電脳筆写『 心超臨界 』

知識の泉の水を飲む者もいれば、ただうがいする者もいる
( ロバート・アンソニー )

岡本太郎は、実際には熱心な画材研究家でもあった――吉村絵美留さん

2007-11-20 | 05-真相・背景・経緯
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「発見された技 十選」
 ▽1 ルノワール「足を拭う水浴の女」
 ▽2 コロー「道」
 ▽3 ロートレック「ムーラン・ルージュにて」
 ▽4 ユトリロ「ラパン・アジル」
 ▽5 クールベ「波」
 ▽6 ローランサン「ヴァランティーヌ・テシエの肖像」
 ▽7 佐伯祐三「ガス灯と広告」
 ▽8 藤田嗣治「五人の裸婦」
 ▽9 東郷青児「婦人象」
 ▽10 岡本太郎「赤のイコン」


【「発見された技 十選」07.11.19日経新聞(朝刊)】
▽10 岡本太郎「赤のイコン」――絵画修復家・吉村絵美留
イメージ → http://www.new-york-art.com/taro-Icon-in-Red.htm

何と単純な絵なのだろう。にもかかわらず、すさまじいパワーを感じる。「赤のイコン」は、岡本太郎の特色である原初性が存分に力を発揮した作品の一つだ。ただでさえ鮮烈な赤の背景の中で、黒のモチーフがことさら強い主張を放つ。

川崎市岡本太郎美術館が開館の準備をしていた十数年前、私はずいぶんたくさん岡本の作品の修復をさせていただいた。その中で、この作品を見たとき、「普通の画家とは色の質が違う」と感じた。黒の部分に異様といえるほどのつやがあったのだ。修復のために溶剤でテストすると、その黒は普通の画家が使わない人工漆の一種、カシュウであることが分かった。当時存命だった岡本の養女の敏子さんにアトリエでの記憶をたどってもらうと「確かにカシュウを使っていた」という。

一方、「エクセホモ」など岡本の別の作品では、つやのまるでない白が描かれていた。調べてみると、日本画で使う顔料である胡粉(こふん)を使っていた。つやがないとほかの色の照り返しがないので、かえって白が強く感じられるのだ。

岡本は即興的なイメージが強い芸術家だが、実際には熱心な画材研究家でもあったのだと思う。

(1961年、油彩・カンバス、194×140.3センチ、川崎市岡本太郎美術館)

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