モリゾの母の眼、女性の眼

 

 相棒が私を、「モリゾに似ている」と言ったことがある。
 マネの描いた有名なモリゾの絵は美人だけど、名古屋の「マルモッタン美術館展」に行ったときに観たモリゾの自画像は、それほど美人じゃなかった。ヘンだ、がっかり。

 ベルト・モリゾ(Berthe Morisot)の筆致は、マネと比べてはもちろん、印象派のなかでも特に大胆、奔放で、けれど同時に神経質なほど繊細でもある。
 そう感じるのはモリゾ独特の、あっちこっちの方向に筆を走らせる描き方のせいだと思う。これが、印象派特有の色彩の明るさと相俟って、燦然と光の弾ける葉むらや湖面のような、眩しすぎるほどの明るい印象を画面いっぱいに作り出している。

 モリゾの絵は、女性や子供の幸福な家庭生活を描いたものが多い。女性が本を読んだり、バイオリンやマンドリンを弾いたり。花や果実を摘んだり、鉢植えに水をやったり。洗濯物を干したり、裁縫したり。化粧したり、ドレスアップしたり。子供たちと一緒に、隠れんぼや蝶々取りをして遊んだり。で、それらに生活や労働の苦労や、老、病、死の苦悩などは微塵もない。
 モリゾが実際、そういう幸福な生活を送っていたのかどうかは知らない。が、裕福で教養のある、いわゆるブルジョア的な生活だったらしい。いろいろと揶揄の種かも知れないが、私自身はこういう生活、大好きなんだ。人間みな、こういう生活を送れるに越したことはないと思う。
 
 確かにモリゾの絵には、女性の視点、女性の感性を感じる。良い意味にせよ悪い意味にせよ、女性ならではの絵だと思う。奔放な筆致と幸せな画題とで、モリゾの絵は印象派のなかでも、どこか新鮮なところがある。
 
 モリゾは37歳で子供を産んで、この娘ジュリーが赤ちゃんの頃から、小さな女の子、可愛らしい少女、うら若い女性になるまで、いろいろな成長の姿を描いている。ちっちゃなジュリーがお転婆に木登りをする姿、砂を掘って遊ぶ姿、娘らしくなったジュリーがバイオリンをレッスンする姿。
 私ももっともっと歳を取って、今から数年後に坊を産んでいれば、こんなふうに子供の成長する姿を絵に描けたかも知れないのに、とちょっぴり残念な気がする。

 画像は、モリゾ「モールクールのライラック」。
  ベルト・モリゾ(Berthe Morisot, 1841-1895, French)
 他、左から、
  「鏡の前の若い娘」
  「舞踏会にて」
  「バルコニーの女と子供」
  「砂遊び」
  「潅木に水をやる若い娘」

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