消費が多様化すれば、品ぞろえや値決めで小回りがきく地方企業が強い――多極世界に挑む [5]

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 [序章 多極世界に挑む]
 [1] アフリカからの教訓
 [2] トヨタの出直し宣言
 [3] 岐路の「環境先進国」
 [4] マネー、日本素通り
 [5] 地方にある「国際価格」


[5]地方にある「国際価格」――小回り生かし外資に勝つ
【「 企業 強さの条件 」09.11.22日経新聞(朝刊)】

札幌市の中心部から車で10分。食品スーパー、ビッグハウスエクストラの店内に「新北海道価格」の値札が躍る。モヤシ1袋19円は近隣にひしめく全国チェーンの半額。競合店が値下げに動くと、「6枚入り食パン75円」など追随できない価格にすぐさま引き下げる。年間売上高は50億円。国内スーパーの単一店舗でトップ級に育った。

◆「まだ値下げ余力」

運営するアークスの社長、横山清(74)は「所得が低下しても十分な生活ができる価格」を掲げる。店長の大坂光克(52)は総菜の容器をポリ袋にし、電気代もぎりぎりまで削る。同店の売上高経常利益率は7%と業界平均の2倍以上。大坂は「値下げ余力はまだある」と話す。価格競争の背景には消費不振があるが、「デフレ」の要因となる利幅を削っての値下げ競争とは一線を画す。

イオンやセブン&アイ・ホールディングスなど大手で苦戦する中、地方小売の伸びが目立つ。東北が地盤のユニバースや東海・北陸のバローなど地方の上場有力スーパーの業績予想は半数以上が増収増益だ。

鹿児島県阿久根市に敷地が東京ドーム3.7倍という超大型店「A―Zスーパーセンター」を構えるマキオも10年2月期に30%近い増収の見通し。社長の牧尾英二(68)は「消費が多様化すれば、品ぞろえや値決めで小回りがきく地方企業が強い」と言い切る。

価格競争力に外資も注目する。首都圏地盤の食品スーパー、オーケー(東京・大田)は価格交渉を進めやすい2位以下の企業の商品を中心に大量調達する。毎日安く売るからチラシの配布や特売スペース設置のコストもかからない。社長の飯田勧(81)は今秋、思わぬ訪問を受けた。「これほど支持される理由は」。店舗にまで足を運び質問をしたのは年間売上高が40兆円に迫る米ウォルマート・ストアーズの幹部だ。

同社の国際事業CEO,ダグ・マクミロン(43)は「いずれ他社を買収し、日本でもトップを目指す」と公言する。傘下の西友を通じ850円ジーンズなど米国価格を持ち込んだウォルマート。「地方で食品スーパーを探している」。こんな情報が駆け巡る。

グローバル化が進んでも、国や地域ごとの消費動向に違いは残る。半面、ネット通販の普及などで「価格はフラット化する」。法政大学教授の矢作敏行(64)は「国際価格」の広がりを予測する。本社所在地や企業規模の大小は関係ない。消費者は世界を見渡して安い商品を探し出す。

◆ニトリVS.イケア

北海道の地方企業から家具最大手になったニトリ。アジア生産で低価格を実現してきたが、次のターゲットは物流だ。社長の似鳥昭雄(65)は「割高な日本のインフラは可能な限り使わないようにしたい」と話す。中国に持つ大型物流センターに商品を集め、必要に応じて日本各地の店舗に配送する構想を描く。

ニトリが意識するのはスウェーデンに本拠を置くイケアだ。26カ国に展開する世界最大手の価格にニトリはほぼ並ぶ。2人掛けソファはイケアの世界共通価格2万8000円に対しニトリの製品は2万9000円。両社はさらに激しい値下げ合戦を繰り広げる。ニトリの効率経営が巨大外資の価格戦略を変える。

製造業のリストラが直撃し、公共事業に代わる産業の育成も遅れる地方。地域に足場を築く企業は逃げ出すわけにはいかない。有力な武器は人件費などコストの安さだ。だが民主党が政権公約として最低賃金の大幅な引き上げが実施されれば、全国チェーンにはない機動力が失われる懸念はある。国際価格で世界に挑む地方企業。その活力を引き出せないと、日本経済の本格回復は遠のく。  (敬称略)

=この項おわり

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「企業】取材班=篠原洋一、中村直文、山川龍雄、河西格、
中山淳史、池光靖弘、高橋徹、森松博士、吉田渉、桑原健、
尾島島雄、田口良成、川上穣、中山修志、稲葉俊亮、加藤宏
一、田中深一郎、松本勇、山本拓
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