園長だより

学園の様子と、園長の日々想うこと、日々の学びを、つれづれに書きしるすブログです

愛はすべてではない

2017年07月18日 05時41分46秒 | Weblog

昨日、ブルーノ・ベッテルハイムさんの「愛はすべてではない」という本が届きました。

わたしが、ちょうど20年前に横浜いずみ学園という施設(児童心理治療施設)で4泊5日の宿泊研修でお世話になった時に、紹介していただいた本です。

絶版になっていて手に入らなかったのですが、先日、インターネットで調べたら中古本で値段は高くなりますが、手に入ることがわかり、購入しました。

この本の著者は、ウイーンで生まれたユダヤ人の精神科医で、児童臨床に携わってきた方です。

その後、ナチスの強制収容所での生活を余儀なくされ、その体験が情緒障害児と当時呼ばれた子どもたちの理解に役立ち、アメリカのシカゴ大学で45名定員の情緒障害児治療施設でかなり重症度の高い子どもたちの治療に一生を捧げた方です。

アメリカではこの「愛はすべてではない」という本は、ベストセラーとなり、ペーパーバック版も出版されたとのことです。

日本では1968年に村瀬孝雄さん、村瀬嘉代子さんのご夫婦によって翻訳されています。

20年経って手に入れたかった本を昨晩手にし、感慨無量でしたが、なんと日本語版に対する序文も冒頭に掲載されていました。

村瀬嘉代子さんは、日本の児童養護に深く関心の高い方です。

20年前に横浜いずみ学園の四方園長さんとはご友人という関係で、横浜いずみ学園は、この「愛はすべてではない」という本をとても大事に考えていました。

愛という情緒的な関わりだけでは、深く重い情緒的な傷を負った子どもたちの理解には十分ではなく、より子どもたち一人ひとりの世界を知性によって理解することが大事である、という考えのもとに書かれた本です。

今の時代は、情緒障害児という表現に問題があり、情緒障害児短期治療施設は「児童心理治療施設」という名称に改正になりました(児童福祉法平成29年4月1日改正)。

情緒的に不安定な子どもたちの育ちは、何よりも乳幼児期の環境にあることをベッテルハイムさんは見抜いており、乳幼児期に世界は恐怖に満ちているという体験の積み重ねが、周囲に対する敵意か、自分自身の中に引き篭る傾向のどちらかになることを指摘しています。

先日「共感」というタイトルでの投稿に書いていますが、「受容と共感」「必然の理解」という子ども一人ひとりへの理解が、とても重要になってきます。

恐怖反応からくる誤った現実世界への適応の仕方を、力づくで変えさせていく支援ではない方法がとられています。

日本で「愛はすべてではない」という本が絶版になってしまっていることはとても残念に思います。

このような素晴らしい実践、知見を児童福祉に関わる関係者が学ぶことが、日本の児童福祉にはとても重要になってくると考えるからです。

この本を20年経って手にすることができたので、楽しみながら学んでいきたいと思います。

 

 

最後までお読みいただいて、ありがとうございました。

ジャンル:
ウェブログ
この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 納涼祭 | トップ | 瞑想とヨガ »
最近の画像もっと見る

Weblog」カテゴリの最新記事