西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

十六利勘その3

2016-03-17 | 浮世絵
歌川国芳(寛政9~文久元・1798~1861年)の浮世絵
「妙でんす 十六利勘」(弘化2・1845年)をもう一つ。


タイトルは「貧須盧損者(ひんするそんじゃ)」、
制作年は弘化2(1845)年とある。

左に張ってある紙には
金原亭馬生とあり、「大うれに付き十六万枚 ひのべ」とある。

金原亭馬生は落語家でこの時は2代目だ。
帯をしめている女はこれから寄席小屋に行くのだろうか。
   

書き入れを見てみよう。
「ひんするは ころも(衣)をひだりまえにき(着)
 ぬいあかねのづきんをかぶり きらばの玉をもち
 人にかおをなでられても はらをたちぬはず
 おごりをいましめ給う人の ひん(貧)するは
 むだなぜにかねを ゆみずのようにつかい
 身をおしみ かぎょう(家業)をおこたるゆえなり
 つるのなきごえを ひんというは
 これ すねているというしるしなり
 てんぐのことを だひんというは こうまんの心なり
 人がらのわるいが げひんにて
 ひんなぐる・ひんだかえる・ひんねじる
 いすれも げすのことばなり
 とかくひんは すまじきものなり
 ひんすれば ちえ(智恵)あるもおろかにみえ
 すこしでも おかげをこうむるほ(方)へゆけば
 だんなや ごしんぞう(奥様)はさらなり
 げじょ でっち めしたき かいねこまでに けいはく(お世辞)をいい
 ひんにせまって むりなよくをかけば
 いくらもうけても やけ石に水
 ゆきのだるまを こたつにあてるごとし
 四百四病のやまいより ひんほどつらいものはないとは
 鬼王がきんげん(金言)なり
 ゆえに ゆ(湯)へでもはいって ぼんのう(煩悩)のよくあか(欲垢)をあらいおとし
 かせぐにおいつく びんぼうなしだから
 正じきにして よくかせぎなせえよ また にしも名やす
 とかく ひんするはそんじゃえと おしえたまう」

「貧すれば鈍す」という、なかなかありがたい教えである。


 
コメント
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