アジア映画巡礼

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『娘よ』でパキスタン映画@日本公開の幕開け

2016-12-27 | パキスタン映画

先日もちらとご紹介しましたが、パキスタン映画『娘よ』3月25日(土)より、岩波ホールを皮切りに公開されます。これまでに日本で公開されたインド映画は80本を超えるというのに、隣国パキスタンの映画は、国際共同製作であるドキュメンタリー映画の『セイビング・フェイス 魂の救済』(2012/アメリカ・パキスタン/もWOWOWで放映)や『ソング・オブ・ラホール』(2015/アメリカ・パキスタン<アメリカのみのクレジット表記もあり>)ぐらいで、どちらも女性監督シャルミーン・ウベード=チナーイの作品です。いずれにせよ、劇映画では映画祭上映はあっても一般公開された作品がなく、今回のパキスタン・アメリカ・ノルウェー製作による『娘よ』が初めての公開作品となります。まずは、データをどうぞ。 

『娘よ』 公式サイト


2014年/パキスタン・アメリカ・ノルウェー/ウルドゥー語/93分/原題:Dukhtar/英題:Daughter

 脚本・監督・製作:アフィア・ナサニエル
 主演:サミア・ムムターズ、サーレハ・アーレフ、モーヒブ・ミルザー 

 配給:パンドラ
 パブリシティ:スリーピン 

※3月25日(土)~4月28日(金)まで岩波ホールにてロードショー

© 2014-2016 Dukhtar Productions, LLC

作品の舞台は、カラコルム・ハイウェーのあるパキスタン北部の山岳地帯。この一帯には様々な部族民が暮らしており、そんなある部族の長ドーラット・ハーン(アーシフ・ハーン)に嫁いだ女性、アッララキ(サミア・ムムターズ)が本作の主人公です。アッララキと夫は年がだいぶ離れており、2人の間には10歳になる娘ゼイナブ(サーレハ・アーレフ)がいました。アッララキは夫側からの一方的な求婚で15歳でこの地に嫁いで来たのですが、その縁組みをする時には、夫の弟シェフバーズ・ハーン(アジャブ・グル)が兄にかわって顔を見に来ました。そしてそれ以来、シェフバーズ・ハーンはアッララキに惹かれているのでした。

© 2014-2016 Dukhtar Productions, LLC

シェフバーズ・ハーンは兄ドーラット・ハーンに部族間の緊張が高まっていることを伝え、2人は車で出かけますが、途中でドーラット・ハーンは対立する部族に拉致されてしまいます。その部族の長である年老いたトール・グル(アブドゥッラー・ジャーン)は、ドーラット・ハーンに和解案を提案しました。その条件は、「お前の娘をわしの嫁にすること」でした。戻ったドーラット・ハーンからこの条件を聞かされたアッララキは、娘ゼイナブを自分のような目には遭わせたくない、と決意します。トール・グルとゼイナブの結婚式の日、アッララキはゼイナブを連れて家を抜け出しました。もしつかまれば、死が待っているであろう逃避行。アッララキは途中から、若いトラック運転手ソハイル(モーヒブ・ミルザー)の運転するトラックにかくまってもらうのですが、シェフバーズ・ハーンとトール・グルの手下の執拗な追跡が迫ってきます...。

© 2014-2016 Dukhtar Productions, LLC

見る人を驚かせるのは、本作がエンターテインメントとしても高い完成度を保っていること。女性問題や部族社会の特殊性を描くだけでなく、追いつ追われつのサスペンスにヒロインと2人の男とのロマンスをからませた構成は、最後まで観客を飽きさせません。逃避行シーンも、山岳地帯の入り組んだアップダウンの小道から始まって、砂漠のような荒涼たる土地を通るハイウェー、ソハイルが友人にかくまってもらう緑と水の豊かな土地、そして大都会のラホールなど、上手に変化をつけた背景の中で描かれていくので、メリハリが効いています。

© 2014-2016 Dukhtar Productions, LLC

そんな起伏に富んだストーリーを支えるのは、ヒロインであるアッララキの凜とした美しさ。冒頭の自宅では、娘に英語を教えてもらうシーンで幼女のような顔を見せ、その後は娘を守る強い決意を漲らせる母親の顔となり、さらに同行するソハイルにだんだん惹かれていくにつれて、女性らしいやわらかな表情を見せていく...。アフィア・ナサニエル監督が最初からこの人に、と決めていたという女優サミア・ムムターズは、もともと舞台女優だったとか。「彼女がこの役を引き受けてくれた時は、飛び上がって喜び、他のキャスティングも自信を持って進めることができました」と監督は語っています。『娘よ』以前にはテレビドラマ1本と、ある映画の脇役に出ただけですが、本作の公開で俄然注目を浴びたようで、翌2015年には『Moor(母)』という作品にも主演したほか、主役を演じたテレビドラマ『Udaari(飛翔)』(2016)も人気を呼んでいるようです。

© 2014-2016 Dukhtar Productions, LLC

また、娘ザイナブ役を演じたサーレハ・アーレフは、テレビでパキスタン版「セサミストリート」に出演していたところを監督に見いだされたそうで、CFにもたくさん出演しているのだとか。10歳の少女という設定ですが、時々ドキッとするような大人の表情を見せ、早くも大女優の片鱗を感じさせます。元ムジャヒディン(イスラーム教徒ゲリラの戦士)のトラック野郎ソハイルを演じたモーヒブ・ミルザーも舞台俳優から映画俳優に転進した人で、すでに数本の作品に出演しているほか、テレビの人気オーディション番組「パキスタン・アイドル」の司会も担当している人気者だとか。他の男性キャストもそれぞれがハマり役で、見応えがあります。

© 2014-2016 Dukhtar Productions, LLC

途中には歌も何曲か入り、いずれもBGM使用ではあるものの、エンターテインメント性を高めてくれます。女性映画としてだけでくくってしまうには惜しい、広がりを持った『娘よ』は、我々のパキスタン映画に対する目を開かせてくれるはず。最後に予告編を付けておきますので、来年3月末公開時にはぜひ本編を見てみて下さいね。

日本で初めて公開されるパキスタン映画/『娘よ』予告編


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