お薬ブログ

病院で出される薬や病院での出来事などあれこれ

耐性菌について追加

2005-04-13 13:24:31 | 抗生物質
以前の耐性菌の話をもう少しだけ。現在の薬剤耐性の問題は抗生物質を乱用することによって起きたと書きました。抗生物質の投与が始まって以来、細菌も生き延びるためにあらゆる手段で抗生物質に対抗しようとしたんですね。ではそのことについて見ていくことにしましょう。

とりあえず手っ取り早い方法として、薬を効かなくする方法がありますね。代表的なものがペニシリンを分解するペニシリナーゼでした。ペニシリナーゼはβラクタム環を分解する働きを持っているので、同じ構造をもつセフェム系に対しても作用します。ですので、ペニシリナーゼはベータラクタマーゼともいわれます。したがって、セフェム系の薬剤としてはこのベータラクタマーゼがに対して抵抗力をもたせる、あるいは抗菌スペクトルを拡大する方向で開発が進められました。
その他の薬剤不活性化の方法として、薬剤が細胞内に侵入できないようにする。または薬物の透過性を低下させるという方法です。細菌が細胞膜を変化させてしまうということですね。薬も中に入れないと効果が発揮できませんから合理的な手段ですね。
また、薬の効くところを変えてしまうという方法です。マクロライド系薬剤の作用点はリボソームでしたが、このリボソームのたんぱく質構造を変化させて薬が結合できなくして薬の働きを阻害します。
こうやって見てみると様々な方法で薬を無効にしてしまう仕組みを確立していることが分かります。
そしてこれらの耐性の情報は同種間だけでなくかなり広範囲の別種の細菌にも伝達され、さらに他の細菌から耐性の情報を受け取ることもできるので、数種類の耐性菌が存在すれば比較的容易に多剤耐性菌が出現してしまうことが分かると思います。
抗生剤の投与は日本では日常的に行われ「風邪」の診断で普通に処方されます。風邪の主たる原因はウイルスであることが多いにもかかわらずです。諸外国では考えられないことが日本では普通だったりします。耐性菌の問題もそうですが、昨日の皮膚障害のこともありますからそろそろ外来での抗生物質の投与は見直されてもいいのではないかと思います。