chuo1976

心のたねを言の葉として

日本軍の支配下だった上海でのコンサートで…

2014-09-19 02:41:04 | 映画
余録:日本軍の支配下だった上海でのコンサートで…
毎日新聞 2014年09月17日 00時07分(最終更新 09月17日 00時12分)


 日本軍の支配下だった上海でのコンサートで「何日(ホーリー)君(ジュン)再来(ザイライ)(いつの日君帰る)」を歌った李香蘭(りこうらん)こと山口淑子(やまぐちよしこ)さんは、官憲から「重慶政府か共産党に帰ってきてほしい」という本心かと疑われた。その官憲は彼女を中国人だと信じていた
▲一方で中国側にはこの歌を日本軍が流行させた亡国の歌だと排斥する動きもあったという。それが今日も歌い継がれるのは、30年ほど前に台湾の歌手テレサ・テンが李香蘭の「夜来(イエライ)香(シャン)」と共にカバーしてヒットしたからだ
▲この時テレサは「何日君再来」に中国の民主的統一の願いを託したといわれ、片や中国当局は退廃的だと一時販売を禁じた。いや一つの歌ですら争闘の渦の中、波瀾万(はらんばん)丈(じょう)の運命をたどる現代アジア史である。それを一身の運命として生きるとはどんな体験なのだろう
▲日本が満州国を造った中国東北部に生まれ、日本の国策の下で中国人女優・歌手「李香蘭」として前半生を生きた山口さんである。終戦で中国側に「漢奸(かんかん)(裏切り者)」として処刑されるのを危うく免れて帰国、戦後は政治家としても日中友好に尽力した生涯だった
▲後年山口さんが李香蘭時代の作品で最も恥じたシーンがある。映画で日本人男性に平手打ちされ、初めて心を開く中国人女性を演じた場面だった。殴られ、しかも好意を抱く--そのころの中国人がこれに二重の屈辱を感じることを想像できなかった当時の日本人だ
▲両国にまたがる長い旅を終えた山口さんには、昨今の日中間の認識のミゾも心配だったろう。だが美しい歌を聞けば心動く同じ人間ではないか。「何日君再来」や「夜来香」はその証しとして残された。
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