鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1412~塩の街

2017-09-08 12:02:21 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
回のお気に入りは、塩の街です。

有川浩の初期三部作の最後の1冊「塩の街」を読みました。

内容紹介を引用します。
=====
塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。
塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。
その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女、秋庭と真奈。
世界の片隅で生きる2人の前には、様々な人が現れ、消えていく。
だが―
「世界とか、救ってみたくない?」。
ある日、そそのかすように囁く者が運命を連れてやってくる。
『空の中』『海の底』と並ぶ3部作の第1作にして、有川浩のデビュー作!
番外編も完全収録。
=====

古い本なのでネタバレを含めて感想を書きます。
人の体が徐々に塩に置き換わり、やがて塩の柱と化す。
塩害により政府が崩壊した中、辛うじて配給制度や自衛隊組織は維持されている。
宇宙から飛来した塩の結晶たちは、実は意思を持って人類を侵略しようとしていた。
それに気づいた天才は、撃退作戦を実行し、結晶たちは無抵抗に撃退される。
その中で一組のカップルが生まれた。
というお話。

知性を持って人口過密地帯に飛来し、侵略を開始した塩の結晶たちなのに、自己防衛能力が無いため一方的に撃退されるというのは大いに矛盾していると思います。
「空の中」の浮遊生物、「海の底」の社会性エビと同じく、こういう大きな自己矛盾を抱えつつ、ストーリーは展開します。
著者には、もう一本の柱である、20代後半の彼と女子高生のラブコメの方が大切なのでしょう。
読者にしてもそちらの方が大切!

「あなた一人が助かるのなら、世界なんか滅びてもいい。」と願う少女。
「世界を救おうなんて思わない。お前一人を救いたいだけだ。」と死地に臨む男。
秘めていた互いへの思いが明らかになるそのストレートな物言い。
おっさんが読んでも、妙に感動します。
これぞ有川浩の本領発揮。
さらに自衛隊の組織や装備についてのマニアックな知識を動員して、怪物との戦いをリアルに描きます。
後の「図書館戦争シリーズ」に続くこの路線は、デビュー当時から出来上がっていたのですね。

本書は、本編があっさりと終わるかわりに、いろいろな番外編を楽しむことができます。
ライトノベルらしい楽しみ方です。
この手法は、最近では「鬼平外伝」など時代劇にまで進出しています。
またNHKの朝ドラも、放送終了後、遅滞なく番外編を制作して視聴者を楽しませています。

読者や視聴者に楽しんでもらった「その世界」を、別の角度から今一度楽しんでもらう。
番外編って好きです。

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