函館市とどほっけ村

法華宗の日持上人にまつわる伝説のムラ・椴法華。
目の前の太平洋からのメッセージです。

元号は誰のものか

2017年06月12日 09時28分23秒 | えいこう語る

▼「元号が変わっても政治や経済体制が変わるわけではないが、社会の空気は変化する」というのは、ノンフィクション作家の保坂正康さんだ。2019年にも今上天皇が退位されるようだが、果たして、我が国を取り巻く社会の空気はどのようになるのだろうか。

▼明治天皇は、祭祀を司る白装束から軍服に着替え、富国強兵国家の象徴として、近代国家への確立に向け大きな流れを作った。天皇制は「教育勅語」により、その姿が次第に確立されていく。やがて、世界の潮流に飲み込まれ、昭和天皇という象徴の下に、戦争へと突入する。我が国は近代という短い期間に、世界大戦という歴史上最大の虐殺行為に参加すことになる。

▼このように歴史をとらえると、天皇という象徴は、その時代の空気を作り出す、大きな力を持っていたことになる。1945年の敗戦により、大日本帝国憲法が廃止され、立憲主義の現憲法になりここで社会の空気が一変する。大きな特徴は「憲法第9条」により、軍事国家から、平和国家に変わったことだろう。

▼戦後、天皇は憲法で象徴と規定されたが、明治時代から、天皇は日本の象徴であったのではないだろうか。そうであれば、戦後の新たな象徴は「憲法第9条」のはずではなかったのか。しかし、1945年以降も、昭和天皇は「戦争と平和」という二つの重荷を背負い、我が国の「戦後の復興の象徴」としてその役割を果たしてきた。

▼だが、その象徴としての役割も、憲法第1章で制限されている。特に第3条では「天皇の国事に関するすべての行為は、内閣の助言と承認が必要」とある。天皇が退位するということも、元号を改正することも、内閣がすべてを握っているということになる。となれば、社会の空気を変えるのは内閣だということになるのではないか。

▼アベ内閣の、今後の施策を確認してみよう。アベ一強と言われ、本人は2020年の次期五輪まで政権を渡さぬつもりだ。2019年までには「憲法を改正し施行したい」とまで断言した。さらに同年に、元号を改正する予定だ。2020年の東京五輪こそ、アベシンゾウ総理が目指す「戦後レジームの解体」であり、国防軍を背景にした、新たな「国威発揚」の年にするのだろう。

▼1877年(明治9年)に開村した私の村も、2014年、人口減により自治権を放棄し、函館市に吸収合併された。地域の人口も減少し、近い将来、明治時代の人口に戻って行くだろう。それは、全国各地の過疎地域も同様だ。その頃には、さらに国家による地域再編が行われるだろう。それは、再び強固な中央集権国家体制へと、社会の空気を一変させることになるのではないだろうか。

▼戦後まもなく生まれた私も、昭和天皇と共に「憲法第9条」の社会で生きてきた。平成に変わり、今上天皇と共に、さらに平和の空気を大事にしてきた。だが、間もなく元号が変わり憲法が改正され、社会の空気が戦争ができる国へと一変するに違いない。

▼明治から昭和の敗戦までは「教育勅語」が社会の空気を作っていた。戦後はそれが廃止されたが、再び「道徳の教科化」が学校現場に進出してきた。アベ総理得意の「アベノマジック」で、道徳を教育勅語に変身させかねないような意気込みだ。

▼アベ政権下で、社会の空気を変える元号改正とは、いったい誰のものか。私は、総理が指名する、元号改正委員会による内閣のものではなく、国民の総意で作られるものだと思うが。

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