残像の遊戯

俳句・音楽・映画・ジャズ・小説などをめぐるコラム。日々過ぎていく目のまえの風景と心象は儚い残像なのかもしれない。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

小説を読んでからみた、映画『永い言い訳』

2016年12月12日 | 映画
西川美和の小説『永い言い訳』を読んでから、映画『永い言い訳』を観た。
『ゆれる』にはじまり、『ディアドクター』から『夢売る二人』、そして今回の作品と、
この監督からは目がはなせいない。
今回は、ぜったい読んでから見るに限ると思った。

そしてやはり期待は裏切られなかった。
いや、私の生半可な読後感を気持ちよく裏切ってくれた、といったほうがいいのか。

西川美和のエッセイ集『映画にまつわるxについて』を3カ月前に読んで思ったのだが、
文章に勢いがあり、しなやか。それでいて柔軟で手ごわい。
さらに複眼的思考が奇妙な感覚をさそい、物事を多面体でとらえるような感じがある。
一読して、正直そうではなく、しかし常識的ではなく、味わい深い。
つまり、ひと癖もふた癖もある文章だが、悪い感じはしない。
使う素材もおもしろい。
エッセイ集の冒頭は、相撲の朝青龍を題材にしていた。

ひと癖もふた癖もある作家が自らの小説を映画化したのだから、
創作者冥利につきるだろうと思う。
西川美和の作品だから、と応援する者も多いのではなかったか。それほど見てみたい、と思わせるものがある。
そんな作家の小説だから、おもしろくないわけがない。
主人公の中年作家が、やたらと複雑で哀しい。
それを演じているのは本木雅広。『おくりびと』以来7年ぶりの作品という。

当たり前のことだがが、
小説では2、3行で書かれた心理描写は、
映像では、ほんの1、2のカットで表現される。
妻を失った中年作家役の俳優本木は、憂い顔と悲哀に満ちた目の演技で、見せてくれた。

そして二人の子役たちがすばらしかった。
子どもと大人のかけあいのシーン、つくりものという感じがしないほど、自然体だった。
西川美和監督は、是枝監督の弟子であるからして、
『そして父になる』の制作にも携わっていたにちがいないから、子どもたちの扱いは知ってるのだろう。

そして、突然死んだ妻役の深津絵里。
どんな役をやっても透明感を失わず、はかなげな表情を見せてくれる。

突然の事故により家族を失った者たちの再生のドラマ。
と一言でいえばそうなる。
しかし、自分の汚い心、弱くてずるい自分の存在、自意識から目をそむけず、
直視するところから再生がはじまる、ということかもしれない。

こんないい作品なのに、わずか1、2週間で上映が終了とは!




ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« AAでの告白 | トップ | 圧巻の歌声、音楽の力。 »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

映画」カテゴリの最新記事