い犬に苛酷な運命が襲います。この出だしからして、人は見かけによらぬもの、という不穏な空気が醸し出され、観客は不安な気持ちで映画に足を踏み入れることになります。監督の言によると、「当初の企画から、『真実を語る悪人』と『偽りを言う善人』の対決を描くのが目標でした」とのことですが、観客は「真実を語る悪人」にも「偽りを言う善人」にも感情移入できないまま、本作がバッドエンドへと転がり落ちていく様をただただ目撃していくしかありません。動きのぎこちなさなどは確かにアニメなのですが、人物がだんだんと実写に見えてきて、この胸を押しつぶされるような感情は何か他の映画でも感じたぞ、と思っていたら『哭声/コクソン』(2016)を思い出しました。『哭声/コクソン』の中に出て来た、國村隼の祈りの洞窟と似たシーンがあったせいかも知れません。

アニメの絵柄もとてもリアルで、主人公たちや、くすんだような村人たちの表情は実写映画さながらです。ミンチョルの声を当てているヤン・イクチュンも、いつもの声とは違った親父声で感情をむき出しにし、迫力ある人物像を形作っています。人間世界の苦い真実を見せてくれる大人のアニメですが、脚本と監督を担当したヨン・サンホの実力がこちらにもビンビンと伝わって来て、その才能には瞠目、刮目させられてしまいます。『ソウル・ステーション/パンデミック』も続いてご紹介しますが、『我は神なり』の方がずしりと重く、手応えを感じさせるアニメ作品でした。最後に韓国版の予告編を付けておきます。

Korean Movie 사이비 (The Fake, 2013) 예고편 (Trailer)



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