アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

続・ヤスミン・アフマドの世界へ

2011-06-12 | 東南アジア映画

前回の記事で書き忘れたことがあったので、ちょっと追記です。ヤスミン・アフマドの仕事について、参考になりそうな資料を挙げてみます。

まず、現地で手に入る映像素材ですが、前回の記事で書いた『タレンタイム』のDVDのほか、次のようなものが手に入ります。VCDですが、『細い目』『グブラ』

 

DVDでは『ムクシン』『ムアラフ  改心』

 

これらは、クアラルンプル(KL)とシンガポールとで集めました。シンガポールでは、インド人街の巨大スーパーマーケット、ムスタファのDVDコーナーで結構手に入りました。それから、前回ご紹介した、KL購入の『タレンタイム』のDVDですが、実はパッケージを開けてみたら中身のディスクが入っていなかった!! これはすごくショックでした。この時は、友人にも頼まれていたので、『タレンタイム』のDVDとサントラ盤CDを探してあちこちのDVDショップを巡ったため、どこの店で買ったものかはわからずじまい。DVDショップ巡りは楽しくて、あるお店では店員のお姉さんとインド映画談義に花が咲き、こんな写真も撮らせてもらったりしたのですが。

マレーシアでのインド映画人気は相変わらずで、ほとんどの人気作が現地版DVDでリリースされていました。英語とマレー語の字幕が選択できます。私もホクホクと『政治』 (2010/原題:Raajneeti)などのインド映画を買ってきたのですが、日本に戻って『タレンタイム』のDVDを開けたとたんウキウキ気分はパァ。友人のDVDは問題なかったそうなので、何かの手違いだったのでしょう。KLでDVDをお買い求めになった際は、ホテルに戻ったらすぐパッケージを開けて確認なさることをお勧めします(笑)。

それから、ヤスミン・アフマドの足跡を辿った本も出版されていました。映画監督としても知られているアミール・ムハンマドの「ヤスミン・アフマドの映画」(Amir Muhammad "Yasmin Ahmad's Films" Matahari Books, 2009)です。コンパクトな本ですが、ヤスミンとその作品について詳しく知ることができます。

 

あと、これは非売品なのでシンガポールの図書館にでも行かないと見られないかと思いますが(収蔵されているかどうかも不明)、シンガポールの映画会社キャセイが出した豪華本「映画の中のアジア女性」("Asian Women In Film" Cathay Organization, 2010)にもヤスミンが取り上げられています。この本は、キャセイの始祖とも言うべきミセス陸佑(ロク・ヤウ)を始め、葛蘭(グレース・チャン)、張曼玉(マギー・チャン)、クリスティン・ハキム、アイシュワリヤー・ラーイ、ワダ・エミら、アジアの映画界で活躍する、あるいは活躍した女性28人を取り上げたものです。1人あたり10ページ程度と短い紹介なのですが、ヤスミンも2番目に登場しています。

日本語で読める文献としては、京都大学の山本博之先生の研究室から出ている「マレーシア映画文化ブックレット/ヤスミン・アフマドの世界①『タレンタイム』」と、「マレーシア映画文化ブックレット/ヤスミン・アフマドの世界②『細い目』『グブラ』『ムクシン』」があります。文化的な背景も詳しく知ることができてとても役に立ちますが、映画の細部まで分析してあるので、まずヤスミンの映画を見てから目を通されることをお勧めします。興味のある方は、下記までお問い合わせ下さい。お返事をいただけるよう、ご配慮もお忘れなく、ね。

606-8501 京都市左京区吉田下阿達町46 京都大学地域研究総合情報センター 山本博之研究室

なお、前回の記事では『タレンタイム』のヒロインMelurのカタカナ表記を、<アジアフォーカス・福岡国際映画祭2009>のカタログ表記に合わせて「ムルー」にしたのですが、上記の研究書では「メルー」になっています。マレー語の「e」は「エ」と「ウ」両方の読み方があるのですが、「メルー」の方が正しいのかも。日本版のDVDが出ていたらそれを参照できるのですが、残念ながら未発売。『細い目』『ムクシン』『タレンタイム』あたりをDVD-BOXにして、どこか出してくれないかしら~。

そうそう、ヤスミンの遺作となった短編映画『チョコレート』はネットで見ることができます。『15のマレーシア』(2009/原題:15 Malaysia)シリーズの一つです。このシリーズはヤスミン映画の音楽を担当しているピート・テオがプロデュースしたのですが、他の監督の作品の中にヤスミン映画の常連俳優が出ていたりして、全部見てみるとあれこれ発見があります。

ヤスミンの作ったCFも、多くがYouTubeにアップされています。国営石油会社ペトロナスがスポンサーになった、各民族の主要な祭日を祝うCFをヤスミンが担当してたくさん作っているのですが、どれも愛おしいCFばかりです。その中でも、私の大好きな「恋するタン・ホンミン君」をこちらでどうぞ。君たち、ずーっとカラー・ブラインドでいてね~、と思ってしまいます。

最後にもう1枚、コミュニティシネマセンターからご提供いただいた『グブラ』のスチールを付けました。右端に立っているのが、『細い目』で「上海灘」を歌ってくれたお手伝いさんのヤムですが、彼女を演じるアディバ・ヌールは、『タレンタイム』では校長先生を演じています。こんな風に、お馴染みの俳優があちこちに登場するのもヤスミン映画の楽しいところ。今回の特集上映「ヤスミンの世界」(7.16~7.22)でも、ぜひ6本まとめてご覧になってみて下さい。

