ギリシャ神話あれこれ:ヘラクレスとデイアネイラ

 
 さて、友人思いで女好きのヘラクレスは、ふと、冥界で英雄メレアグロスと交わした約束を思い出し、カリュドンに赴いて、王女デイアネイラに求婚する。

 が、絶世の美女デイアネイラには、すでに求婚者がいた。それがアケロオス川の神。
彼はオケアノスとテテュスの子で、牝牛の角と蛇の尾を持ち、髪と髭をぼうぼうと生やした半人半魚。彼もまた、水神たちがあまねく持つとされる変身の能力を持ち、牝牛や大蛇へと自在に姿を変えたという。

 で、デイアネイラをめぐって、ヘラクレスはアケロオスと戦うことに。アケロオスは牝牛に姿を変えて、勇敢にヘラクレスへと立ち向かう。が、角を一本、ボキン! とへし折られて、敢えなく敗北。
 こうしてヘラクレスはめでたくデイアネイラを娶る。
 
 ある伝では、その後、アケロオスの折れた角は、ヘラクレスがニンフたちに贈り、食べ物や飲み物をなんでも豊富に提供する力を持つ「豊穣の角(コルヌコピア)」になったという。あるいは、アケロオスが自分の折れた角を、アマルテイア(彼女はゼウスを育て、その返礼にこの角を貰った)の持つ豊穣の角と交換したともいう。
 また、角を折られた際に流れた血から、海の妖魔セイレンたちが生まれたという(あるいはセイレンは、アケロオスとムーサの一神とのあいだに産まれたともいう)。

 デイアネイラをヘラクレスに横取りされて以来、川神アケロオスは春になると、そのときのことを思い出し、怒り狂って洪水を起こすのだとか。

 画像は、A.ミラーニ「ヘラクレスとアケロオス」。
  アウレリアーノ・ミラーニ(Aureliano Milani, 1675-1749, Italian)

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