アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

韓国映画と香港映画の力作を見ました

2016-08-18 | アジア映画全般

タイで見逃した韓国映画『Train to Busan(釜山行き)』をやっと見ることができました。韓国ではすでに動員数1100万人を突破しているというヒット作です。「韓国初のゾンビ映画」というキャッチコピーも付いており、確かに『インド・オブ・ザ・デッド』ならぬ『コリア・オブ・ザ・デッド』という作品でした。


まず、前段の設定として、やり手のファンドマネージャー(コン・ユ)の身辺事情が描かれます。彼は妻とは離婚寸前で、妻は釜山の実家に帰ってしまっています。彼には小学生の娘がいて、その祖母である彼の母親が面倒を見ているのですが、常に自分中心の父親に対して娘も不満を抱いており、自分の誕生日にどうしても釜山の母親に会いに行きたいと言い張ります。仕方なく、忙しい仕事を休んで、娘と共に早朝の釜山行き特急列車に乗り込むファンドマネージャー。それには、高校の野球部の一団や身重の妻(チョン・ユミ)に付きそう男(マ・ドンソク)らが乗り込んでいました。ところが、ソウル発車間際に全身血だらけの1人の女性が飛び乗り、そこから恐ろしいパニックへと発展していくことに。列車は無事に釜山に着けるのでしょうか...。


ネタバレを戒めるパロディ・ポスターが上の図のように作られている(入れ込まれた文字がネタバレを非難したものになっているとか)、とのことなので、詳しいストーリーは伏せますが、ある状況下で人々がゾンビ化していき、列車内がパニックになる、という作品です。列車という舞台設定と、人々の人間関係を上手に使った脚本は、一瞬たりとも気を抜かせることなく、最後まで見る人を引っ張っていきます。文字通り手に汗握る展開が続き、2時間ほどの上映時間があっという間でした。主人公を演じたコン・ユやマ・ドンソクらの演技もうまくて、特に幼い娘役の女の子は光る演技を随所で見せてくれます。ヨン・サンホ監督はこれがデビュー実写劇映画デビュー作(※)とのことですが、どうやって撮ったのかと目を見張らされるアクション・シーンの数々など、とても監督第1作とは思えません。これは日本でも公開されると思うので、皆様、楽しみにお待ち下さいね。予告編を付けておきます。

[日本語字幕]<釜山行き>メイン予告編


香港映画も、力作を見ました。まずは『Line Walker(使徒行者)』からご紹介しましょう。主人公は警部のQ Sirこと喬正男(呉鎮宇/ン・ジャンユー)で、臥底、つまりアンダーカバー・コップ(潜入捜査官)の統括をしています。現在は恋人でもある丁小嘉(余詩曼)が潜入捜査官のファイルが消された事件をいろいろ探っているところですが、その彼女にBlack Jackと名乗る男から連絡が入ります。その頃黒社会の若き実力者藍博文(張家輝/ニック・チョン)は親友邵志朗(古天樂/ルイス・クー)と共に、ある投資集団のパーティーを引っかき回して警察を翻弄していました。邵志朗がブラック・ジャックでは、と当たりを付けたQ警部は、丁にマカオに行って彼とコンタクトを取るように命じますが...。

使徒行者

一体誰が潜入捜査官なのか、一切わからないままお話が進行します。途中、どんでん返しもいくつかあって、舞台もブラジルから始まって、香港、マカオ、またブラジルとめまぐるしく変わり、観客を飽きさせません。『インファナルアフェア』以来何度も使われてきた潜入捜査官という設定ながら、女性も一役買う本作は、緊迫感が最後まで持続してとても面白かったです。監督は文偉鴻(ジャズ・ブーン)という人で、これまではずっとテレビドラマの仕事してきた人です。2014年に「使徒行者」というテレビドラマを作り、いろんな賞を受賞したのですが、その映画化ということで監督に起用されたようです。1990年代半ばからテレビの演出に携わっているのですでに40代ではと思われますが、また楽しみな監督が1人出て来ました。予告編はこちらです。

《使徒行者》電影版 - 8.11 兵行險著 (TVB)


『使徒行者』のような作品は、本当は広東語版を見たかったのですが、シンガポールではすべて華語、標準中国語での上映となり残念です。続いてもう1本、これも広東語で見たかった作品、『Cold War 2 (寒戦2)』も見ました。こちらは2012年に作られた『コールド・ウォー 香港警察 二つの正義(寒戦)』の続編で、監督は前作と同じ梁樂民(リョン・ロクマン)と陸剣青(サニー・ロク)です。

