ハーモ美術館

 
 学生の頃は手当たり次第に観ていたが、今じゃもう、美術と言ってもほとんど西洋絵画しか観ない。ので、日本の美術館は正直、物足りない。
 常設展目当ての日本の美術館は、もう行き尽くした感があったので、ふと、諏訪に素朴派美術館があるのを知ったときには、ちょっとした歓喜だった。こうなったら素朴派でもいいや!
 で、相棒に確約を取りつけておいたのだが、直後に近場で「アンリ・ルソーと素朴派展」が開催され、諏訪の美術館から素朴派絵画がどやどやと出張してきた。相棒は一言、「これでもう、諏訪には行かなくてもいいね」。……相棒は諏訪湖が嫌いなのだ。

 この夏、信州に行ったついでに、この素朴派美術館に寄ってきた。

 これは、悪名高い諏訪湖畔にあるハーモ美術館のこと。この悪名を私に吹き込んだのは相棒で、彼曰く、諏訪湖というのは湖一周ぐるりと、護岸コンクリートとホテルで囲まれた、人工的、無機的な湖。自然美が損なわれまくっているので、腹立たしいやら悲しいやら。誰が行ってやるもんか、というのが相棒の主張。
 実際、渚も遊歩道も人工のもので(渚が人工だなんて、ゲロ~!)、味も素っ気もない上に、暑さも手伝って、散策する気にはならなかった。

 美術館2階のラウンジやバルコニーからは、諏訪湖を一望でき、遠く富士山をも望むことができるという。私が行ったときには富士山は見えず、山間にそこだけぽっかり、おぼろな空間があっただけ。
 ……諏訪湖がこんなにも人工的でなけりゃ、富士が見えれば結構絵になるのかも知れない。

 素朴派の父として知られるアンリ・ルソー。素朴派というのはもともと、美術史上にルソーを認知するため与えられた呼称なのだが、その彼と、知る人ぞ知る、カミーユ・ボンボワ、アンドレ・ボーシャン、ルイ・ヴィヴァンら、素朴派と言われる数少ない画家のたちの絵が、分かりやすく展示されている。
 アカデミックな知識・技法の無知から、却って素朴な独創性が際立っているのが、素朴派に共通する特徴(と言うか、それ以外に彼らを流派としてまとめる特徴はない)。いくらでも突っ込める描写なのだが、無知ゆえの大胆さが面白い。絵は続けさえすれば、その人なりのものが自然と現われてくる、というのは、素朴派の絵を見ればよく分かる。

 アメリカのフォーク・アート画家グランマ・モーゼスの絵も並んでいる。
 
 別館のティーセントホールに行く途中、暖炉やアンティーク家具の置かれた、リビングのような展示室がある。靴脱いで入って、ソファにダラ~と座って、ビュフェを観ながら、涼しかったもんで、クーと寝てしまった。
 その先のティーセントホールは、2階が吹き抜けの回廊になった音楽堂で、ルオーとシャガールのリトグラフなどが展示されている。

 こじんまりとしていて、諏訪湖観光のついでに立ち寄るような美術館だけれど、内装と展示の仕方が個性的だし、美術館としてのプライドとコンセプトがしっかりあるので、合格。
 ルソーらの絵だし、気合入れなくていいから、観光がてら寄ってみそ。

 画像は、アンリ・ルソー「果樹園」。
  アンリ・ルソー(Henri Rousseau, 1844-1910, French) 

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     Links :
       ハーモ美術館 (長野県下諏訪)


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