あ、そうだ、インド映画ファンの方にもう一つオマケ。『タレンタイム』で流れるテーマソングともいうべき、「おお、愛しい人よ」の元歌はこちら。マードゥリー・ディークシトの美しいダンスを見ながら、「♪オ~レ~ ピヤー♪」の予習をして見に行って下さいね。

 

 


コメント (5)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 三回忌を前にヤスミン・アフ... | トップ | アミターブ・バッチャンと「... »
最新の画像もっと見る

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (竹内)
2011-06-12 16:08:52
ご無沙汰しております。竹内です。タレンタイムのDVDが入っていなかったとは!それは残念ですね。やはりマレーシア、現場での開封確認が欠かせません!

でも『タレンタイム』DVDマレーシア版は、字幕なし(マレー語も広東語もタミルも、DVD内に一切の字幕が収録されていない。手話部分の解説もなし)なので、もし事前に字幕付きのモノをご覧になっていない方には、とても不親切なモノ。

これはもしかしたら神様からの「あなたは、もっときちんとしたコンディションのモノを手に入れるべきだ」との思し召しかもしれませんよ(^^;

<アジアフォーカス・福岡国際映画祭2009>での『タレンタイム』の日本語カナ表記は、カタログも字幕も私が監修させていただきました。(映画字幕等は別の方名義になっていますが、最終的な監修作業は当方で行ないました)

記事中で言及くださっているMelurの発音ですが映画の原音から拾った場合、ほとんどの場面で「マルー」と聞こえ、一カ所だけ「ムルー」と言っている様に聞こえます。マレー系の方への発音確認でも「(マに近いム、でもマともムとも言いきれない音)ルー」との事でした。という事で、マレー語のeを「ウかエで表記する」旧来の日本語表記法に従い「ムルー」としました。

この辺、7月の上映で私も再度確認したいと思います。
返信する
竹内様 (cinetama)
2011-06-13 18:31:14
コメントありがとうごさいました。こちらこそ、ご無沙汰しています~。

Melurですが、コメントをいただいたあと、ここで言及したブックレット「ヤスミン・アフマドの世界①『タレンタイム』」を見直したら、次のように注釈が書いてありました。

”「メルー」(Melur)は「メルー」と「ムルー」の中間の発音ですが、このブックレットでは「メルー」と表記しています。また、「マヘシュ」(Mahesh)は正確な表記では「マヘーシュ」となりますが、このブックレットでは「マヘシュ」と表記しています。このほか、このブックレットでの名前の表記方法は『タレンタイム』の日本語字幕での表記と異なる場合があります”

ちゃんと読み直してからブログに書けばよかったですね。すみません。それにしても、外国語のカタカナ表記は本当に難しいです。もともと、カタカナというか日本語音で表記すること自体に無理があるんですけどね....。
返信する
はじめまして (齋藤)
2017-05-03 14:50:22
突然のコメント、失礼いたします。
私は先日『タレンタイム〜優しい歌』を観賞し、大変感銘を受け、何とかDVDを購入できないかと、マレーシアへの渡航を計画している者です。
現地で購入された方がいらっしゃらないかと検索し、こちらのブログを拝見いたしました。
複数店舗を巡られた為、『タレンタイム〜優しい歌』は、どちらのDVDショップで購入したかはお分かりにならないとのことですが、どの地域のDVDショップに足をお運びになったのかだけでも、ご教授いただけませんでしょうか。
年月が経っておりますし、無理にとは申しませんので、どうぞよろしくお願いいたします。
返信する
齋藤様 (cinetama)
2017-05-03 16:19:49
コメント、ありがとうございました。

私が『タレンタイム』のDVD(の箱だけ)を買ったのは、ブキット・ビンタン地区のショップです。
当時は、ブキット・ビンタンの通りに面した所と、LOT 10の中(地下1階)、そしてショッピングモールのパヴィリオンの中にもDVDショップがあったのですが、昨年行った時にチェックしたらすべて姿を消していました。
KLでは、ブキット・ビンタン地区に限らず、DVDショップを探すこと自体が難しいのではないかと思われます。

シンガポールには、ムスタファというインド系の巨大スーパーマーケットがあって、マレーシアやインドネシアのDVDも売っているのですが、KLでケースだけで中身がなかった『タレンタイム』をつかまされたあと毎年行ってはチェックしているものの、『細い目』や『ムクシン』は見かけたことがあっても、『タレンタイム』にはお目に掛かったことがありません。
ネットで検索しても出て来ませんので(アメリカのアマゾンとか、どこかに在庫があれば必ず引っかかってきます)、これは、マレーシア現地においでになっても見つけるのが困難なのでは、と思います。

日本版DVDが出るはずですので、少し先になるかとは思いますが、それまでお待ちになってはどうでしょうか?
返信する
ありがとうございます (齋藤)
2017-05-03 16:30:40
早速お返信いただきありがとうございます。
現地に行けば見つかるはず、と漠然と考えておりましたので、入手困難と教えていただき、感謝いたします。
助言いただいた通り、日本でソフト化されるのを、気長に待ってみることにします。
突然の質問にもかかわらず、ご親切にどうもありがとうございました。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

東南アジア映画」カテゴリの最新記事