Cold War 2.jpg

『寒戦2』は前作で亡くなった鄺警部(林家棟/ラム・ガートン)の葬儀から始まり、続いて警察病院に収容されている李文彬前副署長(梁家輝/レオン・カーファイ)の息子ジョー(彭于晏/エディ・ポン)を解放しろとして、現在は署長である劉傑輝Sir(郭富城/アーロン・クォック)の妻が人質に取られる事件が発生します。「家族を守れなくて、香港全体の警備などできない」と劉Sirはジョーを自ら連れて一味に指定された場所に向かいますが、その途中ジョーは奪還され、劉は責任を問われることに。著名な弁護士簡(周潤発/チョウ・ユンファ)を始めとする立法会のメンバーから追求を受けることになりますが、簡弁護士は自分のスタッフを使って、独自にこの事件を調べていました。また、息子のことなので、いったんは引退していた李Sirも復帰してことに当たりますが、やがてその裏には元警官の大物がからんでいることが明らかになっていきます....。

《寒戰 2》首支預告.2016 年 7 月強勢回歸 (Cold War 2 - Teaser)

予告編は上の通りですが、前作に続き緻密な脚本と出演者たちの名演で、警察を舞台にした大きな陰謀をたっぷりと見せてくれる作品になっています。驚きのチョウ・ユンファの参加も、スノビッシュな弁護士を演じさせることで特別感を持たせ、前作からの出演者たちとうまく調和が取れていました。アーロンも、少し白髪が出始めて中年に近づいている劉Sirをガチで演じていて、表情の決まり方もハンパではありません。アーロン、童顔ですがもう50歳なんですね。昨年は映画『踏血尋梅』で数々の賞を受賞しましたが、『寒戦2』の演技もきっと多くの賞にノミネートされることでしょう。

ほかにも、中国語映画では『封神伝奇』という李連杰(ジェット・リー)やレオン・カーファイら豪華キャストの作品も見たのですが、顔ぶれとCGだけがやたらゴージャスな駄作でした(泣)。『釜山行き』を見たのはリトル・インディアにあるモール内のGVシティ・スクエア、『使徒行者』『封神伝奇』を見たのはGVサンテク・シティ(上写真左)、『寒戦2』を見たのはGVヴィヴォ・シティ(上写真右)という風に、あちこちの映画館で見ているのですが、これらは大体毎回映画を見に来るお馴染みのシネコンです。今回GVサンテク・シティには素敵なスタッフの方がいて、ちょっと写真を撮らせてもらいました。実は、昔「香港電影通信」を出したり、王家衛(ウォン・カーウァイ)監督作を配給したりしていたSさんにそっくりで、とても明るく社交的なスタッフの方。いろいろかまってもらって嬉しかったです。なお、平日はシニア料金があるので、9シンガポールドル(約675円)の映画がいずれも4.5シンガポールドルで見られました。


そして、このサンテク・シティではとんでもない発見もしてしまいました。1本目の『封神伝奇』が終わって、あまりにも寒いのでいったん1Fに降りて地上に出たところ、目の前に見覚えのある噴水が。これって、インド映画『Krrish(クリシュ)』(2006)に出て来たあの噴水では!


『クリシュ』のシンガポールでのワイヤーワーク・シーンは、香港の程小東(チン・シウトン)監督がアクション振り付けをした名シーンなのですが、赤い屋根瓦の建物がラッフルズ・シティあたりのものなので、噴水もその近くのものかと思っていました。サンテク・シティにはこれまで何度も来ていたのに、気がつかなかったとは何というドジ。2本目の映画を見てからあらためて地階に降りて、じっくりと噴水を見てみました。映画の中よりは赤みが少ない色合いなので、もしかしたら映画に出て来た噴水の双子噴水とか?


というわけで、噴水の真下に出られる出口で行く人に「足下がすべりますから気をつけて」と注意を与えたりしていた方に聞いてみました。「あなた、あのインド映画見たの? 『クリシュ』はまさにここでロケされたんですよ」と証明してもらい、外に出て写真を撮らせてもらいました。この地階も、フードコートやスーパーがあるので何度も来たのですが、右写真のようにガラス越しに見ていて全然気がつかなかったのでした。


インド映画好きの皆さん、シンガポールにおいでになることがあったら、ぜひサンテク・シティの『クリシュ』噴水を訪問して下さいね。シティ・ホール駅からすぐの所ですよ~。

※(2016.9.20注記)

先ほど、韓国映画研究の第一人者ソチョンさんからメールをいただき、下の「」内のようなご指摘をいただきました。そのため、この部分を訂正してあります。ただ、その下の部分、「とても監督第1作とは思えません」は訂正がしにくいため、そのままにしてあります。悪しからずご了承下さい。 

「ヨン・サンホは元々インディーズ・アニメーション作家でして、今回劇映画に進出した変わり種です。日本で言えば庵野監督と同じ経歴になりますでしょうか。ヨン・サンホの作品は短編時代から始まり、長編の代表作も花コリで上映しておりまして、東京にゲストで招聘したこともございます。最近の若いクリエイターは発表媒体にこだわることなく、様々な活動を行いますので今後もアニメーションから劇映画に進出してくる人材は増えてくるかも知れません。そんな流れもございますので、韓国アニメーション、継続してチェックしていただければ思わぬ青田刈りができるやも知れません」

ソチョンさん、わざわざご指摘ありがとうございました~。


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