アジア映画巡礼

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ヨン・サンホ監督に瞠目!<2>『ソウル・ステーション/パンデミック』

2017-08-05 | 韓国映画

ヨン・サンホ監督のアニメ最新作は『ソウル・ステーション/パンデミック』(2016)。『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)の前日譚と言われていますが、むしろ基本アイディアというか、ここから「ゾンビ」と「駅」のアイディアを発展させ、さらに大規模なパンデミックものにした実写映画が『新感染 ファイナル・エクスプレス』と言うことができそうです。というわけで、まったく別物として見た方が面白い『ソウル・ステーション/パンデミック』ですが、『我は神なり』(2013)よりも軽やかなタッチで、アニメの面白さを堪能させてくれます。まずは、基本データをどうぞ。 


『ソウル・ステーション/パンデミック』 公式サイト

2016年/韓国/92分/アニメーション/原題:서울역(ソウル駅)/英語題:Soul Station
 監督:ヨン・サンホ
 声の出演:シム・ウンギョン、リュ・スンリョン、イ・ジュン
 日本語吹替:白石涼子、前野智昭、辻親八
 配給:ブロードウェイ
 配給協力:コピアポア・フィルム

9月30日(土)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー


オープニングの、空を描いた画面がとてもきれいです。これから起こるであろう凄惨な世界とは対極にある美しい世界をまず見せておいてから、画面には、ソウル駅前の繁華街をヨロヨロと歩く白髪頭のはげかけた老人が登場します。首から血を流していて、道行く人々も驚くのですが、すえた臭いが老人の体から漂うらしく、「ホームレスか、もう!」という感じで皆避けていきます。ソウル駅の地下にある自分の居場所へと老人は辿り着きますが、そこにやってきた老人の弟はびっくり仰天。パニック状態になって、シェルターに助けを求めに行きます。

その頃、安宿に泊まっているヘスン(声の出演:シム・ウンギョン/日本語吹替:白石涼子)は、恋人のキウン(声の出演:イ・ジュン/日本語吹替:前野智昭)が出て行ったまま帰ってこないのに腹を立てて探しに出ようとしていました。キウンは風俗店から逃げてきたのですが、その後キウンと出会い、この人なら助けてくれる、と逃避行を続けていたのでした。ところが王子様のメッキはすぐにはげ、ヘスンにもキウンがどうしようもない奴だとわかってきます。今回ネットカフェに行ってみると、キウンは何と出会い系サイトにヘスンの姿をアップして、客を募っていました。怒るヘスンに、「こうでもしなきゃ旅館代が払えないだろ!」と逆ギレするキウン。

友人から教えられてその写真を見つけたのが、ヘスンの父親(声の出演:リュ・スンリョン/日本語吹替:辻親八)でした。父親は出会い系サイトの客をよそおい、キウンと会います。ところが2人が旅館に戻った時、旅館ではとんでもない出来事が起こっていました...。


人々がゾンビ化する描写は、アニメならではの大迫力。皮膚にピキピキと走る血管や、捕食したあとの飛び散る血糊のタッチなど、「うわぁ!」という感じでこちらに迫ってきます。これを再現するのですから、『新感染 ファイナル・エクスプレス』の方は大変だったろうなあと思いますが、CGも使って、実写版もこれまた見事な描写が重ねられています。『ソウル・ステーション/パンデミック』が絵コンテの役割を果たしたのかも知れませんね。

ゾンビ化した人々から逃げ惑うのは2グループに分かれていて、一つはヘスンとホームレスのおじさん、もう一つはキウンとヘスンの父親。それぞれに危機一髪場面が何度も登場し、まるでゲーム画面を見ているのかと思うほど。そんな中で、ヘスンの父親はドえらく胆が座っていて、キウンにてきぱき命令し、自分も行動するなどして、この人が皆を助ける希望の星になるのか、と期待がふくらみます。ところがところが、そこにどんでん返しがあって...と、脚本の巧みさは『我は神なり』に勝るとも劣りません。


あとで冷静になって考えてみれば、ゾンビ化するまでの潜伏期間が人によってはなはだしく違ったり、あの人はどこから感染したの?というハテナがあったりするのですが、見ている間は必死で走るヘスンに合わせてこちらも息をあげ、ゾンビを前に「武器を持ってこい!」とキウンに怒鳴る父親に「おっさん、やるやん!」とエールを送り、と、主人公たちに併走している気分で終盤まで持って行かれてしまいました。ゾンビ化する人物たちの描写も細かくて、ヨン・サンホ監督の凝り性ぶりをつぶさに感じることができます。

今回の試写は日本語吹替版を見せていただいたのですが、できれば韓国語版も見てみたいです。何せ、『怪しい彼女』(2014)のシム・ウンギョンがヘスン役ですし、その父親役が『神弓』(2011)や『7番房の奇跡』(2013)のリュ・スンリョンとあっては、見ずには、というか聞かずにはいられません。実は、『我は神なり』を見ている時、この鬼畜な親父役を実写でやるとすればリュ・スンリョンかな、と思ったりしていたので、ヨン・サンホ監督の選択には拍手パチパチでした。

それと、セリフにはどうやら罵詈雑言ワードが山と使ってあるらしく、以前YouTubeで韓国での紹介映像を見た時はやたら「ピー!」音が出て来たため、そのニュアンスを確かめてみたいのです。日本語吹替版でもかなりきつい物言いがなされていましたが、日本語はもともと罵り言葉が貧弱なため、原語よりはお上品になっているはず。そのあたり、シム・ウンギョンの声とリュ・スンリョンの声で確かめてみたいです。私と同じくこの2人がお好きな方は、ぜひ韓国語版でどうぞ。新ピカの大画面にゾンビが溢れ、シム・ウンギョンとリュ・スンリョンの声で罵詈雑言ワードが飛び交う。楽しみですね~。最後に予告編を付けておきます。

韓国発パンデミック映画に前日譚があった!/映画 『ソウル・ステーション:パンデミック』予告編


 

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