夢見るカリカチュア

 

 ヴラスタ・ヴォストジェバロヴァー・フィスヘロヴァー(Vlasta Vostřebalová Fischerová)。チェコ語の解説しかないので、よく分からないのだが、とにかく独創的すぎて、重要視されずにきたチェコの女流画家。
 プラハのアカデミーで学ぶが、やがてアカデミーのスタイルをその権威とともに放棄する。その後、無類のユニークなスタイルに到達。彼女の活動時期は、わずかに1920~30年代の両大戦期間にすぎないが、この短いあいだに、同時期のチェコ絵画に「新しいリアリズム」をもたらすことに寄与した、と今日では評価されているという。

 この手の「新しいリアリズム」というのは、私の苦手分野なのだが、第一次大戦後の社会不安のなか、画家の内面を主観的に表現するそれまでの表現主義に反撥する形で現われた流れで、卑近な対象を冷徹に、即物的客観的に表現する「新即物主義(Neue Sachlichkeit)」、またそうした表現を通じて、さらに事物の非現実性をも表現する「魔術的リアリズム(Magic Realism)」などがある。
 絵画が、単なる描き手の表現にとどまらず、受け手への発信として、一種の社会への働きかけを意図している場合がしばしばある。
 ……だが私にはこういう絵は、あまりにシュールで戯画的なんだ。

 で、フィスヘロヴァーの絵もやはり、シュールで戯画的。だが、彼女のセンスのせいなんだろうか、絵本のようにメルヘンチックで、素朴派のようにユーモラスで滑稽。風刺が先走ってくどく感じたり、うるさく感じたりするということがなく、一貫して静的。
 けれども、そのカリカチュア性・メッセージ性は、何のカリカチュア・メッセージかはよく分からないのだが、切々と訴えてくる。身を切るほどに痛切と言ってもいいくらい。あまりに身近で、自叙伝的で、心理的。

 フィスヘロヴァーは何度か個展も開いたが、第二次大戦で画業を中断。戦後は復帰しなかったんだろうか、社会主義チェコスロバキアでは、画家もいろいろあったのかも知れない。そのまま忘れられた。

 画像は、フィスヘロヴァー「スパの女たち」。
  ヴラスタ・ヴォストジェバロヴァー・フィスヘロヴァー
   (Vlasta Vostřebalová Fischerová, 1898-1963, Czech)

 他、左から、
  「男やもめ」
  「レトナの年」
  「子供の世界」
  「溺死」
  「夢見る少女ヘルチャ」
     
     Bear's Paw -絵画うんぬん-
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