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旅の友・ポップス編 (110) 『トラスト・ミー』

2017-05-26 14:31:36 | 旅の友・ポップス編

『トラスト・ミー』 ファウスト・パペッティ楽団
”Trust me” Fausto Papetti 【YOUTUBEより】


『トラスト・ミー』 ジョヴァンニ・フスコ楽団
”Trust me” Fausto Papetti 【YOUTUBEより】


『トラスト・ミー』 ニコ・フィデンコ
”Trust me” Fausto Papetti 【YOUTUBEより】


1960年のミケランジェロ・アントニオーニ監督のイタリア映画『情事』の主題歌で、アントニオーニ監督作品の音楽を
一手に引き受けていたジョヴァンニ・フスコがスコアを書いています。
1962年の春先に映画公開と同時に上記の三つのレコードがリリースされましたが、残念ながらマイナー・ヒットに
終わっています。

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『情事』はアントニオーニ監督による『太陽はひとりぼっち』、『夜』と共に愛の不毛・三部作と称されていて
その中でも最高傑作と呼ばれています。
残念なことに巷ではアントニオーニ作品は難解だといわれています。
映画を筋書きのあるドラマだと決めつけてこの作品を見ると難解にしか見えないでしょう。
それもそのはず、物語の筋はというと、無人島の見物に出かけた一行の中の一人の女性が突然姿を消し、
一組の男女がその行方を探し回る…ただ、それだけだからです。起承はあっても転結がありません。
劇映画という前提で作品を見ると「何だこの映画は!!」、「失踪した女はどうなったんだ!!」で終わってしまうでしょう。
要するに、この映画は物語を見せるものではなく、登場人物の心理を映像表現する映画なのです。
感情を映像で表現する映画には、ストーリーがあればそれの進展に気を取られすぎてかえって逆効果と
なってしまうので、ストーリーはある意味不要なのかもしれません。
ラストシーンは冷ややかなカメラが二人を傍観するように冷酷に締めくくられていて、映像美学と映像表現の
教科書、まさに映画の本質は映像表現という言葉がぴったりの作品でした。